
PubMedの資料に基づく | 頭頸部がんで膨満感(腹部の張り)が症状として現れることはありますか?
要点:
頭頸部がんでは腹部膨満は典型的な一次症状ではありませんが、病勢の進行や治療・合併症により膨満感が生じることがあります。主な原因には悪性腹水、腸閉塞(稀な遠隔転移を含む)、便秘や薬剤(化学療法・オピオイド)による腸機能低下などが挙げられます。急な腹囲増大や嘔吐・排便停止などの赤旗サインがあれば早期受診が推奨されます。
頭頸部がんそのものの典型症状に「膨満感(腹部の張り)」は一般的ではありませんが、いくつかの状況では腹部膨満が関連して起こりうることがあります。特にがんの進行や治療の影響、合併症によって腹部に症状が出るケースがあり、個人差があります。
頭頸部がんの典型症状と腹部症状の位置づけ
- 頭頸部がん(口腔、咽頭、喉頭など)の主な症状は、口内のしこり・痛み、嚥下障害、嗄声、咽頭異物感、耳痛などが中心です。これらは呼吸や嚥下に関わる部位の局所症状が主体で、腹部膨満は典型的な一次症状ではありません。 [1] [2]
- 一方で、体重減少は頭頸部がんでよくみられますが、これは食事摂取の困難や痛みに伴う栄養不足が背景にあります。 [3]
腹部膨満が起こりうる主な理由
腹部の張りや膨満感が、頭頸部がんの経過中にみられる可能性は次のような要因で説明できます。
1) 悪性腹水(がん性腹水)
- がんが腹膜に広がる「腹膜播種(腹膜癌症)」では、腹腔内に液体(腹水)が溜まりやすく、もっとも典型的な症状が腹部膨満です。 [4]
- 悪性腹水の症状は、腹部膨満・食欲低下(早期満腹感)・体重増加に見える腹囲拡大・呼吸苦などで、生活の質を大きく下げます。 [5] [6]
- 悪性腹水は卵巣・胃・大腸・膵臓・乳腺などの腺がんで頻度が高いですが、がん患者の腹水には腹膜播種やリンパ流の閉塞、門脈圧亢進、心不全など複数の機序が関与しうるため、原因評価が重要です。 [7] [8]
- 診断には血清アルブミンなどの採血と同時の腹水穿刺(白血球、蛋白、アルブミン、細胞診)が推奨され、方針決定に直結します。 [7]
※頭頸部がんから腹膜に直接転移するのは稀ですが、がん全体として腹水が腹部膨満の主要原因になり得る点は押さえておくとよいです。 [4] [7]
2) 小腸・大腸への遠隔転移・閉塞
- 頭頸部扁平上皮がん(SCC)が小腸など腹部臓器へ遠隔転移するのは非常に稀ですが、腸閉塞や穿孔として急性腹痛・膨満で発症する報告があります。 [9] [10]
- 舌がんから小腸へ転移し穿孔を起こした症例や、舌原発のSCCが腹部痛と偽性大腸閉塞で現れた症例が報告されています。 [10] [11]
- この場合、腹部膨満は腸管の通過障害によるガス貯留や腸内容の停滞が主因です。 [9]
3) 便秘・腸管機能低下(治療や疼痛管理の影響)
- 化学療法薬やオピオイド(強い痛み止め)は、腸の動きを弱め便秘やガス貯留をもたらし、早期満腹感や膨満感を引き起こします。 [12]
- 頭頸部がんで用いられるシスプラチン+フルオロウラシル+免疫療法(ペムブロリズマブ)やカルボプラチン併用レジメンの患者向け情報でも、腹部の膨満、痙攣、腹痛、下痢への注意喚起が記載されています。 [13] [14]
- 甲状腺機能の変化(免疫療法関連)や代謝変動に伴い、消化管症状が出ることもあります。 [15]
4) 栄養状態と胃の動き(早期満腹感)
受診の目安(赤旗サイン)
腹部膨満が次のような特徴を伴う場合は、速やかな受診や主治医への連絡が勧められます。
- 急速な腹囲増大や呼吸苦、体重の急な増加に見える腹部肥大(悪性腹水を示唆)。 [4] [5]
- 持続する嘔吐、排便・排ガスの停止、激しい腹痛(腸閉塞や穿孔の可能性)。 [9] [10]
- 黒色便や血便、発熱を伴う腹痛(出血や感染の懸念)。 [13] [14]
診断と評価のポイント
- 症状・薬剤歴・便通状況の確認に加え、腹部診察・超音波・CTなどの画像検査で腹水や腸閉塞の有無を評価します。 [16]
- 腹水が疑われる場合は腹水穿刺による解析(細胞診含む)が治療方針に重要です。 [7]
- 頭頸部がんの病勢評価は、原発巣・頸部リンパ節・遠隔臓器(肺・骨・肝)を中心に行われますが、腹部症状が持続する場合は腹腔内合併症の評価も考慮します。 [17]
対処法・ケアのポイント
- 便秘が主因と考えられる場合は、水分摂取、食物繊維の調整、緩下剤の適切な使用、オピオイドの見直しなどが有効です。 [12]
- 悪性腹水に対しては、腹水穿刺による排液や反復ドレナージ、必要に応じて長期留置カテーテルなどで症状緩和を図ります。 [5]
- 腸閉塞が疑われる場合は、入院のうえ禁食・胃管減圧・輸液、外科的評価が必要になることがあります。 [9]
- 化学療法・免疫療法中の胃腸症状は、支持療法(制吐薬、整腸薬、栄養サポート)で緩和を目指します。 [13] [14]
まとめ
- 頭頸部がんの一次症状として腹部膨満は一般的ではありませんが、病勢の進行や治療影響、合併症(悪性腹水・腸閉塞・便秘・薬剤影響)によって膨満感が生じることがあります。 [1] [2] [4] [5] [12]
- 急な腹囲増大や呼吸苦、嘔吐を伴う膨満は重要なサインで、早めの医療受診が望まれます。 [4] [9]
- 継続する腹部の張りがある場合は、主治医に相談し、原因評価(腹水の有無、腸管閉塞、薬剤副作用など)を受けることが一般的です。 [7] [17]
関連する質問
出典
- 1.^abHead and Neck Cancers Basics(cdc.gov)
- 2.^abInformación básica sobre los cánceres de cabeza y cuello(cdc.gov)
- 3.^↑Head and Neck Cancer Symptoms & Signs | Memorial Sloan Kettering Cancer Center(mskcc.org)
- 4.^abcdePeritoneal carcinomatosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 5.^abcdPeritoneal carcinomatosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 6.^↑Peritoneal carcinomatosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 7.^abcdeManagement of ascites due to gastrointestinal malignancy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^↑[Pathogenesis and management of refractory malignant ascites].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abcdeComprehensive review of small bowel metastasis from head and neck squamous cell carcinoma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 10.^abcPerforation of the small bowel due to metastasis from tongue cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 11.^↑An unusual presentation of metastatic squamous carcinoma of tongue.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 12.^abcdeLa alimentación apropiada durante su tratamiento contra el cáncer(mskcc.org)
- 13.^abcPatient information - Head and neck cancer recurrent or metastatic - Cisplatin, fluorouracil and pembrolizumab(eviq.org.au)
- 14.^abcPatient information - Head and neck cancer recurrent or metastatic - Carboplatin, fluorouracil and pembrolizumab(eviq.org.au)
- 15.^↑Patient information - Head and neck cancer recurrent or metastatic - Carboplatin, fluorouracil and pembrolizumab(eviq.org.au)
- 16.^↑Ascites as the initial presentation of gastrointestinal carcinoma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 17.^abHead and neck cancers - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


