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2026年2月16日5分で読める

米国NIHの資料に基づく | アルツハイマー病では体重減少はどの程度一般的で、主な原因は何ですか?

要点:

アルツハイマー病では体重減少は珍しくなく、中期〜後期に目立ちますが発症前から始まることもあります。主因は食欲低下や摂食・嚥下の困難、水分不足、行動変化による消費増加、薬の副作用などの多因子です。早期から栄養評価と水分・高エネルギー補助、嚥下や服薬の見直しが重要です。

アルツハイマー病における体重減少:どのくらい起こりやすいか、なぜ起こるのか

アルツハイマー病では体重減少は比較的よくみられる問題で、病気の中期〜後期に目立つことが多い一方で、認知症の症状が出る前から少しずつ体重が落ち始めるケースも報告されています。体重減少は病状の進行・生活の質の低下・合併症リスクの上昇と関連し得るため、定期的な栄養評価と早期の対策が大切です。 [1] 体重減少の背景には食欲低下・食事量の減少・飲水忘れ・行動上の問題による消費増加など複数の要因が重なっていることが一般的です。 [2]


どの程度「一般的」か

  • 施設・在宅の両方で、アルツハイマー病の人に体重減少はよくみられます。体重減少は転帰の悪化と結びつくため、栄養管理が重要視されています。 [2]
  • 中期〜後期で頻発しますが、認知症の発症前から体重減少が始まる可能性も指摘されています。 [1]
  • 病気が進むにつれ食事への関心低下や摂食困難が強まり、適切な食事・水分摂取を忘れがちになります。 [3] [4]
  • 極端な場合、栄養失調や全身の消耗(いわゆる「衰弱」)が死亡原因の一つとなることがあります。 [5]

主な原因(多因子の重なり)

食欲・摂食の問題

  • 食欲低下:食行動を司る脳領域の変性により、空腹感や食の動機づけが弱くなります。 [2] [1]
  • 食事量の減少:進行とともに、食べることが難しくなり、食事の回数・量が下がる傾向があります。 [1]
  • 味覚・嗅覚の低下:食べ物の風味を感じにくくなり、食事の楽しさが減って摂取量が落ちます。 [6]

行動・機能の問題

  • 不穏・歩き回りなどの行動変化で、消費エネルギーが増える(同じだけ食べても痩せやすい)ことがあります。 [1]
  • 食具の扱い・食事動作の困難により、自力で十分に食べられない状況が増えます。 [6]

飲水不足・脱水

  • 飲み忘れや水分への関心低下で脱水・便秘を起こし、食欲や全身状態をさらに悪化させます。 [3] [4]

嚥下障害(のみ込みの問題)

  • 嚥下が難しくなり、固形物や液体の摂取に支障が出て摂取量が低下します。誤嚥リスクも高まります。 [6]

代謝・炎症などの生体側要因

  • 安静時消費エネルギー(代謝)増加の可能性や炎症性サイトカイン上昇が示唆されており、理論的には「痩せやすい体質」へ傾くことがあります(動物では示唆、人では確定的ではない)。 [1]
  • レプチン低下や微量栄養素不足(ビタミン・必須脂肪酸)などが、体重減少と認知機能低下の悪循環に関わる可能性があります。 [1]

よくみられる生活上の場面

  • 食事を忘れる・興味がない、用意しても食べ始めない/食べ続けない。 [3] [4]
  • 水分を十分に飲まないために脱水・便秘が悪化し、食欲や体力がさらに落ちる。 [3] [4]
  • 食具が使いづらい、熱すぎ/冷たすぎで食べられない、指でつまめる食品でないと摂取が進まない。 [6]

薬との関係(例:ドネペジル)

  • アルツハイマー病の治療薬の一つであるドネペジルでは、体重減少が副作用として現れることがあり、特に高用量(23 mg/日)で割合が増える傾向が示されています。 [7] [8]
  • 低体重の人(55 kg未満)では、吐き気・嘔吐・体重減少の報告が相対的に多く、中止例も増える可能性があります。 [9]
  • 服薬中に体重が7%以上落ちるなどの変化があれば、用量調整や他の選択肢を医療者と相談することが一般的です。 [7] [8]

体重減少がもたらす影響

  • 病状の進行や生活の質(QOL)の低下、罹患・死亡リスクの上昇と関連し得ます。栄養状態の定期評価はケアの中核です。 [2] [1]
  • 進行期では嚥下障害や栄養失調が重なり、誤嚥性肺炎や全身の消耗が致命的になり得ます。 [5]

ケアのポイント(予防・対策)

  • 環境・社会的サポート:好きな食べ物を小分けで提供、指でつまめる「フィンガーフード」の活用、食卓には品数を絞って集中しやすく。 [6]
  • 水分摂取の促進:カフェインを避けつつ水や栄養飲料をこまめに、目標量を見える化。 [3] [4]
  • 高エネルギー補助:高カロリー・栄養補助飲料やスムージーの併用は、摂取が難しいときに有用です。 [4] [2]
  • 嚥下への配慮:誤嚥の兆候があればテクスチャ調整(とろみ付け、柔らかい食形態)を検討し、専門家に相談。 [6]
  • 定期的な栄養評価:体重・BMI・食事量・水分・微量栄養素のチェックを定期的に行うことが推奨されます。 [1]
  • 服薬の見直し:体重減少が顕著な場合は治療薬の副作用も点検し、用量調整や代替を相談。 [7] [8] [9]

まとめ

アルツハイマー病では体重減少は珍しくない現象で、食欲低下・摂食困難・飲水不足・行動変化による消費増加・代謝や炎症の要因などが重なって起こることが多いです。 [2] [1] 中期〜後期で目立ちやすい一方、初期や発症前からの体重低下もあり得るため、早期からの栄養評価と環境調整、適切な水分・高エネルギー補助が重要です。 [1] [3] [4] 薬の副作用(例:ドネペジル)にも注意し、体重が大きく落ちる場合は医療者に相談することが勧められます。 [7] [8] [9]


参考データの要点比較

下は本文で述べた要点を簡潔に比較した表です。

項目概要エビデンス要点
発生頻度よくみられる(在宅・施設とも)体重減少はQOL低下や進行と関連、栄養支援が重要 [2]
出現時期中期〜後期で顕著、発症前から始まる例あり症状前からの体重減少の可能性 [1]
主因① 食欲・摂食食欲低下、食行動の脳変性、食事量減少食行動の障害と摂取低下 [2] [1]
主因② 行動・機能不穏・歩行増加で消費増、食具使用困難行動変化によるエネルギー消費増 [1]
主因③ 水分不足飲み忘れ→脱水・便秘→食欲更低下飲水忘れが一般的、カフェイン回避と水分促進 [3] [4]
主因④ 嚥下障害のみ込み困難→摂取量低下、誤嚥リスク嚥下困難は後期で増える、食形態調整を推奨 [6]
生体側要因代謝増加の可能性、炎症・ミトコンドリア機能不全、レプチン低下動物で示唆、人では確証弱いが可能性あり [1]
栄養介入高エネルギー補助飲料・環境調整が有効栄養補助は効果あり、BMI低い人では効果限定的 [2]
薬の副作用ドネペジル高用量で体重減少報告増23mg/日で減少率上昇、7%以上の減少例あり [7] [8];低体重で副作用多い [9]
重篤転帰栄養失調・衰弱・誤嚥性肺炎が死亡原因に進行期の死亡原因として重要 [5]

参考文献(本文で要点として引用)

  • Weight loss and nutritional considerations in Alzheimer disease. [2]
  • Weight loss and Alzheimer's disease: temporal and aetiologic connections. [1]
  • Alzheimer’s disease - Diagnosis and treatment(栄養・水分支援の実践的ポイント)。 [3] [4]
  • Dementia - daily care(食事支援・フィンガーフード)。 [6]
  • Donepezil製品情報(体重減少の副作用)。 [7] [8] [9]
  • MedlinePlus Genetics(進行期の転帰)。 [5]

ご自身やご家族で最近の体重変化や食事・水分摂取の様子に気になる点はありますか?

関連する質問

関連記事

出典

  1. 1.^abcdefghijklmnopWeight loss and Alzheimer's disease: temporal and aetiologic connections.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  2. 2.^abcdefghijWeight loss and nutritional considerations in Alzheimer disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abcdefghAlzheimer's disease - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
  4. 4.^abcdefghiAlzheimer's disease - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
  5. 5.^abcdAlzheimer's disease: MedlinePlus Genetics(medlineplus.gov)
  6. 6.^abcdefghDementia - daily care: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
  7. 7.^abcdefThese highlights do not include all the information needed to use DONEPEZIL HYDROCHLORIDE TABLETS and DONEPEZIL HYDROCHLORIDE ORALLY DISINTEGRATING TABLETS safely and effectively. See full prescribing information for DONEPEZIL HYDROCHLORIDE TABLETS and DONEPEZIL HYDROCHLORIDE ORALLY DISINTEGRATING TABLETS. DONEPEZIL HYDROCHLORIDE tablets ,for oral use DONEPEZIL HYDROCHLORIDE orally disintegrating tablets Initial U.S. Approval: 1996(dailymed.nlm.nih.gov)
  8. 8.^abcdefThese highlights do not include all the information needed to use DONEPEZIL HYDROCHLORIDE TABLETS and DONEPEZIL HYDROCHLORIDE ORALLY DISINTEGRATING TABLETS safely and effectively. See full prescribing information for DONEPEZIL HYDROCHLORIDE TABLETS and DONEPEZIL HYDROCHLORIDE ORALLY DISINTEGRATING TABLETS. DONEPEZIL HYDROCHLORIDE tablets,for oral use DONEPEZIL HYDROCHLORIDE orally disintegrating tablets Initial U.S. Approval: 1996(dailymed.nlm.nih.gov)
  9. 9.^abcdeDONEPEZIL HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)

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