
PubMedの資料に基づく | COPD(慢性閉塞性肺疾患)で夜間発汗(寝汗)が起こるのはなぜですか?
要点:
COPDの夜間発汗は、夜間低酸素や高二酸化炭素による交感神経亢進、睡眠中の呼吸努力増加、全身性炎症、感染・増悪、睡眠時無呼吸、薬剤副作用など複数因子の相乗で生じます。発熱や体重減少、咳を伴う・繰り返して睡眠を妨げる寝汗は受診のサインです。酸素化の評価、感染への早期対応、薬剤見直し、睡眠環境調整やOSA治療が改善に役立ちます。
概要
COPD(慢性閉塞性肺疾患)で夜間発汗(寝汗)が起こる背景には、低酸素・高二酸化炭素状態に伴う自律神経の乱れ(交感神経優位)、睡眠中の呼吸努力増加、全身性炎症、感染や増悪(急な悪化)、併存症(睡眠時無呼吸など)、薬剤の影響など、複数の要因が重なりやすいことが考えられます。夜間発汗はしばしば何らかの基礎疾患や合併症のサインとなるため、定期的に続く・睡眠を妨げる・発熱や体重減少、咳、下痢など他の症状を伴う場合は医療機関への相談が推奨されます。 [1] 夜間に大量の発汗が続くときは健康上の問題が潜んでいることがあり、受診目安になります。 [2]
主なメカニズム
交感神経の亢進(自律神経の乱れ)
- COPDでは、反復する低酸素(酸素不足)や高二酸化炭素血症、気道閉塞による胸腔内圧の大きな変動、呼吸努力の増加、全身性炎症などにより、交感神経活動が亢進しやすいとされています。交感神経が優位になると発汗が増え、夜間に寝汗として自覚されることがあります。 [3] こうした交感神経優位は炎症反応をさらに調整して症状を悪化させる可能性が指摘されています。 [3]
呼吸努力・ガス交換の負荷
- 気流閉塞により呼吸仕事量が増え、睡眠中でも呼吸筋が過剰に働くことで、代謝負荷と自律神経反応が高まり、発汗が増えることがあります。 [4] COPDでは肺の炎症と修復異常が全身に影響し、心機能やガス交換に系統的な負荷をかけることが知られています。 [4]
全身性炎症とカヘキシア傾向
- COPDは全身性炎症(サイトカインの「スピルオーバー」)を伴う病態で、筋萎縮や体重減少(肺カヘキシア)に関連しうる全身反応を引き起こします。炎症性サイトカインは体温調節・自律神経を変化させて発汗を増やす一因となり得ます。 [4] 肺カヘキシアにおける炎症の役割が議論されており、炎症シグナルが循環に乗って筋萎縮などを促すことが示唆されています。 [5]
感染や増悪(エグザサーベーション)
- COPDでは風邪・インフルエンザ・肺炎など呼吸器感染が起こりやすく、これらは夜間の発熱や自律神経反応により寝汗を引き起こすことがあります。 [6] COPDの症状が通常より悪化する増悪期は数日から数週間続き、感染や環境刺激などが引き金になります。増悪時には睡眠障害や咳・痰の増加などが出やすく、夜間発汗が目立つことがあります。 [7]
併存症:睡眠時無呼吸(OSA)
- 睡眠時無呼吸は夜間の大きないびき、呼吸停止、再開時の激しい呼吸を伴い、夜間の発汗や口渇、逆流症状がみられることがあります。COPDとOSAが併存する「オーバーラップ症候群」では、夜間低酸素と交感神経亢進が強まり、寝汗が増える場合があります。 [8]
薬剤の影響
- 一部の薬剤は発汗増加を副作用として示します。たとえば全身性ステロイドでは「発汗増加」が副作用として報告されており、治療の一環で使用した場合に寝汗として自覚することがあります。 [9] また一部のβ遮断薬では「発汗」や睡眠障害などが副作用欄に記載されることがあり、併用薬の影響が重なる可能性があります。 [10]
夜間発汗が示すリスクサイン
- 定期的に続く・睡眠を妨げる夜間発汗は、基礎疾患のサインである可能性があります。医療機関への相談が勧められます。 [1]
- 発熱・体重減少・局所痛・咳・下痢などの他症状を伴う夜間発汗は、感染や炎症性疾患などの精査が望まれます。 [11]
- 突然発汗が増える・日常生活を妨げる・理由なく夜間発汗が起こる場合は受診すべき目安になります。 [12]
受診の目安とチェックポイント
- 感染兆候(発熱、痰の色の変化、悪寒、胸痛、急な呼吸困難)を伴う寝汗は、受診のサインです。 [6] [13]
- 増悪の兆候(息切れの悪化、喘鳴、痰量増加、色調変化、睡眠障害、朝の頭痛、足のむくみなど)がある場合は、早期の対応が推奨されます。 [13]
- 睡眠時無呼吸の疑い(激しいいびき、寝ている間の呼吸停止の目撃、夜間の窒息感、過度の口渇・口呼吸、夜間発汗)を伴う場合、睡眠検査が検討されます。 [8]
- 新規または増量した薬の後から寝汗が目立つ場合は、処方薬の副作用確認と調整が必要です。 [9] [10]
対処のポイント
- 酸素・二酸化炭素の評価:夜間低酸素や高二酸化炭素が疑われるときは、動脈血ガスや夜間パルスオキシメトリ、必要に応じて睡眠検査を検討します。交感神経亢進と寝汗の改善につながる可能性があります。 [3]
- 感染の早期対応:痰の性状変化や発熱を伴う際には、抗菌薬や支持療法の検討が必要です。感染はCOPDで増悪の主要因です。 [6] [7]
- 薬剤レビュー:ステロイドや一部心血管薬など、発汗を増やしうる薬剤の有無を確認し、必要に応じて用量調整や代替薬を検討します。 [9] [10]
- 睡眠衛生と環境調整:寝室の温度・湿度管理、通気性の良い寝具の使用で「暑さによる発汗」と「病的な夜間発汗」を見分けやすくします。環境要因による発汗は病的とは限りませんが、繰り返す大量の寝汗は受診目安です。 [1]
- 併存症の評価:OSAなど合併する睡眠障害が疑われる場合、CPAPなどの治療で夜間低酸素と交感神経亢進を是正し、寝汗の改善が期待できます。 [8]
まとめ
COPDの夜間発汗は、低酸素・高二酸化炭素や自律神経の乱れ、全身性炎症、感染・増悪、睡眠時無呼吸、薬剤副作用など複数の要因が重なって起こることが多いです。 [3] [4] 定期的に続く、睡眠を妨げる、他症状を伴う寝汗は、受診して原因を絞り込み、必要な検査や治療を行うことが勧められます。 [1] [11] また、感染予防(予防接種・手洗い)、薬剤の見直し、睡眠環境の調整、併存症の評価が実践的な対策になります。 [6] [9] [8]
関連する質問
出典
- 1.^abcdNight sweats - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 2.^↑Night sweats When to see a doctor(mayoclinic.org)
- 3.^abcdAutonomic dysfunction in patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD).(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdSystemic manifestations and comorbidities of COPD.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^↑Systemic inflammation in chronic obstructive pulmonary disease and lung cancer: common driver of pulmonary cachexia?(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdCOPD - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 7.^abCOPD - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 8.^abcd영남대학교병원(yumc.ac.kr)
- 9.^abcd(dailymed.nlm.nih.gov)
- 10.^abcBetaxolol (oral route) - Side effects & dosage(mayoclinic.org)
- 11.^abNight sweats Causes - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 12.^↑Excessive sweating Causes - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 13.^abCOPD flare-ups: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


