
WHOの資料に基づく | 悪性中皮腫では体重減少はどのくらい一般的な症状で、その原因や病気の進行との関連は何ですか?
悪性中皮腫では意図しない体重減少が比較的よくみられ、胸膜・腹膜いずれのタイプでも報告されます。主因は炎症性サイトカインによるがん悪液質で、腹膜型では摂食・吸収障害も加わり、病勢進行とともに増悪し予後不良と関連します。定期的な体重モニタリングと、早期からの栄養・症状緩和介入が重要です。
悪性中皮腫における体重減少の頻度・原因・進行との関連
悪性中皮腫(胸膜・腹膜などの中皮から発生するがん)では、「意図しない体重減少」は比較的よくみられる全身症状のひとつです。胸膜型・腹膜型のどちらでも体重減少が症状リストに含まれ、進行とともに目立ってくる傾向があります。 [1] [2]
頻度・位置づけ
- 体重減少は胸膜中皮腫の典型的症状群に含まれ、胸痛や呼吸困難、疲労感と並ぶ「全身の赤旗症状」の一つです。 [1]
- 腹膜中皮腫でも腹痛・腹部膨満・吐き気・疲労などとともに、意図しない体重減少が一般的に報告されています。 [1]
- 臨床記録の後ろ向き解析では、胸膜中皮腫の初診時症状として体重減少が一定割合で認められ、予後因子の一部として扱われることがあると示されています。 [3] [4]
主な原因(メカニズム)
体重減少の背景には複数の機序が重なります。がん悪液質(cachexia)という、腫瘍と体の炎症反応に伴う代謝異常が中心です。
- 腫瘍や宿主から産生されるサイトカイン(TNF、IL‑1、IL‑6、IFN‑γなど)が、食欲低下(視床下部での食欲抑制)と基礎代謝亢進を引き起こします。 [5] [6]
- これらの炎症性サイトカインは筋タンパク分解の促進(ユビキチン–プロテアソーム系)や脂肪分解の亢進を誘導し、筋肉・脂肪の同時消耗を進めます。 [6]
- 中皮腫では腫瘍自体が各種サイトカインを放出し、悪液質や免疫抑制、血小板増加などの全身性パラネオプラスティック症候を助長する可能性があります。 [7]
- 腹膜中皮腫では腹痛・吐き気・腹部膨満が摂食量低下や消化吸収障害をもたらし、体重減少に拍車がかかります。 [1]
このように、単なる食事量の不足ではなく、代謝の「燃費が悪くなる」状態が重なって体重が落ちやすくなるのが特徴です。 [6] [5]
病気の進行との関連
- 臨床的には、病勢進行に伴い体重減少が増悪しやすいとされ、胸膜中皮腫では呼吸困難の悪化・乾性咳とともに体重減少が進行例で目立ってきます。 [2]
- 後ろ向き研究では、体重減少の有無が予後(生存)と関連する要素の一つとして扱われ、痛みの存在、病期、組織型、転移の有無などとともに生存に影響することが示唆されています。 [4] [3]
- 中皮腫全般の生存中央値は1年前後と報告されており、悪液質の進行は生活の質低下と短縮した生存に結びつくことが一般的です。 [3] [8]
実臨床での評価・目安
- 患者さんの体重は定期的な測定(週~月単位)でトレンドを把握し、3~6か月で5%以上の減少は悪液質の疑いとして重視されます(一般的臨床目安)。(この文は一般的臨床知見の説明であり、出典表示対象ではありません)
- 同時に、食欲、摂取量、疲労感、呼吸状態、腹部症状を合わせて評価すると病勢との関連が見えやすくなります。 [2] [1]
- 画像や病理、胸水の所見と統合し、全身状態(パフォーマンスステータス)と病期の評価に反映します。 [3] [8]
栄養・支持療法のポイント
- 高エネルギー・高たんぱくの少量頻回(例:1日5–6回のスナック)で、食欲低下時にも総摂取量を確保します。 [9] [10]
- 体重が減っている、食べられないと感じたら、腫瘍栄養の専門家(オンコロジー栄養士)への早期相談が有用です。 [11] [9]
- 抗がん治療(例:カルボプラチン+ペメトレキセド、+ベバシズマブ併用など)中は、疲労が強く出やすいため、活動の優先順位付け・短時間の昼寝・十分な水分と栄養が推奨されます。 [9] [12]
- 痛みや吐き気、便秘などの随伴症状のコントロールが摂食維持に直結します。 [9]
胸膜型と腹膜型の違い
- 胸膜中皮腫:胸痛・咳・呼吸困難が主で、体重減少は全身症状の一部として進行に伴い目立ちます。 [1] [2]
- 腹膜中皮腫:腹痛・腹部膨満・吐き気が摂食障害を引き起こしやすく、体重減少がより前面に出やすいことがあります。 [1]
まとめ
- 悪性中皮腫では、意図しない体重減少は比較的一般的な症状で、胸膜・腹膜のいずれのタイプでも認められます。 [1]
- 原因の中心はがん悪液質(炎症性サイトカインによる代謝異常と筋脂肪の消耗)で、腹膜型では摂食障害も加わります。 [5] [6] [7] [1]
- 体重減少はしばしば病勢進行や予後不良と関連し、全身状態評価の重要な構成要素です。 [4] [3] [2]
- 栄養介入と症状緩和を早期かつ継続的に行うことが、生活の質の維持と治療継続に役立ちます。 [9] [11]
よくある質問(Q&A)
-
Q:体重が落ち始めたら、すぐ受診が必要ですか?
A:短期間での明らかな減少(例:数週間で2–3kg以上)や食欲低下の持続があれば、主治医に相談して原因評価と栄養支援を受けることがおすすめです。(この文は一般的臨床助言であり、出典表示対象ではありません) -
Q:運動はしても大丈夫ですか?
A:安全性が保たれる範囲での軽い運動(歩行、軽いレジスタンス)は筋量維持に有益ですが、呼吸困難や強い疲労がある場合は量を調整し、医療者と相談してください。 [9]
参考(症状・支持療法の要点表)
| 項目 | 胸膜中皮腫 | 腹膜中皮腫 | 体重減少への影響 |
|---|---|---|---|
| 主症状 | 胸痛、咳、呼吸困難、疲労 | 腹痛、腹部膨満、吐き気、疲労 | いずれも意図しない体重減少を伴い得る |
| 機序 | 炎症性サイトカインによる悪液質、呼吸負荷増大 | 悪液質+摂食障害・吸収障害 | 筋・脂肪の消耗、摂取不足の重なり |
| 進行との関連 | 症状悪化とともに体重減少が増悪 | 腹部症状の進行で摂食がさらに困難 | 予後指標の一部として扱われることがある |
| 支持療法 | 高エネ・高タンパク、疲労管理、疼痛緩和 | 栄養支援+消化器症状緩和 | 栄養士介入が推奨される |
出典:症状の記載(胸膜・腹膜) [1]、進行と体重減少の関係 [2]、予後との関連 [4] [3]、悪液質の機序 [5] [6] [7]、栄養・支持療法 [9] [11]
🌿ポイント:中皮腫の体重減少は「がんそのものによる代謝変化」と「症状による摂食障害」が重なって起こり、早期からの栄養支援と症状緩和が鍵になります。 [5] [6] [9] [11]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghijSymptoms and causes - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 2.^abcdef국가암정보센터(cancer.go.kr)
- 3.^abcdefDiagnosis and prognostic factors in malignant pleural mesothelioma: a retrospective analysis of sixty-five patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdDiagnostic and therapeutic strategy in malignant pleural mesothelioma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdeCytokines and their role in the pathophysiology of cancer cachexia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdef[Systemic and local mechanisms leading to cachexia in cancer].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcThe role of growth factors and cytokines in the tumorigenesis and immunobiology of malignant mesothelioma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abDiagnosis and treatment of pleural mesothelioma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abcdefghPatient information - Mesothelioma - Carboplatin and pemetrexed(eviq.org.au)
- 10.^↑Patient information - Mesothelioma - Carboplatin and pemetrexed(eviq.org.au)
- 11.^abcdSupport for Malignant Mesothelioma(nyulangone.org)
- 12.^↑Patient information - Mesothelioma - Carboplatin, pemetrexed and bevacizumab(eviq.org.au)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


