
WHOの資料に基づく | 口腔がんに関連してめまいが起こることはありますか?その原因や注意すべき症状は何ですか?
口腔がんそのものが直接めまいを起こすことは多くありませんが、頭頸部がんの広がりや治療(放射線・化学療法の耳毒性)などでめまい・ふらつきが生じることがあります。神経浸潤に伴う自律神経反射(失神様発作)、痛みや嚥下障害による脱水・栄養不良でも立ちくらみが起こり得ます。耳鳴り・難聴の進行、照射後の持続的めまい、片側頭頸部痛に続く失神、口内の治らない潰瘍や頸部しこりを伴う場合は早めに耳鼻咽喉科・頭頸部外科で評価を受けてください。
口腔がんと「めまい」の関係:起こりうる原因と注意すべき症状
口腔がんそのものが直接「めまい」を起こすことは一般的には多くありませんが、口腔・頭頸部領域のがんでは、がんの広がり方や治療の影響によってめまい(ふらつき、立ちくらみ、回転性めまい)が生じることがあります。がんが耳や神経に関わる構造へ影響したり、治療(放射線・化学療法)の副作用、痛み反射による自律神経反応などが関与します。 [1] [2]
まず知っておきたい口腔がんの基本症状
口腔がんは以下のような症状が続くときに疑われます(2週間以上持続が目安)。口内の治らない潰瘍やしこり、白斑・赤斑、歯のぐらつき、嚥下(飲み込み)障害、口や耳の痛み、顎や舌の動かしにくさ、頸部のリンパ節腫れなどが代表的です。 [3] [4] これらの症状は口腔がんの「警戒サイン」で、耳痛(耳の奥の痛み)や声の変化が伴うこともあります。 [5] [3]
めまいが起こりうる主な原因
1) 放射線治療による前庭障害(内耳の平衡機能低下)
頭頸部がんの放射線治療では、照射範囲に内耳(前庭器官)が含まれるとめまい・ふらつきが起こることがあります。治療終了後3~6か月で検査上の前庭機能異常が増えることが報告されており、照射線量との相関は一様ではないものの有意な影響が示されています。 [1] 放射線単独やシスプラチン併用の化学放射線療法でも感音性難聴(聴力低下)が一定割合で発生し、耳症状とめまいが併発することがあります。 [2]
2) 化学療法の耳毒性(オトトキシシティ)
シスプラチン系薬剤は耳毒性で知られ、難聴や耳鳴り、前庭機能低下によるめまいを引き起こすことがあります。 [2] 一部のレジメンではカルボプラチンでも前庭障害の頻度上昇(例:27%)が報告されています。アルコールや併用薬の神経毒性も中枢性めまいに関与しうる点が指摘されています。 [6]
3) がんの神経浸潤・再発による自律神経反射(失神・ふらつき)
頭頸部がんが舌咽神経や迷走神経などの脳神経に浸潤すると、急な片側の頭・頸部痛に続き徐脈・低血圧が起こる失神(気を失う)発作が反復することがあります。これは「グロソファリンジアル神経痛関連失神」などの機序が知られており、ふらつきや前失神として自覚されるケースもあります。 [7] 再発腫瘍のサインとして現れることがあり、吸引刺激や頸動脈洞圧迫で誘発されるケースも報告されています。 [7]
4) 耳痛・嚥下障害・顎関節の障害に伴う二次的めまい
口腔がんの症状として耳痛や顎の腫れ・咀嚼困難、嚥下障害があり、痛みによる過換気、栄養不良や脱水などが重なると立ちくらみ・ふらつきを感じやすくなります。 [3] [8] また顎や舌の動かしにくさや頸部リンパ節腫脹があると姿勢・頸部の可動が偏り、前庭系の負担でめまいが誘発される場合もあります。 [4] [3]
注意すべき「めまい」+随伴症状(レッドフラッグ)
以下に当てはまる場合は早めの受診が望ましく、耳鼻咽喉科・頭頸部外科・腫瘍内科での評価が推奨されます。
- 新たな耳痛、耳鳴り、聴力低下がめまいと同時に進行する。耳や内耳への影響が疑われます。 [3] [2]
- 照射終了後数か月以内の持続的なふらつき・回転性めまいがある。前庭障害の可能性があります。 [1]
- 急な片側の頭・頸部痛に続く意識消失・強いふらつきが反復する。神経浸潤による自律神経反射(失神)が疑われます。 [7]
- 嚥下困難、頸部のしこり、口内の治らない潰瘍など口腔がんのサインが持続し、めまいが新規に加わった。病勢変化の可能性があります。 [3] [4]
- 顎の腫れ・開口障害や声の変化があり、ふらつきが悪化する。構造的影響が疑われます。 [5] [4]
受診時に役立つチェックポイント
- めまいのタイプ:回転性(ぐるぐる)/非回転性(ふわふわ・ふらつき)/立ちくらみ(失神前)を区別しましょう。症状の特徴が診断のヒントになります。 [1] [7]
- 発症タイミング:放射線・化学療法の「前・最中・後」での発症時期、増悪因子(頭位変換、嚥下、痛み、咳・吸引など)をメモすると役立ちます。 [1] [7]
- 耳症状の有無:耳鳴り、難聴、耳痛、閉塞感の併発は耳毒性や前庭障害を示唆します。 [2] [3]
- 神経症状:顔面しびれ、嚥下時の鋭い痛み、声のかすれなどは神経浸潤の手掛かりとなり得ます。 [5] [3]
診断・検査の例
- 耳鼻咽喉科的検査:温度刺激検査(カロリックテスト)、回転検査、眼振検査(ENG/VNG)で前庭機能を評価します。放射線後には異常率が時間とともに増えることがあります。 [1]
- 聴力検査:純音聴力、DPOAEなどで耳毒性をチェックします。化学放射線療法後は感音性難聴の頻度が上がり得ます。 [2]
- 画像検査:頸部MRI/CTで腫瘍の広がり、脳神経・内耳周辺の関与を評価します。神経浸潤が疑われる場合に有用です。 [7]
- 心血管評価:失神様発作がある場合は心電図、ホルター、圧受容体テストなどで自律神経性機序の鑑別を行います。 [7]
治療・対応の考え方
- 前庭障害(放射線・薬剤性)には、前庭リハビリテーションや一時的な制吐・抗めまい薬の使用が検討されます。耳毒性薬剤の累積投与量や併用薬の見直しが重要です。 [2]
- 化学療法関連耳毒性では、投与スケジュールの調整、オーディオロジーによるモニタリング、症状進行時のレジメン変更が考慮されます。 [2] [6]
- 神経浸潤による失神・めまいが疑われる場合、疼痛コントロール、抗てんかん薬(例:カルバマゼピン)、局所放射線、稀に神経処置が報告されています。心臓ペースメーカーは「純粋な血管抑制型失神」には効果が乏しい場合があります。 [7]
- 併発する口腔がんの症状(治らない潰瘍、嚥下障害、頸部しこり等)がある場合は、早期の専門医受診が望まれます。 [3] [4]
口腔がん関連の重要サイン(まとめ)
- 2週間以上続く口内の潰瘍・しこり・白赤斑・歯のぐらつきは要注意です。 [3]
- 耳痛、声の変化、頸部のしこりがある場合は早めに評価を受けましょう。 [5] [4]
- 治療中・治療後の新規のめまい、耳鳴り、聴力低下は耳毒性・前庭障害の可能性があります。 [1] [2]
- 急な片側頭頸部痛に続くふらつき・失神は神経浸潤を示唆し、至急評価が必要です。 [7]
参考:原因別の特徴と対応(簡易一覧)
- 放射線後前庭障害:治療後数か月でふらつき増悪、ENGで異常が増える傾向。→ 耳鼻科評価、前庭リハ。 [1]
- シスプラチン・カルボプラチン耳毒性:耳鳴り・難聴+めまい併発。→ 聴力モニタリング、薬剤調整。 [2] [6]
- 神経浸潤・再発関連失神:片側痛→徐脈・低血圧→意識消失/ふらつき。→ 画像・心自律評価、疼痛・神経治療。 [7]
- 痛み・嚥下障害・栄養不良:立ちくらみ(起立性低血圧)傾向。→ 水分・栄養管理、原疾患治療。 [3]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghiVestibular apparatus disorders after external radiation therapy for head and neck cancers.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdefghijkSensorineural hearing loss in patients with head and neck cancer after chemoradiotherapy and radiotherapy: a systematic review of the literature.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefghijkMouth cancer - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 4.^abcdefMouth Cancer Signs & Symptoms | Memorial Sloan Kettering Cancer Center(mskcc.org)
- 5.^abcdOral Cancer(stanfordhealthcare.org)
- 6.^abc[Vestibulotoxic effects of the cytostatic drug carboplatin in patients with head and neck tumors].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcdefghijkSyncope from head and neck cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^↑Mouth (Oral) Cancer(mskcc.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


