
PubMedの資料に基づく | アルツハイマー病の患者にみられる疲労は何が原因で生じ、病期によってどのように変化しますか?
アルツハイマー病の疲労は、睡眠障害や概日リズムの乱れ、精神・身体の消耗、栄養状態の変化、睡眠呼吸障害などが重なって生じます。病期が進むほど睡眠が断片化し、昼間の過度な眠気や夜間の覚醒が増えて疲労は悪化します。早期は深い睡眠の減少と朝の倦怠感、中期はうたた寝と夕暮れ症候群、後期はリズム破綻による持続的な疲労が特徴です。
概要
アルツハイマー病でみられる「疲労(だるさ・倦怠感)」は、脳の変化による睡眠障害、昼夜のリズム(概日リズム)の乱れ、精神的・身体的消耗、食欲や体重の変化、合併する睡眠呼吸障害などが重なって生じやすいと考えられます。 [1] 疲労は病期が進むにつれて睡眠の質の低下や昼間の過度なうたた寝が強まり、夜間の覚醒が増えることでさらに悪化していく傾向がみられます。 [2] [3]
疲労の主な原因
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睡眠障害(夜間の中途覚醒・深い睡眠の減少・昼間の過度な眠気) アルツハイマー病では、病初期から夜間の覚醒が増え、深い睡眠(徐波睡眠)が減少します。 [4] 病期が進むとレム睡眠の低下や睡眠‐覚醒リズムの崩壊が目立ち、昼間の断片的な眠りが増えます。 [2] こうした睡眠の断片化は回復感を損ない、慢性的な疲労を招きます。 [3]
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概日リズムの乱れ(「夕暮れ症候群」など) 夕方から夜にかけて混乱・不安・焦燥が強まり、夜間の徘徊や覚醒が増えることで翌日の疲労が蓄積します。 [5] リズムの崩れは病期の重症度と並行して悪化しやすいです。 [2]
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精神的・身体的消耗 一日の終わりの精神的・身体的疲れ、環境変化への適応負荷、不安・抑うつなどが疲労感を強めます。 [6] 認知機能低下に伴う日常動作の試行錯誤や不穏・焦燥は、消耗とエネルギー浪費につながります。 [7]
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栄養・体重変化 食欲調整の脳領域が障害され、食事量低下や体重減少が起こり、エネルギー不足が疲労を助長します。 [7] 体重減少は中期以降に多いですが、前段階からみられることもあります。 [7]
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睡眠呼吸障害や脚のむずむずなどの合併 閉塞性睡眠時無呼吸はアルツハイマー病で併存しやすく、夜間の低酸素や断続的覚醒により強い日中疲労を引き起こします。 [3] こうした合併症は睡眠の質低下にさらに拍車をかけます。 [2]
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神経伝達物質・脳ネットワークの変化 睡眠・覚醒を制御する視床下部や脳幹などのネットワーク障害、メラトニン・セロトニン・ノルアドレナリンなどのシグナル変化が睡眠調節を乱し、疲労につながります。 [8] アミロイドβやタウの蓄積が睡眠規制領域に影響することも関与します。 [8]
病期ごとの変化
下の表は、病期に応じた疲労の特徴的な変化をまとめたものです。 [4] [2] [3] [5]
| 病期 | 睡眠・リズムの特徴 | 疲労の現れ方 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 早期(軽度) | 夜間の覚醒が増え、深い睡眠の割合が低下し始める(徐波睡眠の減少)。 [4] | 朝の倦怠感、日中の軽度の眠気や集中困難が出やすい。 [3] | レム睡眠は比較的保たれることが多いが、睡眠の連続性が崩れ始める。 [4] |
| 中期(中等度) | 夜間睡眠の断片化が進み、レム睡眠の低下や睡眠効率の悪化が目立つ。 [2] | 昼間のうたた寝増加、活動量低下、夕方以降の混乱・不安(夕暮れ症候群)に伴う消耗感が強まる。 [5] [2] | 日内リズムの逆転(夜間覚醒・昼間眠気)が出現しやすい。 [2] |
| 後期(重度) | 睡眠‐覚醒の概日リズムが破綻し、昼夜を問わず断片的な眠りが増える。 [2] | 常時の強い疲労感、日中の過度な眠気と夜間不眠が混在し、介護者の負担も増大。 [3] [2] | 合併する睡眠時無呼吸や不穏・徘徊が顕著で、施設入所の要因になりやすい。 [3] [2] |
なぜ疲労が悪化していくのか(メカニズムのポイント)
- 脳の病変進行により睡眠の「質」と「量」がともに低下し、休息効果が得にくくなるからです。 [2] 深い睡眠とレム睡眠の不足は、脳と身体の回復を妨げます。 [4]
- 体重減少や食事量低下によるエネルギー不足が重なるため、少しの活動でも消耗が大きくなります。 [7]
- 夕方から夜にかけての混乱・不安(夕暮れ症候群)で覚醒が持続し、翌日の眠気と疲労が増幅します。 [5]
- 睡眠呼吸障害や脚のむずむず症候群などの合併があると、断続的覚醒と低酸素で疲労がさらに強くなります。 [3] [2]
疲労を和らげるための実用的な対策
- 日中の活動量を少し増やす(散歩・軽運動)ことで、夜の睡眠を改善しやすくなります。 [9]
- 長い昼寝を避け、短時間の休息にとどめて夜間に睡眠を集約する工夫が有効です。 [9] [2]
- 就寝前は静かな環境づくり(強い光やスクリーンを避け、音楽や朗読などでリラックス)を試みます。 [9]
- 夕暮れ症候群が目立つ場合は、夕方の穏やかなルーティンと過度な刺激の回避が役立ちます。 [5]
- いびき・無呼吸・過度な日中の眠気があるときは、睡眠呼吸障害の評価を受けることが推奨されます。 [3]
- 家族・介護者の支援や日課の簡素化、環境調整(安全でわかりやすい配置)は、余計な消耗を減らします。 [10] [11]
まとめ
アルツハイマー病の疲労は、病変による睡眠の質低下とリズムの乱れ、精神・身体・栄養面の負担が重なって起こり、病期が進むほど睡眠の断片化と昼間の眠気が強まり疲労が悪化しやすいという流れが一般的です。 [2] [4] 同時に、夕暮れ症候群や睡眠呼吸障害などの合併があると疲労はさらに増幅します。 [5] [3] 生活リズムの見直し、日中活動の適度な増加、昼寝の調整、静かな就寝環境づくり、合併症の評価が、疲労軽減に役立つと考えられます。 [9] [3] [10]
関連する質問
出典
- 1.^↑Alzheimer's disease - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 2.^abcdefghijklmno[Sleep disturbances in Alzheimer's disease and other dementias].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefghijkSleep and Alzheimer's disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdefAlzheimer's disease. Sleep and sleep/wake patterns.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdefManaging Alzheimer's sleep problems(mayoclinic.org)
- 6.^↑Managing Alzheimer's sleep problems(mayoclinic.org)
- 7.^abcdWeight loss and Alzheimer's disease: temporal and aetiologic connections.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abSleep disturbances in Alzheimer's and Parkinson's diseases.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abcdAlzheimer's: Managing sleep problems - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 10.^abAlzheimer's disease - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
- 11.^↑Alzheimer's disease - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


