
PubMedの資料に基づく | 多発性硬化症ではめまいはなぜ起こり、どのような特徴があり、受診の目安や治療法は何ですか?
多発性硬化症のめまいは、脳幹・小脳など中枢前庭系や眼球運動経路の脱髄により生じ、回転感、眼振、歩行不安定など中枢性の所見を伴いやすいのが特徴です。急な強いめまい・嘔吐・立てないなどの症状があれば早期受診し、MRIなどで評価します。治療は急性期のステロイド(必要に応じて血漿交換)に加え、前庭リハや対症療法、長期の疾患修飾薬で再発予防を行います。
多発性硬化症のめまい:原因・特徴・受診の目安・治療
多発性硬化症(MS)では、脳幹や小脳、前庭神経の通り道などの「平衡・視線制御」に関わる中枢神経が炎症と脱髄(神経の絶縁被膜が傷むこと)を起こすため、めまい(ふらつき・回転感・眼振)が出やすくなります。 [1] MSの症状の一つに「めまい(周囲が動いているように感じる回転性の錯覚:前庭性めまい)」が含まれ、視覚症状や歩行バランス障害と併発することがあります。 [2] [1]
なぜめまいが起こるか(原因)
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中枢前庭系の脱髄
脳幹(橋・延髄)や小脳脚など、前庭機能の中枢ネットワークに病変ができると、体の回転・頭位変化の情報処理が乱れ、回転性めまい・眼振・歩行の不安定が生じます。 [3] 病変は前庭神経の橋内路(第8脳神経の線維束)に限らず、延髄・小脳脚・中脳など多部位で見つかることがあります。 [3] -
視線制御(眼球運動)障害
中枢性の眼球運動異常(追視・視運動性眼振の異常など)が起きると、視覚と前庭情報の統合が崩れて、めまい・酔い感・ふらつきが強くなります。 [4] MSでは早期例でも前庭系や視運動経路の異常が検査でみつかることがあり、潜在的な前庭障害がめまいの背景に隠れていることがあります。 [4] -
発作(再発)時の炎症増悪
MSの急性増悪では新しい脱髄プラークが前庭・小脳系に出現して、急性のめまい症候群(吐き気・眼振・歩けないほどのふらつき)を引き起こすことがあります。 [3] こうした急性例ではステロイド治療で改善が期待できます。 [3]
どのような特徴があるか(臨床像)
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中枢性めまいの所見が出やすい
MS関連のめまいでは、眼振の性状や視線の安定化に中枢性の「おかしさ」が見つかることが多く、末梢(耳の三半規管)由来のめまいと区別できます。 [3] たとえば、頭を急に振っても前庭機能が正常に見える「水平ヘッドインパルス検査(h-HIT)正所見)は、末梢障害では起こりにくく、中枢病変の手がかりになります。 [3] -
眼球運動異常の頻度
自発眼振・頭位眼振・視運動性眼振の異常が多数例でみられ、両側性の視運動性眼振異常は広範な大脳病変を示唆します。 [4] 早期・非典型例でも前庭系検査がMSの手がかりになることがあります。 [4] -
他のMS症状との併発
めまいは視力低下(視神経炎)、複視、小脳性運動失調、言語のもつれ、歩行障害、疲労感などと一緒に現れる場合があります。 [2] 体温上昇で一時的に症状が悪化する「偽再発」の形でめまいが強まることもあります。 [5]
受診の目安(いつ受診するか)
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すぐに受診すべき状況
新たな強い回転性めまい・嘔吐・立てないほどのふらつきが急に出た場合は、MSの急性増悪や脳幹・小脳病変の可能性があり、速やかな評価が望まれます。 [3] 不安を感じる症状があるときは受診を予約しましょう。 [5] -
MSの診断・評価に必要な検査
病歴・診察に加えて、脳・脊髄MRIで脱髄病変(プラーク)を確認します。 [6] 必要に応じて髄液検査や血液検査で他疾患を除外し、総合的に診断します。 [6] -
末梢めまいとの鑑別
良性発作性頭位めまい症(BPPV)など耳由来の末梢めまいと、中枢性めまい(脳幹・小脳)を見分けることが重要です。 [7] MSは中枢性めまいの原因の一つで、脳幹・小脳の病変に伴います。 [8]
治療法(急性期と長期管理)
急性期(再発時)の治療
- コルチコステロイド静注(ステロイドパルス)
急性の前庭症候群がMSのプラークによる場合、ステロイド治療で症状改善が期待できます。 [3] 一般的にMSの急性期にはステロイドが用いられ、反応が乏しい場合は血漿交換療法が検討されます。 [9]
症状緩和・機能回復
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前庭リハビリテーション
MSにおけるめまい・ふらつきに対して、前庭リハビリは疲労軽減、姿勢制御の改善、めまいによる生活障害の軽減に有効性が示されています。 [10] 感覚条件(視覚・体性感覚・前庭)を段階的に負荷するバランス訓練が、実際の条件に依存して改善をもたらすことがあります。 [11] -
めまい・吐き気への薬物療法
必要に応じて、めまいや吐き気を抑える薬(制吐薬や前庭抑制薬)を短期間使うことがあります。 [12] ただし中枢性めまいでは薬だけでなくリハビリ併用がより有益です。 [12]
長期の疾患修飾治療(再発予防)
- 疾患修飾薬による再発・進行抑制
MSでは免疫を調整する薬で再発率や病勢の進行を抑える長期治療が行われ、めまいを含む神経症状の再発予防につながります。 [9] 定期的な通院と服薬継続が長期管理の要です。 [9]
自分でできる対策・生活上の工夫
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安全確保と環境調整
ふらつきがある時は手すりの設置や歩行補助具の利用で転倒リスクを減らします。 [12] 視力や足の感覚(末梢神経の状態)を定期的に確認し、バランスに影響する要素を整えましょう。 [12] -
誘因の回避
発熱や過度な体温上昇で症状が一時的に悪化することがあるため、暑熱環境や過度な入浴でののぼせに注意します。 [5] めまいを悪化させる薬剤(鎮静薬・抗けいれん薬など)や低血圧によるふらつきにも留意が必要です。 [13]
よくある質問へのポイント
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めまいはMSの一症状として珍しくないですか?
MSの主要症状に「めまい・回転感」が含まれますが、個人差が大きく、視覚・歩行・感覚症状と一緒に出ることもあります。 [2] [1] -
耳の病気との違いは?
耳の末梢性めまい(BPPVなど)は頭位で増悪・短時間発作が典型ですが、MSでは中枢性の眼球運動異常や前庭検査の所見が手がかりになり、MRIで中枢病変が確認されることがあります。 [7] [6] [4] -
治るのか?再発は?
急性増悪のめまいはステロイドで回復が期待でき、長期の免疫調整治療で再発を減らせますが、完全な再発防止は難しいため、定期受診とリハビリが重要です。 [3] [9]
受診のチェックリスト
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今すぐ受診したいサイン
急な強い回転性めまい、立てない・歩けないほどのふらつき、吐き気・嘔吐、複視や言語障害など「中枢神経のサイン」を伴うとき。 [3] 不安な新症状が続くときは医療機関へ相談しましょう。 [5] -
診療で行われること
神経診察と前庭機能のベッドサイド評価、脳・脊髄MRI、必要に応じた髄液検査や血液検査で総合的に評価します。 [6] 末梢性めまいとの鑑別も並行して行います。 [7] [8]
まとめ
MSのめまいは「中枢前庭系の脱髄」が主因で、眼球運動異常やバランス障害を伴いやすいのが特徴です。 [3] [4] 急性増悪ではステロイドが有効で、長期的には疾患修飾薬と前庭リハビリの併用が症状軽減と再発抑制に役立ちます。 [3] [9] [10] 不安な新症状や強いふらつきが出たら、早めの受診・MRI評価がすすめられます。 [5] [6]
関連する質問
出典
- 1.^abcMultiple sclerosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 2.^abcMultiple sclerosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 3.^abcdefghijklMultiple sclerosis as a cause of the acute vestibular syndrome.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdefVestibular aberrations in multiple sclerosis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdeMultiple sclerosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 6.^abcdeMultiple sclerosis - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
- 7.^abcVertigo-associated disorders: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 8.^abVertigo-associated disorders: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 9.^abcde신경세포에 염증이 생기는 다발성 경화증 – 다발성 경화증 | 건강정보(health.severance.healthcare)
- 10.^abEffects of vestibular rehabilitation on multiple sclerosis-related fatigue and upright postural control: a randomized controlled trial.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 11.^↑Stabilometric assessment of context dependent balance recovery in persons with multiple sclerosis: a randomized controlled study.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 12.^abcdVestibular Balance Disorders Program(stanfordhealthcare.org)
- 13.^↑Dizziness - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


