
米国NIHの資料に基づく | クローン病で動悸が起こることはありますか?起こる場合の原因や、受診が必要な目安を教えてください。
要点:
クローン病では動悸が起こることがあり、貧血や脱水・電解質異常、発熱、抗TNFα製剤などの薬の反応が主な原因です。胸痛や息苦しさ、失神、重い脱水サインを伴う場合は救急受診、繰り返す・長引く動悸は早めの外来受診が目安です。脈拍測定や水分・電解質補給などの自己対処と、血液検査や心電図による評価についても解説しています。
クローン病で「動悸(どきどき・脈が速い/乱れる感じ)」が起こることはあり得ます。直接の心臓病だけが原因とは限らず、貧血や脱水、薬の副作用など複数の要因が関わる可能性があります。 以下で想定される原因、見分け方、受診の目安を詳しくまとめます。
起こりうる主な原因
1) 貧血(ヘモグロビン低下)
- クローン病では慢性的な炎症や腸管出血、栄養吸収不良により貧血が起こりやすく、息切れ・疲れやすさとともに動悸が出ることがあります。 [1]
- ヘモグロビンが低いと、体が酸素不足を補おうとして脈が速くなる(頻脈)ため、動悸として自覚されます。 [2]
2) 脱水・電解質異常(下痢・嘔吐に伴う)
- クローン病の活動期には下痢が続き、強い脱水や電解質異常(ナトリウム・カリウムなどの乱れ)で脈が速くなる、ふらつく、けいれん、筋痙攣が出ることがあります。 [3]
- 脱水や塩分異常の警告サインとして「口の渇き、倦怠感、筋けいれん、尿が少ない、吐き気、そして速い脈(頻脈)」が挙げられます。 [4] [5]
3) 薬の副作用(とくに点滴型の抗TNFα製剤など)
- インフリキシマブ(レミケード等)などの抗TNFα薬では、投与時や直後に胸部不快感、動悸、速い/遅い心拍、めまいなどの反応が出ることがあります。 [6] [7]
- まれですが、投与後数時間で上室性頻拍などの不整脈が起きた症例報告もあります。 [8]
- こうした症状が出た場合は、次回以降の投与時に医療者へ必ず申告し、前投薬や投与速度の調整、モニタリング強化が検討されます。 [9] [10]
4) 自律神経の乱れ・全身炎症
- クローン病では、自律神経機能の異常(自律神経障害)が一定の割合で見られ、心拍の反応性に影響して動悸を感じやすくなる可能性があります。 [11]
- また、強い炎症や発熱は心拍数を上げる(発熱性頻脈)ため、活動期には動悸が出やすいことがあります。 [12]
5) 心血管合併症(まれ)
- 炎症性腸疾患ではごくまれに心膜炎や心筋炎など心臓の合併症が報告され、胸痛・動悸・不整脈が出ることがあります。 [13] [14]
- まれではありますが、こうした状況では胸痛・発熱・不整脈が目立ち、内科(循環器)での評価が必要になります。 [13] [14]
受診が必要な目安(緊急度の見極め)
いますぐ救急受診が望ましいサイン
- 動悸に胸痛、息苦しさ、失神・前失神、冷や汗、持続するめまいを伴うとき。これは不整脈や心筋虚血、薬剤反応などの緊急評価が必要な状態の可能性があります。 [9] [6] [7]
- 激しい下痢や嘔吐に続く、極度の口渇、尿量の著しい減少、強い倦怠感、筋けいれん、混乱、頻脈があるとき(重度の脱水・電解質異常の疑い)。 [4] [5]
早めの外来受診(数日以内)が望ましいサイン
- 動悸が繰り返し起こる、数分以上続く、運動時に悪化する、微熱・体重減少・下血・息切れを伴うとき(貧血や活動性炎症の可能性)。 [1] [2]
- 生物学的製剤の投与後に動悸や胸部症状が出たとき(投与計画の見直しが必要)。 [6] [7] [9] [10]
自分でできるチェックと対処のヒント
- 脈拍を計る:安静時に1分間の脈拍を測り、100回/分以上が続く、脈が不規則なら記録して受診時に共有しましょう。
- 水分・電解質の補給:下痢や発熱がある日は、経口補水液(ナトリウム・カリウムを含む)でこまめに補給し、尿の回数・色(濃い・少ないは要注意)もチェックしましょう。 [3] [4]
- 出血や貧血のサインに注意:黒色便/血便、息切れ・顔色不良・疲れやすさと動悸がセットなら血液検査(ヘモグロビン、鉄、フェリチン)を主治医に相談しましょう。 [1] [2]
- 薬歴の共有:生物学的製剤、ステロイド、鎮痛薬などの投薬タイミングと症状の関係をメモし、投与時の前後24時間で胸部症状が出た場合は必ず報告してください。 [6] [7] [9] [10]
医療機関で想定される評価
- 血液検査:ヘモグロビン、鉄・フェリチン、炎症反応、電解質(Na/K/Mg)、腎機能、肝機能などを確認し、貧血・脱水・電解質異常・活動性炎症の有無を評価します。 [1] [15]
- 心電図/心エコー:不整脈の有無や心膜炎・心筋障害の兆候をチェックし、投薬関連の反応やまれな心合併症を除外します。 [13] [14]
- 治療調整:貧血があれば鉄補充や止血・炎症コントロール、脱水があれば補液、生物学的製剤の投与計画や前投薬の調整などが検討されます。 [6] [7] [9] [10]
まとめ
- クローン病で動悸は起こりうち(うる)、頻度の高い原因は「貧血」と「脱水・電解質異常」、次いで薬の投与時反応が挙げられます。 [1] [2] [3] [4] [6]
- 胸痛や失神、強い息苦しさ、重い脱水サインを伴う動悸は救急受診が目安です。 [9] [7] [4]
- 繰り返す動悸や体調変化がある場合は、早めに主治医へ相談し、血液検査(貧血・電解質)と心電図などで原因を見極めると安心です。 [1] [2] [4]
よくある質問への補足
- どのくらいの脈拍で心配?
安静時に100回/分以上が持続、あるいは不規則で動悸が強いときは受診を検討してください(発熱時は心拍がやや上がることもありますが、症状全体で判断します)。 - 市販の電解質飲料は?
下痢や発熱がある日は経口補水液(OS-1等)のようなナトリウム・カリウム配合のものが実用的です(腎機能異常がある場合は医師に相談)。 [3] [4]
必要でしたら、動悸が出るタイミング(安静時/運動時/投薬後)、脈拍数、下痢や発熱の有無、息切れや胸痛の有無を簡単にまとめるチェックシートもお作りします。
関連する質問
出典
- 1.^abcdefCrohn's disease - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
- 2.^abcdeLow hemoglobin count When to see a doctor(mayoclinic.org)
- 3.^abcdSymptoms and causes - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 4.^abcdefg(dailymed.nlm.nih.gov)
- 5.^ab(dailymed.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdefREMICADE- infliximab injection, powder, lyophilized, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 7.^abcdefREMICADE- infliximab injection, powder, lyophilized, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 8.^↑A rare case of supraventricular tachycardia induced by Infliximab: a case report.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abcdefAVSOLA- infliximab-axxq injection, powder, lyophilized, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 10.^abcdINFLIXIMAB injection, powder, lyophilized, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 11.^↑Disturbed autonomic nerve function in patients with Crohn's disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 12.^↑Crohn's disease - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 13.^abc[Cardiac involvement in inflammatory bowel disease].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 14.^abcCrohn's disease and pericarditis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 15.^↑Diagnosis and treatment - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


