
米国NIHの資料に基づく | 全身性エリテマトーデス(ループス)で起こり得る視覚障害や視力の問題にはどのようなものがありますか?
ループス(SLE)ではドライアイから網膜症・視神経炎まで多彩な眼合併症が起こり得、急な視力低下や視野欠損は緊急評価が必要です。活動性が高い病期では網膜血管閉塞や視神経障害が視力を脅かし、全身治療と眼科的検査(視力・視野・OCT)が重要です。HCQ内服時は黄斑毒性予防のため定期的なモニタリングを行います。
ループスで起こり得る視覚・眼の問題の全体像
全身性エリテマトーデス(SLE、ループス)では、目の乾燥から網膜や視神経の炎症まで、軽症から重症まで幅広い眼合併症が起こり得ます。 [1] 特に網膜(目の奥の光を感じる膜)や中枢神経(視路を含む)が関与する場合には、視力の大きな低下につながることがあり、早期診断と全身治療が重要になります。 [2] ループスは多臓器疾患のため、病勢が高い時に眼の炎症も併発しやすく、迅速な対応が視力予後の鍵になります。 [1] まれに一過性の片眼視力低下(アマウローシス・フガックス)を呈することがあり、一時的な影のように見えた後に回復することがあります。 [3]
よくみられる眼の症状(軽症〜中等症)
-
ドライアイ(乾燥性角結膜炎)
ループスでは涙をつくる腺が炎症を起こし、目の乾燥(シェーグレン症候群の重なりを含む)がよく見られます。 [1] 涙腺の炎症は涙の水分成分を減らし、しょぼしょぼ感、異物感、かすみ、疲れ目を引き起こします。 [4] 乾燥が強いと角膜表面が傷つき、見えにくさ(霞み目)につながることがあります。 [5] -
眼瞼下垂や眼球運動障害に伴う複視(ダブルビジョン)
ループス関連の神経免疫異常では、眼球運動の制限や瞼の下がりが起こり、複視を訴えることがあります。 [6] 角膜や水晶体が正常でも、眼球の動きの障害で見え方に影響が出る場合があります。 [6]
視力を脅かす主要病変(重症)
-
ループス網膜症(網膜の細小血管炎・微小血管症)
網膜の小血管が詰まり、出血や白斑(コットンウールスポット)、滲出が生じる病態で、活動性の高いループスに合併しやすいです。 [7] 多くは視力予後が良好ですが、合併症次第で視力低下を起こす例もあります。 [7] 網膜動静脈の広範な閉塞が起きると、視野欠損や重度の視力障害、さらには新生血管の形成を招き、重大な視力喪失に至ることがあります。 [8] こうした血管閉塞性病変は早期発見が重要で、適切な治療で重篤な視力低下を避けられる可能性があります。 [8] -
視神経炎・視神経症(視神経の炎症)
急激で重度の視力低下を呈することがあり、発症時には多くの例で「非常に見えない」レベルまで落ち込むことがあります。 [9] 高用量ステロイドの点滴治療が一般的で、治療開始が早いほど視力の回復が良い傾向があります。 [9] 一方で、治療期間を長くしても視力転帰が必ずしも改善しないことがあり、早期診断・早期治療が特に重要です。 [9] -
中枢神経系の関与による視覚問題
ループスでは脳・神経系の症状の一つとして視覚障害が出現することがあり、頭痛、痺れ、けいれんなどと併発する場合があります。 [10] これは視路や視中枢の炎症・循環障害が原因で、一過性の視力低下から持続的な視覚障害まで幅があります。 [10]
薬剤関連の眼合併症(注意点)
-
ヒドロキシクロロキン(HCQ)網膜毒性
ループスの疾患制御薬として広く用いられるHCQは、きわめてまれですが黄斑(網膜の中心部)に障害を起こすことがあります。 [11] そのため、内服開始から1年以内に基準眼科検査(視力、中心10度視野検査、OCT)を受けることが推奨されます。 [12] リスク因子(1日投与量が実体重ベースで5.0 mg/kg超、腎機能低下、タモキシフェン併用、黄斑疾患既往)がある場合は、毎年の検査を含む厳密なモニタリングが望まれます。 [13] リスクが低い場合は、開始5年までは毎年検査を延期し、以降は毎年検査が一般的です。 [14] -
ステロイド使用と眼合併症
全身治療で用いられる高用量ステロイドは、重症の腎・脳病変に対して必要となる一方、長期的には眼圧上昇(緑内障)や白内障のリスクを高めることがあります。 [15] ループスの炎症制御にはステロイドが不可欠な場面もあり、適正用量と期間の調整で副作用を最小化することが重要です。 [15]
眼合併症のサインと受診の目安
-
片眼または両眼の急な視力低下、視野の黒い影・欠け、光がにじむ・直線が歪む、色が暗く見えるなどは、視神経炎や網膜血管閉塞のサインになり得ます。 [9] [8] こうした症状が出た場合は、速やかに眼科と膠原病内科へ相談してください。 [1] 重症の眼病変は、高用量ステロイドや免疫抑制薬による全身治療が必要になることが多いです。 [2]
-
一過性の片眼視力喪失(数秒〜数分)をくり返す場合は、アマウローシス・フガックスの可能性があり、血管イベントのリスク評価が必要です。 [3] 短時間で回復しても、原因精査のための受診が望ましいです。 [3]
-
目の乾燥・異物感・かすみが続く場合は、ドライアイ評価(シルマー試験、角膜染色、スリットランプ検査)で状態を確認し、人工涙液や抗炎症点眼などで管理します。 [5] ループスに合併するシェーグレン症候群が疑われる場合、涙の量や角膜表面のダメージ評価が役立ちます。 [16]
診断・検査のポイント
-
網膜・視神経の評価
眼底検査(散瞳検査)で出血、白斑、血管閉塞の所見を確認し、必要に応じてOCT(網膜断層)で黄斑や視神経乳頭の浮腫・萎縮を評価します。 [8] 網膜循環を詳しくみるために、フルオレセイン蛍光眼底造影やインドシアニングリーン造影が用いられることがあります。 [17] -
機能評価
視力(矯正視力)や中心10度の自動視野検査は、HCQの安全性監視や黄斑機能評価に有用です。 [12] 視神経炎が疑われる場合は、色覚・視野・相対的瞳孔障害の有無などを総合的に評価します。 [9] -
全身評価との連携
網膜症は活動性ループスの指標となることがあり、脳症(ループス脳炎)との関連も示唆されます。 [7] 眼病変が出た場合は、全身の炎症度や臓器障害の評価を同時に進めることが推奨されます。 [2]
予後と治療の考え方
-
ループス網膜症は多くが微小血管症で、視力予後は概ね良好ですが、合併症を伴う例では視力低下が起こり得ます。 [7] 網膜血管の広範閉塞や新生血管の形成がある場合は、適切な全身治療に加え、眼科的治療(レーザー、抗VEGF、手術など)が検討されます。 [8]
-
視神経炎は初期視力低下が強いことが多く、早期のステロイドパルス治療で回復可能性が高まる一方、回復は個人差が大きいです。 [9] 再発や治療抵抗性がある場合、免疫抑制薬や生物学的製剤によるステロイドスパリング戦略が選択肢となり得ます。 [1] 全身の免疫学的病勢を適切に抑えることが、眼合併症の再発予防にもつながります。 [2]
-
HCQ治療はループスの再燃を減らす効果が期待されますが、まれな網膜毒性に対する定期モニタリングが不可欠です。 [11] 適正用量と腎機能に応じた調整、毎年の視野・OCTでの早期変化捕捉が、視機能の保護に役立ちます。 [13]
まとめ(実践的ポイント)
- 乾燥症状は最も一般的で、涙腺炎症やシェーグレンの重なりが背景にあります。 [1] [4]
- 視力を脅かすのは網膜血管炎・血管閉塞と視神経炎で、活動性の高いループスで併発しやすく、迅速な全身治療が必要です。 [1] [8] [9]
- HCQを服用中は年次の眼科検査(視力・視野・OCT)で黄斑の安全性を確認しましょう。 [12] [14]
- 一過性の視力喪失や急な視力低下は救急受診を含め早めの評価が望ましく、視力予後を左右します。 [3] [9]
このように、ループスの眼合併症は多岐にわたりますが、早期の気づきと適切な連携診療で視力を守ることが十分に期待できます。 [2] [1]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghOcular manifestations of systemic lupus erythematosus: a review of the literature.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdeOcular manifestations of systemic lupus erythematosus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdAmaurosis fugaz: MedlinePlus enciclopedia médica(medlineplus.gov)
- 4.^abDiagnosing Dry Eye Syndrome(nyulangone.org)
- 5.^abSjogren's syndrome - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
- 6.^abA Case of Miller Fisher Syndrome in a Patient with Systemic Lupus Erythematosus(ekjm.org)
- 7.^abcdLupus retinopathy. Patterns, associations, and prognosis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abcdefOcclusive retinal vascular disease in systemic lupus erythematosus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abcdefghSystemic lupus erythematosus-associated optic neuritis: clinical experience and literature review.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 10.^abSystemic lupus erythematosus: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 11.^abLupus-Lupus - Diagnosis & treatment - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 12.^abcHYDROXYCHLOROQUINE SULFATE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
- 13.^ab(dailymed.nlm.nih.gov)
- 14.^ab(dailymed.nlm.nih.gov)
- 15.^ab전신 홍반성 낭창(Systemic lupus erythematosus) | 질환백과 | 의료정보 | 건강정보(amc.seoul.kr)
- 16.^↑Sjogren's syndrome - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
- 17.^↑Uveitis-Uveitis - Diagnosis & treatment - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


