
PubMedの資料に基づく | トラマドールの副作用として便秘はどの程度起こりやすく、予防・対処法や受診の目安にはどんな点がありますか?
トラマドールを含むオピオイドでは便秘がよく起こり、外来患者では約半数が便秘や下剤を必要とします。予防は水分・食物繊維・活動の確保に加え、開始時からセンナ等の刺激性下剤+便軟化剤を併用し、効果不十分なら浸透圧性下剤や末梢性μ拮抗薬を検討します。3日以上の無排便や強い腹痛・嘔吐・膨満、血便などは早めに受診が目安です。
トラマドールで起こる便秘の頻度と重症度
トラマドールを含むオピオイド鎮痛薬では、便秘はよくみられる副作用で、長期的な使用ほど起こりやすく重くなりやすい傾向があります。 [1] 多くの臨床研究で、トラマドールの代表的な副作用として便秘が挙げられており、吐き気・めまいと並んで頻度が高い副作用群に含まれます。 [2] 外来でオピオイド治療を受ける人全体では、約半数が便秘の症状または下剤の使用を必要とし、全体の約49%が便秘に該当したという報告があります(ローマIII基準)。 [3] 便秘のリスクは年齢とオピオイドの用量が高いほど増加する一方、治療期間の長さとは必ずしも相関しないとされています。 [3]
オピオイドによる便秘(オピオイド誘発性便秘、OIC)は、腸の動きを低下させ、通常の下剤だけでは不十分になりやすいことがあり、生活の質に大きく影響することがあります。 [4] そのため、予防が重要で、オピオイド開始時から腸のケアをセットにするのが推奨されています。 [5] [6]
原因とメカニズムのポイント
- オピオイドは消化管のμ受容体を刺激し、蠕動(ぜんどう)運動を抑えて便の水分吸収を増やすため、便が硬くなり出にくくなります。 [7]
- その結果、遷延する便秘や腹部膨満、悪心などが出やすく、時に糞便塞栓(ふんべんそくせん、便が詰まる状態)を招くこともあります。 [8]
予防の基本戦略(オピオイド開始時から)
- 水分・食物繊維・活動量をできる範囲で増やすことが推奨されます。 [6]
- オピオイドを数日以上使う場合、刺激性下剤(例:センノシド[センナ])+便を柔らかくする薬(例:ジオクチルソジウムスルホサクシネート[DSS:いわゆる「便軟化剤」])の予防投与が必要になることがあります。 [6] [5]
- 食物繊維だけ、便軟化剤だけの単独使用は効果が弱い場合があるため、別の種類の下剤と組み合わせることが勧められます。 [6]
トラマドール個別の注意としても、便秘の可能性があるため、食事の見直しや予防的な薬の使用について医療者と相談することが推奨されています。 [9]
対処法の段階的アプローチ(ステップアップ)
下記は一般的なステップで、症状や持病、服薬状況により調整します。 [10]
- 生活習慣の調整
- 水分:1日1.5〜2Lを目安に(心不全・腎不全など制限がある場合は主治医の指示に従う)。 [6]
- 食物繊維:野菜、果物、海藻、全粒穀物などを意識して増やす。 [6]
- 活動:可能な範囲で歩行や体幹を動かす習慣。 [6]
- 予防的下剤(オピオイド開始時から)
- 追加薬の併用(便が出ない・硬い・腹部膨満が強い時)
- ビサコジル(刺激性下剤)を追加する、あるいは浸透圧性下剤(ポリエチレングリコール、乳果糖など)を組み合わせる方法があります。 [5] [10]
- 坐薬・浣腸は、直腸性便秘や便塊が疑われる時に選択肢となります。 [11]
- 難治例への選択肢
- 通常の下剤で不十分な治療抵抗性の便秘では、末梢性μ受容体拮抗薬(メチルナルトレキソン、ナルデメジン、アルビモパンなど)が有効な場合があります(鎮痛効果は保ちつつ腸のμ受容体を遮断)。 [12] [13]
- 症状や副作用バランスによっては、オピオイドの種類・用量の見直し(オピオイドローテーション)も検討されます。 [10]
受診の目安(レッドフラッグ)
次のような場合は、早めの医療機関受診が勧められます。 [8] [10]
- 3日以上排便がない、またはいつもより著しく出にくい状態が続く。 [10]
- 強い腹痛、嘔吐、発熱、血便、激しい腹部膨満がある。腸閉塞や糞便塞栓が疑われます。 [8]
- 下剤を使っても効果が乏しい・悪化する。治療抵抗性のOICの可能性。 [13]
- 高齢・高用量のオピオイド使用で便秘が急に悪化した場合。リスク上昇が知られています。 [3]
トラマドール使用時の追加ポイント
- トラマドールを定期的に服用する場合は、便秘予防をルーチン化し、食事・水分・下剤の併用について事前に計画しておくと安全です。 [9] [1]
- 長期のオピオイド使用では重い便秘が起こりうるため、継続的な対策と指示通りの下剤使用が重要です。 [1]
- 腸の閉塞や麻痺性イレウスの既往がある場合は、事前に医療者へ相談し、便秘の兆候に注意してください。 [14]
使いやすい実践例(一般的な一例)
- オピオイド(トラマドール)開始日から、センナ夜間内服+便軟化剤を少量でスタート。 [5] [6]
- 便が2日出なければ、浸透圧性下剤(例:ポリエチレングリコール)を追加。 [10]
- それでも出なければ、ビサコジルなどの刺激性下剤を短期追加し、効果が弱ければ坐薬・浣腸を検討。 [5] [11]
- 数日間不十分、あるいは腹痛・嘔吐・膨満が強ければ受診し、糞便塞栓の有無や末梢性μ拮抗薬の適応を相談。 [8] [13]
まとめ
- トラマドールを含むオピオイドでは、便秘は非常に一般的な副作用で、約半数が何らかの便秘対策を必要とする可能性があります。 [3] [2]
- 便秘は予防が鍵で、水分・食物繊維・活動量の確保に加え、刺激性下剤+便軟化剤の併用を早期から検討すると安全です。 [6] [5]
- 効果が不十分なら浸透圧性下剤の追加、難治なら末梢性μ受容体拮抗薬やオピオイドローテーションを検討します。 [10] [12]
- 3日以上の無排便、強い腹痛・嘔吐・膨満、出血などは受診のサインです。早めに相談してください。 [8] [10]
参考:副作用と便秘対策に関する要点(簡易表)
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 起こりやすさ | トラマドールを含むオピオイドで便秘は頻繁に発生(代表的副作用)。 [2] |
| 頻度の目安 | 外来オピオイド治療患者で便秘・下剤必要の合計が約49%。 [3] |
| リスク因子 | 高齢、用量増加でリスク上昇。期間とは相関しない報告。 [3] |
| 予防 | 水分・食物繊維・活動量の維持+刺激性下剤と便軟化剤の早期併用。 [6] [5] |
| 初期対処 | 浸透圧性下剤、ビサコジルの追加、必要に応じて坐薬・浣腸。 [5] [10] [11] |
| 難治例 | 末梢性μ受容体拮抗薬(メチルナルトレキソン等)やオピオイドローテーション。 [12] [13] |
| 受診の目安 | 3日以上無排便、強い腹痛・嘔吐・膨満、血便、効果乏しい場合。 [8] [10] |
| トラマドールの注意 | 便秘が起こりうるため、食事変更や薬の併用について事前に相談。 [9] [1] |
便秘の程度や下剤の種類は人によって合う・合わないがあるため、現在のトラマドール用量や他の薬、持病に合わせて個別に調整していくことが大切です。 [10]
関連する質問
出典
- 1.^abcdTramadol and acetaminophen (oral route) - Side effects & dosage(mayoclinic.org)
- 2.^abcAdverse event profile of tramadol in recent clinical studies of chronic osteoarthritis pain.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdef[Incidence of constipation in patients with outpatient opioid therapy].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^↑A review of the clinical manifestations, pathophysiology and management of opioid bowel dysfunction and narcotic bowel syndrome.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdefghiManagement of opioid-induced bowel dysfunction.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdefghijkCDC Clinical Practice Guideline for Prescribing Opioids for Pain — United States, 2022(cdc.gov)
- 7.^↑Opioid-induced constipation.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abcdefManagement of opioid-induced bowel dysfunction.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abcTramadol: MedlinePlus Drug Information(medlineplus.gov)
- 10.^abcdefghijkOpioid-induced bowel dysfunction: epidemiology, pathophysiology, diagnosis, and initial therapeutic approach.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 11.^abcConstipation: a frequent iatrogenic complication in cancer patients receiving narcotics.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 12.^abc[Treatment of constipation in chronic pain patients].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 13.^abcdOpioid-induced constipation.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 14.^↑Tramadol: MedlinePlus Drug Information(medlineplus.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


