
WHOの資料に基づく | 子宮内膜がんではどの程度の頻度で発熱がみられ、どのような特徴がありますか?
要点:
子宮内膜がんでは初期症状としての発熱はまれで、術後や治療過程で一定頻度にみられます(術後は約16%が一過性の発熱、感染確定は少数)。主因は尿路・血流などの感染で、化学療法中の38℃以上は緊急対応が必要です。感染陰性の持続熱は腫瘍熱の可能性があり、ナプロキセンへの速やかな反応が鑑別に役立ちます。
子宮内膜がんにおける「発熱」は、典型的な初期症状ではありませんが、治療前後や進行例、合併感染の場面では一定の割合でみられます。一般的には感染や治療関連の要因による発熱が多く、腫瘍そのものが原因の「腫瘍熱」は比較的まれと考えられます。 [1] [2]
発熱の起こりやすさ(頻度の概観)
- 初期症状としての発熱は一般的ではない:初期の子宮内膜がんは、不正性器出血や閉経後の出血、分泌物の変化が中心で、発熱は典型的ではありません。 [1] [2]
- 術後(手術後)の発熱は一定程度みられる:婦人科手術後の低リスク群でも約16%に一過性の発熱が生じますが、感染が確認される割合は低く(約3%)、多くは自然に軽快します。 [3]
- 婦人科がん領域で「発熱で入院」した症例の分析:婦人科腫瘍で発熱評価のため入院した患者では、文書化された発熱が71%に確認され、原因は尿路感染28%・血流感染27%が最多で、約24%は明確な原因が特定されませんでした。 [4]
- ロボット手術後の再入院理由:子宮内膜がんのロボット手術後90日以内の再入院の主因は、発熱(約31%)と膣排液の精査でしたが、発熱で再入院した10例のうち細菌培養で感染確定は2例のみでした。 [5]
発熱の主な原因と特徴
- 感染が最多(治療関連・術後・留置物関連):尿路感染、血流感染、創部感染、骨盤内膿瘍、肺炎などが多く、特に手術後30日以内は創部感染が増えます。 [4]
- 手術後30日以内の入院では創部感染の比率が高く(38%対10%)、術後早期の発熱は創部や尿路の評価が重要です。 [4]
- 術後の一過性の発熱:多くは低〜中等度(38〜39℃前後)で、48時間以内に鎮痛解熱薬で経過観察して自然軽快することが多いです。持続・高熱では原因検索が推奨されます。 [3]
- 化学療法中の好中球減少時(好中球減少性発熱):白血球(特に好中球)が低下すると、38℃以上の発熱は緊急対応が必要で、外来管理が可能かはMASCCスコアなどのリスク評価が参考になります。 [6]
- 好中球減少下では尿路が最も多い陽性培養部位で、迅速な抗菌薬投与が推奨されます。 [6]
- 腫瘍熱(感染が否定的な発熱):感染源が見つからず、画像・培養が陰性な持続的発熱では腫瘍熱の可能性があります。ナプロキセン試験で速やかな解熱(24時間以内)を示す特徴が報告されています。 [7]
進行例・放射線治療との関連
- 進行例では局所感染が増える:腫瘍壊死や閉塞、解剖学的防御の破綻により、骨盤内感染や敗血症が起こりやすく、発熱が予後に不利に働く可能性が示唆されています。 [8]
- 術前放射線照射は術後合併症(発熱を含む)を増加:術後の創傷治癒障害、尿路感染、発熱などの合併症が有意に増加します。 [9]
臨床でみられる発熱のパターン
- 感染性発熱:悪寒・寒気を伴う38℃以上の持続、局所症状(排尿時痛、創部発赤・排膿、咳嗽など)を伴いやすい。血液・尿培養、胸部画像、腹骨盤CTなどで評価し、尿路・血流感染の比率が高いのが特徴です。 [4]
- 術後一過性発熱:術後早期に現れる軽〜中等度の発熱で、多くは原因不明で自然軽快し、過度な抗菌薬投与は避けられることがあります。 [3]
- 好中球減少性発熱:化学療法後に起こり、高リスクでは重篤合併症・ICU入室・死亡率が上昇するため、迅速な広域抗菌薬とリスク層別化が重要です。 [6]
- 腫瘍熱:感染評価が陰性の持続熱で、NSAIDs(ナプロキセン)への速やかな反応が鑑別に有用です。 [7]
推奨される評価と対応
- 初期評価:問診・診察で明らかな原因がなければ、尿検査(培養)と血液培養を優先し、胸部X線は診断的価値が低め、胸部・腹骨盤CTは持続熱で有用性が高いです。 [4]
- 胸部X線の診断率は低く(約6%)、胸部CTはより有用(約21%)、腹骨盤CTは原因特定に寄与(約60%)します。 [4]
- 術後低リスクの軽熱:観察と解熱薬で48時間程度経過を見る方針が安全で、持続・悪化時にステップアップ評価が妥当です。 [3]
- 化学療法中:38℃以上は直ちに連絡・受診し、好中球減少の可能性を考慮して、迅速な抗菌薬投与とリスク層別化(MASCCスコア)が推奨されます。 [6]
- 好中球減少時の発熱は「緊急サイン」で、自宅での様子見は避けるべきです。 [6]
- 腫瘍熱の示唆:感染検査が陰性でナプロキセンに速やかに反応する場合は腫瘍熱が考えられ、過度な抗菌薬や延長入院を避ける判断材料になります。 [7]
まとめ(頻度と特徴)
- 頻度:子宮内膜がんそのものの初期症状としての発熱は一般的ではありませんが、術後や治療過程では一定頻度で発熱します(術後は約16%で一過性の発熱、感染確定は少数)。 [1] [3]
- 特徴:最も多いのは尿路・血流などの感染性発熱で、持続熱や高熱は画像・培養を含めた評価が有用です。腫瘍熱は相対的にまれで、ナプロキセンの反応性が鑑別に役立つと報告されています。 [4] [7]
参考になるチェックポイント
- こんなときは受診:38℃以上の持続、悪寒・戦慄、創部の赤みや膿、排尿痛・頻尿、強い咳や息切れ、化学療法中の発熱。 [4] [6]
- 術後の軽い発熱:短期間の経過観察で自然軽快が多いものの、48時間を超える持続熱・症状の増悪・局所所見があれば原因検索へ。 [3]
- 化学療法中:即時連絡・受診が原則で、自己判断での様子見は避けます。 [6]
データ比較表
| 場面 | 発熱の頻度・傾向 | 主な原因 | 推奨評価 |
|---|---|---|---|
| 初期の子宮内膜がん | 発熱は典型的ではない | 不正出血・分泌物変化が中心 | 症状に応じた婦人科評価 |
| 術後(低リスク) | 約16%で一過性発熱。感染確定は少数(約3%) | 炎症反応、吸収熱など非感染性が多い | 48時間観察、持続・高熱で原因検索 |
| 発熱で入院した婦人科腫瘍患者 | 文書化発熱71%。尿路感染28%、血流感染27%、原因不明24% | 感染が最多 | 尿・血培養、腹骨盤CT、必要時胸部CT |
| ロボット手術後再入院 | 再入院理由の31%が発熱。感染確定は少数(10例中2例) | 多くは重篤でない | 外来フォロー活用、必要時検査 |
| 化学療法中(好中球減少) | 高リスクでは重篤合併症・死亡率上昇 | 尿路など感染が多い | 迅速な抗菌薬、MASCCスコアで層別化 |
| 腫瘍熱の疑い | 持続熱で感染陰性 | 腫瘍関連炎症 | ナプロキセン試験で鑑別 |
このように、子宮内膜がんにおける発熱は場面ごとに意味合いが異なり、術後の一過性発熱は経過観察が可能なことが多い一方、化学療法中の発熱は緊急性が高い点が重要です。 [3] [6] また、原因不明の持続熱では腫瘍熱の可能性も考え、過度の抗菌薬使用を避ける判断材料としてNSAIDs反応性を活用する選択肢があります。 [7]
ご自身の状況(術後なのか、治療中なのか、発熱の持続時間や他の症状)を教えていただければ、より具体的に整理してお伝えできます。
関連する質問
出典
- 1.^abcd국가암정보센터(cancer.go.kr)
- 2.^abcEndometrial cancer - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 3.^abcdefghConservative management of postoperative Fever in gynecologic patients undergoing major abdominal or vaginal operations.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdefghiEtiology and workup of fevers in gynecologic oncology patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abReducing readmissions after robotic surgical management of endometrial cancer: a potential for improved quality care.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdefghiInpatient versus outpatient management of neutropenic fever in gynecologic oncology patients: is risk stratification useful?(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcdefThe effect of naproxen on fever in patients with advanced gynecologic malignancies.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^↑[Infections in patients with gynecologic malignancies].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^↑Influence of preoperative radiotherapy on postoperative morbidity in patients with endometrial carcinoma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


