Medical illustration for PubMedの資料に基づく | 多発性硬化症ではなぜ嚥下障害が生じ、どのような症状や合併症が現れますか? - Persly Health Information
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2026年2月16日5分で読める

PubMedの資料に基づく | 多発性硬化症ではなぜ嚥下障害が生じ、どのような症状や合併症が現れますか?

要点:

多発性硬化症では中枢神経の脱髄により嚥下の神経・筋の協調が乱れ、口腔期や咽頭期で飲み込みにくさやむせが起こります。症状は咽頭残留、湿性嗄声、食事時間の延長などで、合併症として誤嚥性肺炎や栄養不良・脱水が重要です。評価はベッドサイドに加えVFSS/FEESを行い、食形態調整・姿勢手技・リハビリ・栄養支援で管理します。

概要

多発性硬化症(MS)では、脳や脊髄の神経伝達が障害されるため、飲み込み(嚥下)に関わる神経・筋肉の連携が乱れ、嚥下障害(飲み込みにくさ)が起こりやすくなります。これは主に口腔期・咽頭期の協調運動不全として現れ、重症化すると誤嚥(食べ物や飲み物が気管へ入ること)や誤嚥性肺炎、栄養不良・脱水といった合併症につながることがあります。 [1] [2] [3]


なぜMSで嚥下障害が起こるのか(原因)

  • 神経の脱髄・伝導障害
    MSでは中枢神経(脳・脊髄)の脱髄が生じ、嚥下に必要な多数の神経経路の「タイミング」と「力の出し方」がずれます。嚥下は非常に複雑な反射・随意運動の組み合わせで、微妙な神経のバランスが崩れると機能低下が起きます。 [1]
    特に口腔期(舌で食塊を形成・送り出す)や咽頭期(のどで食塊を安全に食道へ送る)に異常が多く報告されています。 [2]

  • 咽頭・上部食道括約筋の機能障害
    上部食道括約筋(輪状咽頭筋)が過緊張や協調不全を起こすと、食塊が食道へスムーズに通過できず、咽頭に停滞・逆流・誤嚥のリスクが上がります。 [2]

  • 小脳・脳幹の病変関与
    小脳機能障害が強いほど嚥下障害の頻度が高い傾向があり、病期が長い・障害度が高いほど嚥下障害が増えることが示されています。 [3]

  • MSに伴う全身症状の影響
    疲労、筋力低下、協調運動の障害、言語・構音の問題(ろれつが回りにくい)などが嚥下機能にも波及します。 [4]


どのような症状が出るのか(自覚しやすいサイン)

  • 飲み込みにくさ・むせやすさ
    水分でむせる、食事中に咳が出る、のどに詰まる感じがする、といった症状が典型的です。 [5] [6]

  • 食事時間が長くなる・食事量が減る
    食塊形成や送り込みが難しく、食べるのに時間がかかる、疲れて食事を中断することがあります。 [2]

  • 口腔内・咽頭での停滞感
    のどや口の中に食べ物が残る感じ、何度も嚥下しないと通らない感覚があります。 [7]

  • 声の変化・湿性嗄声
    食後に声が濡れたように変化する(湿った声)場合、咽頭残留や微小誤嚥が疑われます。 [7]

  • 嚥下時の鼻漏・逆流感
    嚥下協調が崩れると、食物や液体が鼻へ逆流したり、気道へ入りそうな不快感が出ます。 [6]

  • 言語・構音の障害を伴うことがある
    ろれつが回らない、発声が不明瞭になるなどの言語症状と併存しやすいです。 [4]


合併症(注意すべきリスク)

  • 誤嚥性肺炎
    誤って気管に入った食物や唾液が肺炎の原因となり、MSの後期では重要な罹患・死亡要因になり得ます。誤嚥は特に「サラサラした液体」で起こりやすく、評価と予防が重要です。 [6] [3] [7]

  • 栄養不良・体重減少・脱水
    食事量低下や食事回避により栄養不足や体重減少、飲水不足による脱水が生じます。適切な管理でカロリー摂取の改善や体重維持が期待できます。 [8] [9]

  • 窒息・食道通過障害
    食塊が咽頭に停滞しやすく、まれに窒息の危険が生じます。上部食道括約筋機能障害が関連します。 [2]


評価・診断(どう調べるか)

  • ベッドサイドスクリーニングと重症度評価
    問診・観察(咳、湿性嗄声、食事の所要時間など)に加え、嚥下重症度スケールを用いて症状とリスクを整理します。 [10]

  • 嚥下造影検査(VFSS:ビデオ嚥下造影)
    さまざまな粘度の食物・液体で嚥下をX線下に評価し、どの段階で問題が起きるか、誤嚥の有無、残留の部位と程度を可視化します。低粘度液体で誤嚥が多いことが知られており、食形態指示に直結します。 [7]

  • 嚥下内視鏡検査(FEES)や筋電図
    咽頭の動き、残留、喉頭閉鎖の状態を直接観察し、上部食道括約筋の過活動など機能評価に役立ちます。 [2]

  • 包括的アプローチの推奨
    嚥下障害を早期に見つけ、重症度に応じたリハビリ・栄養・予防策を組み合わせる学際的管理が重要です。 [2] [8]


管理・治療(何が有効か)

  • 食形態の調整(テクスチャー・粘度調整)
    液体はとろみを付ける、固形物は軟らかく刻むなど、誤嚥リスクを減らす工夫が有効です。特に低粘度液体で誤嚥しやすい場合は粘度調整が推奨されます。 [11] [7]

  • 摂食姿勢・嚥下手技の指導
    体幹を立てる、頸部前屈(うつむき嚥下)、回旋嚥下、二度嚥下などの戦略で咽頭残留・誤嚥を減らします。学際的プログラムは摂取カロリー・体重の改善に寄与します。 [8] [12]

  • 嚥下筋の訓練・呼吸訓練
    舌・口唇・咽頭の筋力・協調訓練、呼吸と嚥下のタイミング調整が役立ちます。 [12]

  • 薬剤・手技的介入(限定的適応)
    上部食道括約筋(輪状咽頭筋)過活動が顕著な場合、ボツリヌス毒素注射が嚥下指標を改善した報告があります(選択症例)。 [13]

  • 栄養管理
    食事量が不足する場合は高カロリー補助食品、必要に応じて経腸栄養(短期的な鼻胃管、長期的には胃瘻)を検討します。目標は栄養・水分の安定確保です。 [8] [9]


何に注意すべきか(早期サインと受診の目安)

  • 水やお茶でむせる、食後の湿った声、長引く咳、発熱や痰の増加がある場合、誤嚥性肺炎の兆候に注意が必要です。早期の専門評価を受けることで、肺炎や栄養不良を予防しやすくなります。 [6] [9]

  • 病期が長い、障害度が高い(歩行・協調運動障害が目立つ)、小脳所見が強い場合は嚥下スクリーニングを定期的に行うことが望ましいです。 [3]


まとめ(ポイント)

  • MSでは中枢神経の脱髄により嚥下の神経・筋協調が崩れ、口腔期・咽頭期の障害が起こりやすいです。 [2]
  • 症状はむせ、飲み込みにくさ、咽頭残留、湿性嗄声、食事の疲労などで、低粘度液体で誤嚥しやすい傾向があります。 [5] [7]
  • 合併症として誤嚥性肺炎、栄養不良・脱水が重要で、早期の評価と学際的管理でリスクを減らせます。 [6] [8] [9]
  • 評価はベッドサイドとVFSS/FEESを組み合わせ、食形態調整・姿勢手技・リハビリ・栄養支援、選択的にボツリヌス治療などで個別対応します。 [2] [7] [13]

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出典

  1. 1.^abSwallowing difficulty: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
  2. 2.^abcdefghiDysphagia in multiple sclerosis: from pathogenesis to diagnosis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abcdOropharyngeal dysphagia in multiple sclerosis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  4. 4.^abMultiple sclerosis: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
  5. 5.^abDysphagia - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
  6. 6.^abcdeSymptoms and causes - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
  7. 7.^abcdefgClinical and videofluoroscopic evaluation of swallowing in 41 patients with neurologic disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  8. 8.^abcdeEffects of a multidisciplinary management program on neurologically impaired patients with dysphagia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  9. 9.^abcdEfficacy of rehabilitative management of dysphagia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  10. 10.^Management of dysphagia in patients affected by multiple sclerosis: state of the art.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  11. 11.^Swallowing difficulty: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
  12. 12.^ab[Dysphagia rehabilitation].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  13. 13.^abBotulinum toxin improves dysphagia associated with multiple sclerosis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。