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2026年2月20日5分で読める

PubMedの資料に基づく | 頭頸部がんの治療(放射線治療や化学療法、手術)による副作用として記憶障害や物忘れは起こり得ますか?起こる場合の頻度・原因・持続期間と、予防や対処法について教えてください。

要点:

頭頸部がんの化学療法や頭頸部への放射線、手術関連の要因により、記憶障害や物忘れ(認知機能低下)が起こり得ます。治療中に強まり、治療後も数カ月〜数年持続することがあり、化学療法では自覚症状が増え、放射線では側頭葉などへの線量が多いほど影響が示唆されます。予防・対処は放射線計画の最適化、併存症状や薬剤の見直し、睡眠・運動などの生活調整、認知リハや外部記憶の活用が有効です。

頭頸部がんの治療では、記憶障害や物忘れ(認知機能低下)が起こり得ます。これは個人差がありますが、化学療法、頭頸部への放射線治療、手術後の全身状態や薬剤の影響などが重なって生じることがあり、治療中に強くなり、治療終了後もしばらく続くことがあります。 [1] [2]


起こり得る理由(メカニズム)

  • 化学療法の影響

    • 一部の抗がん剤は、注意力・記憶・情報処理速度などに影響し、いわゆる「ケモブレイン(化学療法関連認知機能障害)」として報告されています。 [3]
    • 炎症性サイトカインの変化、神経前駆細胞への影響、ホルモン変動、遺伝要因(例:APOE ε4)など、複数因子が関与すると考えられています。 [3]
  • 放射線治療(頭頸部照射)の影響

    • 頭頸部への放射線は、解剖学的に近接する側頭葉・小脳など脳の一部に偶発的に線量が及ぶことがあり、記憶(特に側頭葉・海馬領域関連)や手指の巧緻性が影響を受ける可能性が示唆されています。 [4]
    • 頭頸部がんの根治的(化学)放射線療法後の遅発性の神経認知機能低下(学習・記憶・注意など)について、放射線量と体積の増加、同時化学療法併用に伴う神経毒性リスクの増加が指摘されています。 [5]
  • 併用薬・全身状態の影響

    • 抗うつ薬、鎮痛薬、制吐薬、抗生物質、免疫抑制薬、睡眠薬、ステロイド、ホルモン療法・免疫療法など、一部の薬剤自体が思考や記憶に影響することがあります。 [1]
    • けいれん、気分(不安・抑うつ)、睡眠障害、疲労、疼痛、感染などの合併要因も認知機能に影響します。 [2]

頻度(どのくらい起こるか)

  • がん治療全般での自己申告ベースのデータ

    • 大規模調査では、治療前から「集中しにくい」が48%(重症5%)、治療中に67%(重症18%)に増加し、治療後6カ月でも58%(重症8%)が持続しました。 [6]
    • 「物忘れ」は治療前53%(重症4%)、治療中67%(重症18%)、6カ月後68%(重症11%)と報告されています。 [6]
  • 治療法別の傾向

    • 化学療法(単独または放射線併用)群で、治療中の症状増悪がより顕著でした。 [6]
    • 放射線単独群では、同時期の平均重症度が化学療法関連群より低い傾向でした。 [6]
  • 頭頸部がんに特化した所見

    • 頭頸部がんの放射線または化学放射線治療後の生存者10例の詳細神経心理検査では、9/10で客観的な認知機能障害がみられ、記憶障害が最も強い傾向でした。 [4]
    • 記憶障害の重症度は側頭葉への放射線線量と相関し、巧緻性低下は小脳線量と相関しました(探索的結果)。 [4]

持続期間(どれくらい続くか)

  • 多くの人で、治療中に症状が目立ち、治療終了後6カ月時点でもベースラインより高い症状が残ることがあります。 [6]
  • 一般的には、時間経過で改善する方もいますが、数カ月~数年持続する場合もあります(個人差が大きい)。 [3] [5]
  • 頭頸部がん治療後、生存率が向上しているため、遅発性の神経認知影響を長期に評価・フォローする重要性が指摘されています。 [5]

予防とリスク低減

  • 放射線計画の最適化

    • IMRTなどで側頭葉・海馬・小脳などの脳組織への不要な線量・体積を可能な限り抑える工夫が有用と考えられます。 [5]
    • 線量と記憶障害の関連が示唆されているため、線量制約の配慮が望まれます。 [4]
  • 治療全体の要因管理

    • 不安・抑うつ・睡眠障害・疲労・疼痛・感染など、認知を悪化させる合併因子を早期に評価し、治療します。 [2]
    • 認知に影響しうる薬剤(鎮痛薬、抗うつ薬、制吐薬、睡眠薬など)の用量・種類を見直すことがあります。 [1]
  • 生活習慣・セルフケア

    • 充分な睡眠、規則正しい運動、バランスの良い食事、アルコール・喫煙の回避は、総合的な脳機能の維持に役立ちます。 [2]
    • 認知的予備力を高める活動(読書、パズル、学習、社会交流など)も一案です。 [3]

日常でできる対処法

  • 認知リハビリ・代償戦略

    • 神経心理士による評価と、注意・記憶・実行機能に合わせたトレーニング(コグニティブリハビリ)が有用です。 [3]
    • メモ、チェックリスト、スマートフォンのリマインダー、カレンダーアプリなどを活用して、外部記憶を使う工夫をしましょう。 [3]
  • 仕事・学業の環境調整

    • マルチタスクを減らし、作業を細分化して一度に一つずつ進める、静かな環境で作業する、休憩をこまめに入れるなどが役立ちます。 [3]
    • 重要作業はエネルギーが高い時間帯に配置し、複雑な作業の前後に休息を入れます。 [3]
  • 併存症状のケア

    • 不安・抑うつが強い場合は心理士や精神科でのサポート、睡眠障害には睡眠衛生の徹底や必要に応じた治療を検討します。 [2]
    • けいれんや強い頭痛、急な認知悪化がある場合は、速やかな医療機関受診が必要です。 [2]

医療機関での評価が勧められるサイン

  • 日常生活や仕事に支障が出るほどの記憶・注意の低下が続く場合。 [3]
  • 新たな神経症状(ふらつき、しびれ、言語のもつれ、発作など)を伴う場合。 [2]
  • 薬の変更後に急に悪化した場合(副作用の可能性)。 [1]

まとめ(ポイント)

  • 頭頸部がんの治療では、記憶障害・物忘れが起こり得ると考えられ、特に化学療法中は自覚症状が増え、放射線では側頭葉などへの線量が高いほど記憶への影響が示唆されています。 [6] [4] [5]
  • 症状は治療終了後もしばらく続くことがあり、6カ月以降も残る人が一定数いますが、時間とともに軽快する方もいます。 [6] [3]
  • 予防には放射線計画の最適化、合併因子・薬剤の見直し、生活習慣の整え、認知リハビリや代償手段の活用が有効と考えられます。 [4] [5] [2] [3]

参考データ(比較表)

項目化学療法頭頸部への放射線手術・その他因子
起こり得る認知症状注意・記憶・処理速度低下(ケモブレイン) [3]記憶(側頭葉・海馬関連)、巧緻性などの低下の可能性 [4] [5]麻酔・疼痛・睡眠障害・気分・薬剤など多因子影響 [2] [1]
頻度の目安(自己申告)治療中の物忘れ・集中困難67%(重症18%) [6]放射線単独は化学療法併用群より平均重症度が低め [6]個人差が大きい(全身状態と併用薬の影響) [2]
持続期間治療後6カ月でも持続例あり [6]遅発性影響の可能性、長期フォロー推奨 [5]症状により短期~長期 [2]
予防・対処認知リハ、併用薬調整、睡眠・運動・外部記憶活用 [3]線量・体積の最適化、長期モニタリング [4] [5]合併症状の治療、薬剤見直し [2] [1]

必要に応じて、担当医に「最近の物忘れや集中力の低下、困っている具体的な場面、使用中の薬、睡眠・気分の状態」を共有し、神経心理検査やリハビリ、薬剤調整、必要な専門科(リハビリテーション科・精神科・神経内科など)への紹介を相談してみてください。 [3] [2] [1]

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出典

  1. 1.^abcdefgManaging Cognitive Changes(mskcc.org)
  2. 2.^abcdefghijklmRadiation, chemotherapy, and symptom management in cancer-related cognitive dysfunction.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abcdefghijklmnChemotherapy-related cognitive impairment.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  4. 4.^abcdefghCognitive functioning after radiotherapy or chemoradiotherapy for head-and-neck cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  5. 5.^abcdefghiNeurocognitive function after (chemo)-radiotherapy for head and neck cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  6. 6.^abcdefghijSelf-reported cognitive impairment in patients with cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。