
WHOの資料に基づく | メラノーマに伴う体重減少はどの程度みられ、どのような仕組みで起こりますか?
要点:
メラノーマの進行・転移期では、がん悪液質により体重減少が比較的頻繁にみられ、筋量低下や予後不良と関連します。炎症性サイトカインによる食欲抑制、安静時代謝の亢進とコリ回路の非効率代謝、脂肪・筋肉の分解が複合的に関与し、免疫療法の副作用も助長します。対応は栄養・運動・炎症・代謝の是正を含む多職種の包括的介入が推奨されます。
メラノーマと体重減少の全体像
メラノーマに伴う体重減少は、特に進行・転移期のがんでしばしばみられ、いわゆる「がん悪液質(キャケクシア)」の一部として現れます。 [1] がん悪液質は単なる食欲低下だけでは説明できない、脂肪組織と骨格筋の進行性のやせ細りが同時に進む状態で、体重減少と筋力低下、生活の質の低下、予後不良に結びつきます。 [2] [3]
どの程度みられるか(頻度と重症度)
- がん全体では、進行期で「約半数」前後が悪液質の影響を受け、臨床的な体重減少が問題になります。 [2]
- 悪液質はがんがかなり進む段階で目立ちますが、早期でも兆候が出ることがあるとされています。 [1]
- メラノーマ固有の厳密な頻度推定は報告に差がありますが、免疫療法や分子標的治療の副作用による食欲低下・体重減少も加わり、臨床現場では一定の割合で体重減少への対応が必要になります。 [4] [5]
仕組み(なぜ起こるのか)
多因子性のプロセス
がんに伴う体重減少は、以下の要素が重なり合って生じます。腫瘍因子、宿主(身体)の炎症性反応、代謝異常、治療の副作用が相互に作用します。 [1] [3]
食欲抑制(アノレキシア)
- 視床下部の食欲制御で、食欲を抑える信号が優位になり、IL-1、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインが食欲低下を促します。 [6] [7]
- 味覚変化、嗜好の変化、早期満腹感、吐き気・便秘などの消化器症状が食事量の低下に拍車をかけます。 [8]
代謝の亢進と効率低下
- 安静時エネルギー消費量が上昇し、骨格筋で脱共役タンパク(UCP)の発現増加により熱産生が増えるなど、同じ摂取量でも消費が増える状態になります。 [2] [6]
- 腫瘍の低酸素に伴うHIF-1の活性化→解糖亢進→乳酸蓄積により、肝臓で乳酸をグルコースに戻すコリ回路が過活動となり、エネルギー効率の悪い代謝が持続します。 [6] [2]
脂肪と筋肉の分解
- 脂肪組織は脂質動員因子(LMF)やサイトカインにより脂肪分解(リポリシス)が促進され、脂肪量が減少します。 [6] [2]
- 骨格筋では、タンパク質合成の低下とユビキチン-プロテアソーム系・リソソーム系の分解亢進が同時に進み、筋量が減ります。 [2] [6]
- 筋分解には、プロテオリシス誘導因子(PIF)、炎症性サイトカイン、アンジオテンシンII、活性酸素(ROS)、NF-κB経路、グルココルチコイド-FOXO、ミオスタチンなどが関与します。 [6] [3]
- NF-κBはメラノーマでサイトカイン産生や症状(食欲不振・疲労・体重減少)に関与し、治療抵抗性にも影響すると示唆されています。 [9]
治療や薬の影響
- 免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、イピリムマブなど)では、食欲低下(アノレキシア)や倦怠感が副作用としてみられ、結果的に体重が減ることがあります。 [4] [5]
- こうした副作用が疑われる場合、少量頻回の高カロリー・高タンパク食、食事中の多量の飲液を避ける、栄養士へ相談などの対策が勧められます。 [4] [5]
予後への影響
がん関連の体重減少、とくに筋肉量の減少(サルコペニア)を伴う悪液質は、治療耐容性や機能状態、生存期間の短縮と関連します。 [3] [1]
栄養補助のみでは脂肪や総体重はある程度維持できても、除脂肪量(筋肉量)の維持は難しいことが多く、代謝の是正を含む多職種・多角的アプローチが必要になります。 [1] [10]
実臨床での評価・対応のポイント
- 体重・BMIだけでなく、体組成(筋量)、食事摂取量、炎症マーカー、機能状態を総合的に評価します。 [1] [3]
- 栄養介入は早期から継続的に行い、食欲低下の消化器症状(味覚変化、早期満腹感など)を丁寧に拾い上げます。 [8]
- がん治療の副作用が疑われる場合は、主治医に早めに共有して用量調整や支持療法を検討します。 [4] [5]
- 目標は「体重そのもの」よりも、機能維持(筋力・活動度)と治療継続可能性の確保です。 [3] [10]
まとめ
- メラノーマに伴う体重減少は、進行期で比較的よくみられる臨床的課題で、悪液質の枠組みで理解するのが妥当です。 [2] [1]
- 炎症性サイトカインによる食欲抑制、安静時代謝の亢進、コリ回路による非効率代謝、脂肪と筋肉の分解が複合的に関与します。 [2] [6]
- 免疫療法などの副作用による食欲低下も体重減少を助長しうるため、支持療法と多職種連携で早期から介入することが重要です。 [4] [5] [10]
単純な栄養補給だけでは不十分なことが多いため、栄養+運動+炎症・代謝の是正を意識した包括的なマネジメントが推奨されます。 [1] [10]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghCancer cachexia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdefghMechanisms of cancer cachexia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefInflammation based regulation of cancer cachexia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdePatient information - Melanoma metastatic - Ipilimumab and nivolumab(eviq.org.au)
- 5.^abcdePatient information - Melanoma adjuvant - Nivolumab - weight based dosing(eviq.org.au)
- 6.^abcdefg[Systemic and local mechanisms leading to cachexia in cancer].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^↑Cytokines and their role in the pathophysiology of cancer cachexia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abComponents of the anorexia-cachexia syndrome: gastrointestinal symptom correlates of cancer anorexia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^↑Control of NF-kB activity in human melanoma by bromodomain and extra-terminal protein inhibitor I-BET151.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 10.^abcdThe "parallel pathway": a novel nutritional and metabolic approach to cancer patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


