
米国NIHの資料に基づく | メトホルミンの副作用としてうつ病や抑うつ症状が起こることはありますか?
メトホルミンが直接うつ病を引き起こすという確立した証拠は乏しく、添付文書にも一般的な副作用としては記載されていません。長期使用で起こりうるビタミンB12欠乏が抑うつや認知機能低下に関連する可能性があるため、定期的なB12チェックを検討しましょう。一部研究では、メトホルミンが気分や認知を改善した可能性も示されています。
メトホルミンで「直接」うつ病や抑うつ症状が起こることは、一般的な副作用としては知られていません。大規模な公式添付文書では、消化器症状(下痢、吐き気)が最も多く、重篤例としては乳酸アシドーシスの警告症状(極端なだるさ、異常な眠気、めまい、動悸など)が記載されていますが、「うつ病」を明確な副作用としては挙げていません。 [1] [2] ただし、メトホルミンは長期使用でビタミンB12欠乏を起こしやすく、このB12欠乏が抑うつや認知機能低下と関連しうる点には注意が必要です。 [3] [4]
要点まとめ
- メトホルミン自体が直接“うつ病”を引き起こすという確立した証拠は乏しいです。 [1]
- 長期使用でのビタミンB12低下は比較的よくみられ(約7%)、これが抑うつや認知機能低下に関連する可能性があります。 [5] [4]
- 一部の研究では、メトホルミン治療が糖尿病合併の抑うつ症状や認知機能をむしろ改善した可能性も示されています。 [6]
公式情報にみる主な副作用と注意点
- 最も多いのは消化器症状(下痢、吐き気、腹部不快感、鼓腸など)です。 [1] [7]
- 低血糖はインスリンやスルホニル尿素薬を併用すると起こりやすく、その際は「混乱、いらいら、ふるえ、動悸、発汗」などの症状が出ますが、これはうつではなく血糖の急低下による一過性の神経症状です。 [7] [8]
- 重大な副作用として乳酸アシドーシスがあり、「異常な眠気、ひどいだるさ、めまい、息切れ、冷感、徐脈・不整脈」などの警告症状が示されています(出現時は直ちに受診が必要)。 [2] [9]
ポイント: 公式文書に「うつ病」そのものは副作用として列挙されていませんが、倦怠、眠気、めまいといった症状は別の重篤状態(乳酸アシドーシス)や低血糖のサインの可能性があるため区別が大切です。 [2] [7]
ビタミンB12欠乏との関係
- メトホルミンでは、約29週間の臨床試験で「以前は正常だった血清ビタミンB12が下限未満に低下」した例が約7%にみられました。 [5]
- これは内因子との複合体を介した吸収干渉が機序とされ、休薬やビタミンB12補充で改善しやすいとされています。 [10]
- 2型糖尿病でメトホルミンを使用している方では、B12が十分な人は抑うつリスクが低く、認知機能も良好という観察研究の結果があります(B12欠乏は抑うつのオッズ比上昇と関連)。 [4]
ここが実践的: 長期内服中に「気分の落ち込み、しびれ(末梢神経障害)、物忘れ」などが目立つときは、B12の採血チェックを検討する価値があります。 [4] [3]
一部研究での「気分改善」の示唆
- 糖尿病とかねて抑うつをもつ方を対象に、メトホルミン治療で認知機能と抑うつ症状が改善したとする24週間の介入研究があります。 [6]
- これは血糖代謝の改善や炎症・神経代謝への影響など、間接的な機序が関与している可能性があります。 [6]
解釈のコツ: すべての人に当てはまるわけではありませんが、少なくとも「メトホルミン=うつを起こす」という単純な関係ではないことが示唆されます。 [6]
受診・対処の目安
- 服用開始後に「強い落ち込みが続く、興味消失、自責、睡眠・食欲の大きな変化」などが数週間以上続く場合は、主治医に相談して評価を受けましょう(B12や甲状腺、血糖変動の確認が有用)。 [4]
- しびれや感覚低下など末梢神経症状がある場合は、B12欠乏の検査と補充を検討します。 [4] [10]
- 「異常な眠気、激しい倦怠、息切れ、冷感、めまい、徐脈・不整脈」などが急に出た場合は、乳酸アシドーシスの可能性があるため、直ちに受診してください。 [2]
- インスリンなど併用時のふるえ、発汗、混乱などは低血糖のサインで、速やかな糖補給と血糖測定が必要です。 [7]
チェックリスト(主治医に伝えると役立つ情報)
- 症状の始まりとメトホルミン開始・増量の時期の関係。
- 体重変化、食欲、睡眠、集中力の変化。
- 手足のしびれ、舌のヒリつき、歩きにくさなどB12欠乏を疑う所見。 [4]
- 併用薬(特にインスリン・SU薬・PPIなど)。 [7]
- 腎機能や飲酒状況(乳酸アシドーシスリスク評価のため)。 [2]
まとめ
- メトホルミンが直接うつ病を引き起こすという確立したエビデンスは限定的です。 [1]
- 一方で、長期使用に伴うビタミンB12欠乏は抑うつや認知機能低下と関連しうるため、定期的なB12チェックが勧められます。 [3] [4]
- 糖尿病に合併した抑うつについて、メトホルミンが気分面を改善した可能性を示す研究もあります。 [6]
必要に応じて、ビタミンB12の採血と補充、他の原因(血糖変動、睡眠、ストレス、甲状腺など)の評価を一緒に進めると安心です。 [4] [7]
関連する質問
出典
- 1.^abcdMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdeMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 3.^abcDailyMed - METFORMIN HCL tablet(dailymed.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdefghiCobalamin status and its relation with depression, cognition and neuropathy in patients with type 2 diabetes mellitus using metformin.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdeMetformin may produce antidepressant effects through improvement of cognitive function among depressed patients with diabetes mellitus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcdefMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 8.^↑GLYBURIDE AND METFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
- 9.^↑METFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
- 10.^abmetformin(dailymed.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


