
PubMedの資料に基づく | パーキンソン病ではどのような視覚の問題(ぼやけ、複視、コントラスト低下など)が症状として現れやすいですか?
要点:
パーキンソン病では、ぼやけや複視、コントラスト感度低下、色覚変化、眼球運動の遅れ、動き知覚・視覚処理の低下、錯視・幻視など多面的な視覚症状が生じやすい。背景には網膜ドパミン機能低下や眼球運動の協調不全、中枢の視覚処理遅延があり、読書や歩行、運転など日常生活に影響する。眼科・神経内科で評価し、照明調整やコントラスト強調、拡大、プリズム眼鏡、視機能リハなどの対策が有用。
パーキンソン病では、運動症状だけでなく視覚にもさまざまな変化が起こりやすく、生活の質に影響します。ここでは、よくみられる視覚症状(ぼやけ、複視、コントラスト低下など)と、その背景、受診の目安についてわかりやすくまとめます。特に「視力のにじみ」「コントラストが見えづらい」「二重に見える」「読みづらい」「動くものが追いにくい」「色が分かりづらい」「錯視や幻視が出る」といった症状が報告されています。 [1] [2]
視覚症状の全体像
- ぼやけ・にじみ(視力低下):細かい文字が読みづらくなる、遠くがにじむといった訴えがみられます。視力そのものの低下に加え、視覚処理速度の遅れが読みづらさに関係します。 [1]
- コントラスト感度低下:濃淡の差が分かりにくくなり、薄暗い場所での見え方や階段・段差の把握が難しくなります。コントラスト感度はパーキンソン病でしばしば低下する代表的な機能です。 [1]
- 色覚の変化:色の区別がつきにくい、特に淡い色合いの識別が難しいと感じることがあります。 [1]
- 複視(二重に見える):近見時の「輻輳不全(両眼を寄せにくい)」や眼球運動の微妙なずれで、文字が二重に見える・読書がつらいなどが起こります。 [2]
- 眼球運動の遅れ・ぎこちなさ:サッケード(視線を素早く動かす動き)の速度低下・過小運動(目標に届かず小さく動く)や、追従運動がぎこちない(サッカディック追従)などがみられ、「動くものを目で追いづらい」「行を飛ばす」といった日常の不便につながります。 [2]
- 視覚処理の遅さ・動き知覚の低下:変化の速い映像や混雑した視覚情報の処理が遅れ、人混み・運転・スポーツ観戦などが負担になります。 [1]
- 視空間・認知の問題:距離感・方向感の不安定、顔認識の困難など視覚認知の側面にも影響が出ることがあります。 [1]
- 錯視・幻視(見間違い・実在しないものが見える):影や模様が人に見えるなどの錯視、さらに病期が進むと複雑な幻視があらわれることがあります。認知機能低下や視力・コントラスト低下、うつなどが関与すると報告されています。 [3]
代表的な症状の比較表
| 症状 | よくある訴え | 背景となる機序の例 | 生活への影響 | 受診の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ぼやけ・にじみ | 小さな文字が読みにくい、遠方がかすむ | 視力・コントラスト低下、網膜ドパミン機能低下、視覚処理遅延 | 読書・スマホ・夜間視認性低下 | 進行や日常支障で眼科/神経内科相談 [1] |
| コントラスト低下 | 段差や薄暗い場所で見えにくい | コントラスト感度低下、網膜/中枢処理の変化 | 転倒リスク、夜間歩行の不安 | 照明調整・高コントラスト環境工夫、評価の相談 [1] |
| 複視(二重に見える) | 文字が二重、近くが見づらい | 輻輳不全、眼球運動の協調低下 | 読書・手元作業が困難 | プリズム眼鏡等の適応含め眼科受診を検討 [2] |
| 追視・サッケード異常 | 行を飛ばす、動く対象を追えない | サッケード過小・速度低下、追従のサッカディック化 | 読書、運転、スポーツ観戦の困難 | 視機能リハや環境調整の相談 [2] |
| 色覚の変化 | 色の見分けが悪い | 網膜・中枢視覚処理の変化 | 色区別が必要な場面で不便 | 必要に応じ評価・生活工夫 [1] |
| 錯視・幻視 | 影や模様が人に見える、存在しない物が見える | 視覚入力低下+中枢処理変化、認知機能・睡眠異常・気分の影響 | 不安・安全性の懸念 | 認知・睡眠・薬剤評価含む診療が望ましい [3] |
なぜ視覚に影響が出るのか
- 網膜ドパミンの低下:パーキンソン病では網膜内のドパミン機構が影響を受け、コントラスト感度や色覚、中心窩(フォベア)機能が障害されやすいとされています。光干渉断層計(OCT)で網膜神経線維層の変化をとらえる研究もありますが、結果は一様ではなく、個人差や測定技術の影響も指摘されています。 [4] [5]
- 眼球運動(オキュロモーター)の変化:サッケードの速度低下、過小運動、輻輳の弱さなど、「目の動きにもパーキンソンの“動作の遅さ(ブレーキ)”が表れる」ことが示されています。 [2]
- 中枢の視覚処理の遅延:視覚処理速度の低下や視覚認知の障害により、動きの知覚、複雑な環境での見え方、顔の認識などに影響が出ます。 [1]
生活の中で困りやすい場面と対策のヒント
- 読書・画面閲覧:行間を広くする、拡大表示、ルーペや電子書籍のフォント拡大、明るく均一な照明を使うと楽になります。視線移動が難しい場合は音声読み上げの併用も有用です。 [1] [2]
- 屋外や夜間歩行:コントラスト低下や段差認識の困難に備え、明るいライト・足元照明・コントラストのはっきりした屋内環境を整えると安全性が高まります。 [1]
- 二重に見えるとき:片眼遮閉テストで楽になるか試す、プリズム眼鏡の適応を眼科で相談する方法があります。近見時に症状が強いなら、作業距離や休憩の工夫も役立ちます。 [2]
- 錯視・幻視があるとき:薄暗さや視覚入力の乏しさが誘因になることがあるため、十分な照明、影の少ない環境、視力や眼疾患(白内障など)の治療が助けになります。症状が不安や混乱を招く場合は、認知機能・睡眠・気分の評価や内服の見直しも検討されます。 [3]
医療機関での評価と相談のポイント
- 眼科評価:視力、屈折、コントラスト感度、色覚、眼球運動、輻輳機能、必要に応じてOCTなどを行い、白内障・緑内障・黄斑疾患などの併発を確認します。パーキンソン病による変化と、加齢性眼疾患の影響が重なっていることも多いです。 [5]
- 神経内科評価:視覚症状の時間帯変動(オン/オフ)や内服(レボドパなど)との関連、認知機能・睡眠障害・気分の状況、幻視の有無を合わせてみていきます。幻視は病状や認知機能の変化と関係し、うつ・視力低下なども関連因子として知られています。 [3]
- 視機能リハビリ・環境調整:コントラスト強調、拡大、照明、視線移動の訓練など、「見え方」を支える工夫が有効です。 [1] [2]
よくある症状と根拠のあるポイント(要約)
- パーキンソン病では、視力・コントラスト・色覚・眼球運動・動き知覚・視覚処理速度に幅広い影響が生じうることが知られています。 [1]
- 複視(とくに近見時)は、輻輳不全やサッケードの異常など眼球運動の問題が背景にあることが多いです。 [2]
- 錯視・幻視は病期が進むと増えやすく、認知機能低下、視力やコントラストの低下、うつや日中の眠気などが関連因子として挙げられます。 [3]
- 網膜レベルではドパミン機能の低下が示唆され、OCTで構造変化が報告される一方、研究結果は一様でなく今後の標準化が課題です。 [4] [5]
注意したいサイン
- 視力の急激な低下、新たな複視や視野欠損、眼痛や急な視力喪失は、脳・眼の別の病気(脳卒中、網膜剥離、急性緑内障など)の可能性もあるため、速やかな受診が望まれます。一般的なパーキンソン病治療薬や一部の併用薬でぼやけなどが出ることもあるため、症状の出現時期と薬の変更のタイミングを医師に伝えると評価に役立ちます。 [1]
まとめ
パーキンソン病では、ぼやけ、複視、コントラスト低下、色の見えづらさ、動くものの見づらさ、読みづらさ、錯視・幻視など、多面的な視覚症状が起こりやすいことがわかっています。これらは網膜ドパミン機能の変化、眼球運動の遅れや協調不全、中枢の視覚処理の遅さなどが組み合わさって生じます。眼科と神経内科の両面で評価し、照明・コントラスト・拡大・プリズム・リハビリなどの工夫を組み合わせることで、日常生活の見え方を改善できる可能性があります。 [1] [3] [2] [4] [5]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghijklmnopqVisual symptoms in Parkinson's disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdefghijklOculomotor abnormalities in Parkinson's disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefgVisual symptoms in Parkinson's disease and Parkinson's disease dementia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcOptical coherence tomography in Parkinson's disease: is the retina a biomarker?(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdRetinal thickness in Parkinson's disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


