
WHOの資料に基づく | 悪性黒色腫(メラノーマ)の症状として発熱がみられることはありますか?
悪性黒色腫では、腫瘍熱など疾患そのものによる非感染性の発熱が起こり得るほか、BRAF/MEK阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬など治療の副作用としても発熱がみられます。感染症の除外が最優先で、38℃以上が続く、悪寒や低血圧・脱水を伴う場合は薬の一時中止と早めの受診・主治医への連絡が推奨されます。
悪性黒色腫(メラノーマ)で「発熱」は起こり得るのか
結論として、発熱はメラノーマそのものに伴うことも、治療の副作用として現れることもあります。 ただし、発熱の原因は複数あり得るため、感染症や薬剤性などを見極めながら評価することが大切です。 [1] 発熱ががんの初期症状や随伴症状として見られることは医学的に知られており、原因がはっきりしない場合には「腫瘍熱(ネオプラズム熱)」という可能性も考慮されます。 [1] [2]
メラノーマそのものによる発熱(腫瘍熱)
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腫瘍熱(ネオプラズム熱)とは
がん細胞や周辺組織から放出されるサイトカイン(炎症性タンパク質)などによって起こる非感染性の発熱で、他の明確な原因が見当たらない場合に疑われます。 [1] 腫瘍熱は間欠的な熱(上がったり下がったりする熱)として観察されることが多く、心拍数は熱のピーク時以外は比較的落ち着いているパターンが特徴とされています。 [2]
この「間欠的な熱のパターン」は腫瘍熱の手がかりになり、感染症など他の原因との鑑別に役立つことがあります。 [2] -
炎症性サイトカインの関与
がん患者で見られる発熱や倦怠感、血液検査の炎症所見には、インターロイキン6(IL‑6)の関与が示されています。 [3] メラノーマでもIL‑6が産生されうることが報告されており、IL‑6の上昇は病勢進行と関連する場合があります。 [4]
一部のメラノーマ患者では皮膚の赤みとともにIL‑6やIL‑8の血中濃度が高いことが示され、全身性炎症反応との関連が示唆されています。 [5] -
臨床上の見分け方のヒント
感染源が見つからない高熱が続く場合、NSAIDs(例:ナプロキセン)に対する反応性が腫瘍熱の見極めに役立つことがあり、診断と苦痛軽減に有用だと報告されています。 [6] もちろん、感染症の除外は最優先であり、必要に応じて迅速な経験的抗菌薬投与が推奨されます。 [1]
治療による発熱(薬剤性)
メラノーマの治療薬には、BRAF阻害薬やMEK阻害薬、免疫療法などがあり、これらは非感染性の発熱を比較的高頻度に起こすことで知られています。 [7] [8]
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BRAF/MEK阻害薬(例:ダブラフェニブ+トラメチニブ、エンコラフェニブ+ビニメチニブ)
これらの治療では治療開始後数週間〜数ヶ月以内に発熱を起こしやすく、治療期間中いつでも起こり得ます。 [9] [7] 発熱に悪寒、汗、脱水、低血圧、めまい、全身倦怠感が伴うことがあり、発熱の前兆(プロドローム)を理解し、症状が出たら一時的に薬剤を中止する対応が重要とされています。 [9] [7]
自宅での対応としては体温測定(38℃以上に注意)、必要時の解熱薬(アセトアミノフェン)が推奨されますが、薬剤は自己判断で継続せず主治医へ早めに連絡することが推奨されます。 [10] [11] -
免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬など)
免疫療法ではインフルエンザ様症状(発熱、悪寒、だるさ)が比較的よくみられます。 [8] 発熱が強い、長引く、または呼吸器症状・消化器症状などが同時に悪化する場合は、免疫関連有害事象(免疫が過剰に働いて臓器に炎症が起こる副作用)の可能性があるため、速やかな受診が望ましいです。 [8] -
その他の分子標的薬
ベムラフェニブなどの薬でも、38℃以上の発熱や悪寒があれば直ちに医療機関へという注意が一般的に示されています。 [12] 同様にエンコラフェニブ+ビニメチニブで、薬を中止しても38℃以上の発熱が持続する場合は救急受診が推奨されます。 [11]
どんなときに受診が必要?
- 38℃以上の発熱が続く、悪寒・めまい・低血圧・脱水を伴う場合は、薬剤を一時中止して主治医へ早めに相談することが一般的に推奨されます。 [9] [10]
- 薬を止めても38℃超の発熱が持続する、呼吸困難やコントロールできない嘔吐・下痢がある、胸痛があるなどの際は救急受診が望まれます。 [12] [11]
- 感染が否定できない状況(咳・痰・尿路症状、創部の赤みや痛みなど)があれば、まず感染症を疑って評価することが重要です。 [1]
まとめ
- メラノーマそのものによる発熱(腫瘍熱)は起こり得ますし、BRAF/MEK阻害薬や免疫療法などの治療でも非感染性の発熱がよくみられます。 [1] [2] [7] [8]
- 発熱の背景にはサイトカイン(特にIL‑6)などの炎症性メディエーターが関与していることがあり、病勢の進行と関係する場合があります。 [3] [4]
- 一方で、感染症は常に最優先で除外すべき原因であり、症状が強い・長引く場合や他症状が重なれば早めの医療相談・受診が安心です。 [1] [12]
よくある疑問に対する補足
- 「発熱が出たらすぐ薬を止めるべき?」
BRAF/MEK阻害薬では前兆の段階で一時中止が推奨されることがあり、個別の指示に従うのが安全です。 [9] [7] - 「市販の解熱剤は使ってよい?」
アセトアミノフェンの使用は一般的に許容されることがありますが、自己判断ではなく主治医に確認してください。 [10] - 「何度以上で危険?」
38℃以上は要注意で、持続する場合や他の症状を伴う場合は早めの受診が勧められます。 [12] [11]
発熱の経過(いつ始まり、どのくらい続き、他の症状との関係)、現在の治療内容、使用中の薬剤を教えていただけると、より具体的なアドバイスができます。
関連する質問
出典
- 1.^abcdefg[Fever of unknown origin in malignancies].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdUsing vital sign flow sheets can help to identify neoplastic fever and other possible causes in oncology patients: a retrospective observational study.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abInterleukin-6 immunoreactivity in human tumors.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abInterleukin-6 and melanoma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^↑Differences in cytokine levels in melanoma patients with and without redness (Brenner sign).(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^↑Naproxen test for neoplastic fever may reduce suffering.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcde3600-Melanoma metastatic biNIMEtinib and encorafenib(eviq.org.au)
- 8.^abcdImmunotherapy for cancer: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 9.^abcd3678-Melanoma adjuvant daBRAFEnib and tRAMEtinib(eviq.org.au)
- 10.^abcPatient information - Melanoma metastatic - Binimetinib and encorafenib(eviq.org.au)
- 11.^abcdPatient information - Melanoma metastatic - Binimetinib and encorafenib(eviq.org.au)
- 12.^abcdPatient information - Melanoma metastatic - Vemurafenib(eviq.org.au)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


