
PubMedの資料に基づく | 多発性硬化症では視覚の問題としてどのような症状が現れ、視力低下や視野障害はどの程度の頻度で起こりますか?
要点:
多発性硬化症では、視神経炎を中心に片眼の痛みを伴う視力低下、ぼやけ、複視、眼振、視野欠損などの視覚症状がよくみられます。初発が視神経炎は約20%、持続する視覚の訴えは約35%で、視野異常は自覚がなくても検査で高頻度に検出されます。急性視神経炎は多くが数週間で改善し、12か月以内に約93%が0.5以上の視力へ回復します。
多発性硬化症(MS)では視覚の問題がとてもよくみられ、代表的には視力低下(特に一側性で痛みを伴うことが多い)、ぼやけ、複視(ものが二重に見える)、眼振(眼球が無意識に揺れる)などが起こります。 [1] とくに「視神経炎(ししんけいえん)」はMSでよくみられる視覚症状で、数時間から数日のうちに片目の痛みを伴う視力低下が進み、数週で plateau(安定)したのち、自然回復またはステロイドで回復が加速することが一般的です。 [2] MSでは視神経炎のほかにも、複視や眼振のような眼球運動の異常がみられることがあります。 [3] [1]
視覚症状の種類
- 視力低下(中心視の障害・色覚低下):多くは片眼性で、眼球運動時の痛みを伴うことが特徴的です。 [1] 色の見え方が落ちる(失色視)ことも視神経炎でよく起こります。 [4]
- 複視(ものが二重に見える):脳幹の神経経路が侵されると左右の眼の動きがずれて複視になります。 [3] このタイプの眼症状は「内側縦束病変(MLF病変)」など眼球運動系の障害に関連します。 [5]
- 眼振:意図しない眼球の揺れで、視界が揺れる・見づらいなどの不快感につながります。 [3]
- 視野障害(暗点・視野欠損):視神経や視覚経路の部位により、弓状暗点などの視野欠損が生じます。 [6] 自覚症状が乏しくても、視野検査で異常が見つかることは珍しくありません。 [6]
頻度と疫学(どのくらい起こる?)
- 視神経炎がMSの最初の症状となるのは、報告では約20%とされています。 [7] 急性視神経炎の自然経過では、多くの方が数週間で改善し、12か月以内に約93%が20/40(0.5)以上の視力に回復します。 [8]
- 持続的な視覚の訴え(見えづらさ・複視など)はMS全体の約35%でみられたというコホート報告があり、視神経(求心路)と眼球運動系のいずれの機能障害も関与します。 [5] この研究では、両側性の視神経障害や両側性の内側縦束障害による眼球運動異常が多く認められ、日常生活の視機能QOL低下と関連しました。 [5]
- 視野障害の頻度については、古典的研究ながら、MS患者の視野検査で高率に異常が検出され、確実例ではほぼ全例、可能例でも81%に異常がみられました。 [6] 自覚症状がないMSの方でも約75%に視野異常が見つかったとの報告があります。 [6]
- 複視・眼振などの眼球運動症状はMSの一般的症状群に含まれ、個々の頻度は病変部位に依存しますが、神経眼科的再発が多い群ほど視覚関連QOLの低下が顕著になります。 [3] [5]
視力低下の経過と予後
- 視神経炎の多くは自然に改善しますが、視力回復を早める目的でステロイド点滴(高用量コルチコステロイド)が用いられることがあります。 [8] ただし、長期的な最終視力の到達点(最終的な視力の良し悪し)には大きな差を生まないとされています。 [8]
- 再発リスクは無視できず、長期観察で10年再発率が約35%という報告があります。 [8] また、脳MRIで白質病変が多いほどMSの発症・進行リスクが高く、視神経炎を繰り返す背景となることがあります。 [8]
視野障害のパターン
- 弓状暗点が比較的よくみられる視野欠損パターンとして報告されています。 [6] 中心暗点や辺縁の欠損など、障害部位によって多彩なパターンが生じます。 [6]
- 色覚異常も併発しやすく、視力が回復しても微細な色覚障害やコントラスト感度低下が残ることがあります。 [9] そのため、標準視力表だけでなく色覚・コントラスト感度・視野の多面的評価が役立ちます。 [9]
受診と検査のポイント
- 脳MRI(視神経も含む)は視神経炎の評価やMSリスク層別化に重要です。 [4] 視覚誘発電位(VEP)や視野検査、色覚検査、OCT(光干渉断層計)などを組み合わせると、見逃されやすい機能障害の検出に有用です。 [10] [9]
- 治療は、急性期の高用量ステロイドで回復を早めることがあり、MSの病勢コントロール(疾患修飾薬)は将来的な再発や障害の蓄積を減らす目的で検討されます。 [8] 一方で、個々の病型や合併症により治療方針は変わるため、神経内科・神経眼科での評価が大切です。 [8]
まとめ
- MSでは視力低下、複視、眼振、視野障害などの視覚症状がよくみられ、視神経炎は典型的な初発・再発所見です。 [1] [2] 視力低下は多くが改善しますが、約3~4割で見えづらさが持続するという報告もあり、視野や色覚を含む機能評価が重要です。 [5] 視野異常は自覚が乏しくても高頻度に検出されるため、定期的な視機能検査が推奨されます。 [6]
このような見え方の変化や目の痛み、複視があれば、いつ頃から・どの目に・どの程度か、明るさや色の見え方の変化、目を動かしたときの痛みの有無などをメモして、早めに神経内科または眼科(神経眼科)で相談してみてください。 [4]
関連する質問
出典
- 1.^abcdMultiple sclerosis - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 2.^abExplaining multiple sclerosis(mayoclinic.org)
- 3.^abcdMultiple Sclerosis - Symptoms, Causes, Treatment | NORD(rarediseases.org)
- 4.^abcOptic neuritis: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 5.^abcdePersistent visual impairment in multiple sclerosis: prevalence, mechanisms and resulting disability.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdefgVisual field abnormalities in multiple sclerosis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^↑Optic neuritis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abcdefgOptic neuritis: a review.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abc[Evaluation of the central visual field by the Friedmann Mark I analyzer and color vision in 85 patients with multiple sclerosis. Correlation with visual evoked potentials in 50 cases].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 10.^↑[Optic nerve neuritis].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


