
PubMedの資料に基づく | 全身性エリテマトーデス(ループス)患者にみられる動悸の主な原因と、受診すべき警戒サインは何ですか?
SLE(全身性エリテマトーデス)患者の動悸は、心膜炎・心筋炎・不整脈・弁膜症・冠動脈疾患・血栓症・薬剤影響などが重なって生じます。強い胸痛や安静でも続く痛み、呼吸困難、長時間の動悸や失神、著しいむくみや低血圧は緊急受診のサインです。評価には心電図・ホルター心電図、心エコー、血液検査などが推奨されます。
全身性エリテマトーデス(SLE)でみられる動悸は、いくつかの心臓・血管や薬剤に関連する要因が重なって起こることがあります。代表的には心膜炎(心臓を包む膜の炎症)、心筋炎(心筋の炎症)、不整脈、弁膜症、早期動脈硬化による冠動脈疾患、抗リン脂質抗体症候群による血栓、そして一部の薬剤の影響が関与しうると考えられています。 [1] SLEでは心膜炎がもっとも一般的な心臓病変で、心嚢液貯留を伴うことがあり、重症例では心タンポナーデに進展して動悸や息切れ、胸痛を引き起こすことがあります。 [2] [3]
主な原因
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心膜炎(心嚢液貯留を含む)
SLEで最も頻度の高い心臓病変で、胸痛や動悸、息切れの原因になります。エコーでは自覚症状が軽くても心嚢液が見つかることがあり、まれに心タンポナーデ(心臓が圧迫される状態)へ進行します。 [4] 心タンポナーデは不安感・呼吸困難・頻脈・頸静脈怒張・低血圧などを伴い得る重篤な状態です。 [5] -
心筋炎・心筋症
心筋そのものの炎症や微小血管の障害が動悸の背景になることがあります。臨床的な心筋炎はまれですが、心機能低下や不整脈の原因となる場合があります。 [2] [1] -
不整脈(脈の乱れ)
心房性・心室性不整脈、房室ブロックなどがSLEに伴う炎症(心膜炎、心筋炎、血管炎、線維化)と関連して生じることがあります。 [3] まれですが、薬剤過量(例:ミコフェノール酸モフェチル)によって心室頻拍などの不整脈が誘発された報告もあります。 [6] -
弁膜症・心内膜炎(リブマン・サックス心内膜炎)
弁の変性や疣状病変が、逆流や狭窄を招き、動悸や心雑音、息切れの原因となることがあります。生前診断は稀ですが、機能障害を起こす例もあります。 [3] [2] -
冠動脈疾患(早期動脈硬化・冠動脈炎)
SLEでは一般集団よりも動脈硬化性心疾患が増え、比較的若年でも狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。高血圧・高脂血症・長期ステロイド治療などの併存因子があるとリスクがさらに上がります。 [7] まれに冠動脈炎も胸痛や不整脈の原因となります。 [3] [2] -
抗リン脂質抗体症候群(APS)関連の血栓
動悸の直接原因ではないものの、冠動脈や肺動脈の血栓によって胸痛・息切れ・頻脈が起こることがあり、緊急対応が必要になることがあります。 [4] -
避妊薬やデバイスの影響(補足)
一部ホルモン避妊薬は体液貯留や不整脈を誘発しうるため、心疾患リスクがあるSLEでは慎重な選択が望まれます。 [8] また特定心疾患ではIUD挿入が不整脈誘発の懸念が示されています。 [9]
警戒すべきサイン(受診の目安)
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強い胸痛・圧迫感、安静でも続く痛み、左腕・顎に広がる痛み
冠動脈疾患や冠動脈炎を示唆し、早期評価が必要です。 [2] [7] -
激しい息切れ・呼吸困難、体を起こさないと息苦しい、急な体重増加やむくみ
心嚢液増加や心不全、肺血栓などを考え、緊急受診が望まれます。 [4] 心タンポナーデでは不安・頻脈・低血圧・頸静脈怒張が目立つことがあり、救急対応の対象です。 [5] -
動悸が長時間持続する、脈が極端に速い/遅い、めまい・ふらつき・失神
心房細動や心室性不整脈、房室ブロックなどの可能性があり、心電図評価が必要です。 [3] [2] -
新たな胸痛や動悸がステロイド増量・新規薬剤開始後に出現
早期動脈硬化リスクや薬剤関連の不整脈の可能性も踏まえ、担当医へ相談しましょう。 [7] [6]
推奨される検査・評価
- 心電図(ECG)とホルター心電図:不整脈の有無やタイプを把握します。炎症関連の変化は非特異的なこともありますが、持続的な動悸では有用です。 [3]
- 心エコー(心臓超音波):心嚢液(心膜炎)や弁の障害、心機能低下を評価します。SLEでは無症候性の心嚢液が見つかることもあります。 [4]
- 血液検査:心筋障害の指標(トロポニン、BNP/NT-proBNP)、炎症反応、脂質、凝固系(抗リン脂質抗体)などを確認します。 [4] [2]
- 必要に応じた画像:冠動脈評価(CT・MRI・負荷検査)や、重症例では心タンポナーデの迅速評価が重要です。 [5] [2]
日常でできる予防・対策
- 炎症のコントロールと定期受診:SLEの活動性を抑えることが心臓合併症の予防につながります。 [1]
- 動脈硬化リスクの管理:血圧・脂質・血糖の管理、禁煙、適度な運動、体重管理が重要です。ステロイド使用時は特に動脈硬化対策に留意します。 [7] [2]
- 薬剤の見直し:新規の動悸や脈の乱れが出た際は、服用薬(免疫抑制薬、ホルモン療法など)との関連を主治医と確認しましょう。 [8] [6]
まとめ
SLEの動悸は、心膜炎・心筋炎・不整脈・弁膜症・冠動脈疾患・血栓症・薬剤影響など複数の要因が重なりやすいのが特徴です。 [1] そのため、症状の背景にある重篤な合併症(心タンポナーデや心筋梗塞など)を見逃さないことが大切で、強い胸痛、呼吸困難、失神を伴う動悸、著しいむくみや低血圧は早急な受診のサインになります。 [5] [2] 定期的な心電図・心エコーとリスク管理で、合併症の早期発見・予防が期待できます。 [4] [7]
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出典
- 1.^abcdCardiac manifestations of systemic lupus erythematosus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdefghijkCardiovascular involvement in systemic lupus erythematosus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefgCardiovascular manifestations of systemic lupus erythematosus: current perspective.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdef[Cardiovascular manifestations of systemic lupus erythematosus].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdCardiac tamponade: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 6.^abcMycophenolate Mofetil Overdose Induced Ventricular Tachycardia in a Patient with Systemic Lupus Erythematosus(ekjm.org)
- 7.^abcdeSystemic lupus erythematosus: MedlinePlus Genetics(medlineplus.gov)
- 8.^abAppendix B(cdc.gov)
- 9.^↑Appendix E(cdc.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


