がん治療中の授乳は安全?注意点と具体対策
要点:
がん治療中の授乳の安全性と注意点
結論として、授乳の可否は「治療内容」によって大きく変わります。 がんの種類よりも、今受けている治療(化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法、分子標的薬など)が母乳への移行や赤ちゃんへの影響を左右します。一般的には、全身に作用する抗がん剤(化学療法など)の投与中は授乳は推奨されません。 [1] 化学療法薬の多くは母乳に移行し得て、赤ちゃんに有害な影響を与える可能性があるためです。 [PM13]
一方で、手術後や一部の局所治療(片側乳房手術や乳房への放射線)を終えた後は、条件付きで授乳が可能になる場合があります。放射線治療は母体外への放射線放出はなく、乳汁への直接の放射線混入はありませんが、乳房の照射を受けた側は乳汁分泌が低下しやすく、反対側の乳房からの授乳が現実的な選択肢になります。 [2] 片側乳房のみでも赤ちゃんの成長に必要な量をまかなえることが多いですが、体重増加のフォローは丁寧に行いましょう。 [2]
まず押さえるポイント
- 化学療法中は授乳を避けるのが一般的です。赤ちゃんへのリスクが懸念されるためです。 [1] [PM13]
- 放射線療法中は授乳自体が必ずしも禁忌ではありませんが、照射した側の乳房からの授乳は難しくなることが多いです。 [2]
- 乳房手術を受けても授乳は可能なことがあります(とくに反対側の乳房)。ただし分泌量に個人差があり、授乳支援が有用です。 [3] [2]
- 一部の薬剤は投与終了後も一定期間授乳を避ける必要があります(薬ごとに推奨期間が異なる)。 [4]
- 放射性ヨウ素などの「未封入放射性核種」を用いた治療を受けた場合は、授乳を直ちに中止する必要があります。 [PM21]
治療別の授乳可否と理由
化学療法(全身投与の抗がん剤)
- 多くの抗がん剤は母乳へ移行し、骨髄抑制など重大な有害事象のリスクが懸念されます。 [1]
- 一部薬剤では、投与後数日間ミルクを破棄すれば母乳中濃度が十分に低下する可能性を示唆するデータもありますが、薬剤ごとに異なり、厳密な管理と専門医の判断が不可欠です。 [PM14] 例えば、パクリタキセルでは72時間後に母乳中濃度が極めて低くなる報告がありますが、他薬剤では長期の回避が必要になることがあります。 [PM19] [PM14]
- 代表例:
放射線療法(外照射)
- 母体が外部放射線を受けても母乳に放射線が混入するわけではありません。ただし照射した乳房の組織ダメージにより、乳量低下や乳管の閉塞が起きやすく、反対側乳房からの授乳が現実的です。 [2]
- 未封入放射性核種(例:ヨウ素131)を用いた内用療法後は授乳を直ちに中止し、再開はできません。赤ちゃんの被ばくリスクが高いためです。 [PM21]
手術(乳房温存・乳房切除)
- 片側の手術後でも反対側で授乳可能です。一つの乳房でも十分な量を産生できることが多いため、栄養は満たせます。 [3] [2]
- ただし、照射を伴う乳房温存術後は照射側の産乳能力が落ちることが一般的で、反対側中心の授乳を計画します。 [2]
ホルモン療法・分子標的薬など
- 薬剤により母乳移行や長期の授乳回避が必要になることがあります。授乳の可否は薬ごとに確認が必要です。 [9] 一部の分子標的薬や抗がん生物学的製剤でも授乳非推奨の注意書きがあることが一般的です。 [10]
安全に授乳するための実務的チェックリスト
- 治療薬ごとの授乳可否と「再開までの待機期間」を主治医と必ず確認する(薬名、用量、投与スケジュールで判断が変わります)。 [PM13] [PM14]
- 化学療法中は基本的に母乳育児を中止し、人工乳に切り替える。赤ちゃんの安全が最優先です。 [1]
- 放射線照射を受けた乳房からの授乳は難しいことが多いため、反対側での授乳計画を立てる。赤ちゃんの体重を定期的にチェックしましょう。 [2]
- 未封入放射性核種による治療(例:ヨウ素131)後は直ちに授乳を完全中止する。 [PM21]
- 再開時期の目安が不明な場合は母乳を破棄しながら経過を見るのではなく、再開可否を薬理学的情報に基づき医療者と相談する。 [PM14]
- 乳腺手術・照射後の授乳では、搾乳やラクトアシスト(授乳支援)を活用し、乳管炎予防や乳量維持を図る。 [3] [2]
母体の安全性と再発への影響
- 乳がん治療を完了した後の授乳は母体の生存率や再発リスクを悪化させるとは考えられていません。ただし個々の病状により判断が異なるため、主治医の指示を優先してください。 [PM15] [PM30]
- 妊娠出産後の授乳は技術的に難しい場合があるものの、適切な支援があれば多くの人で可能です。 [PM29]
よくあるケース別の目安表
| 状況 | 授乳の可否 | 具体的対策・目安 |
|---|---|---|
| 化学療法中(例:AC、タキサン系など) | 原則不可 | 人工乳へ切替、薬剤終了後の再開時期は薬別に確認。一部薬では数日破棄で低濃度になる可能性あり。 [1] [PM14] |
| パクリタキセル投与後 | 投与直後不可 | 72時間後には母乳濃度が極めて低い報告あり。再開時期は主治医と個別調整。 [PM19] |
| シクロホスファミド使用 | 不可 | 母乳移行が確認され、乳児有害事象報告あり。授乳中止。 [5] |
| トポテカン使用 | 不可 | 治療中と最終投与後少なくとも1週間授乳回避。 [4] |
| 外照射の放射線療法中 | 条件付き可 | 照射側は乳量低下。反対側中心に授乳、赤ちゃん体重フォロー。 [2] |
| ヨウ素131など内用療法 | 完全不可 | 直ちに授乳中止、再開不可。 [PM21] |
| 乳房温存+照射後 | 条件付き可 | 反対側中心に授乳、搾乳・支援を活用。 [2] |
| 片側乳房切除 | 条件付き可 | 反対側のみで授乳可能なことが多い。体重管理を継続。 [3] [2] |
専門家と共有したい情報リスト
- 現在・今後の薬剤名、投与量、投与間隔、最終投与予定日。 [PM13]
- 放射線治療の有無・部位(どの乳房か)、線量、期間。 [2]
- 手術の種類(乳房温存/切除、片側/両側)と術後の合併症。
- 授乳の希望度合い(完全母乳/混合)と授乳支援の必要性。 [3]
- 赤ちゃんの体重推移と栄養状態のフォロー計画。 [2]
まとめ
- がん治療中の授乳の安全性は治療内容次第です。特に化学療法や一部の薬剤使用中は授乳を避けるのが一般的で、放射性ヨウ素などの内用療法では授乳を直ちに中止します。 [1] [PM21]
- 手術後や外照射後は反対側乳房での授乳が可能なことがあり、適切な支援で継続できる場合があります。赤ちゃんの体重管理と母体の体調を丁寧に確認しましょう。 [3] [2]
- 再開のタイミングは薬剤ごとの母乳移行性と排泄動態により異なるため、主治医と個別に計画を立てることが大切です。 [PM14] [PM19]
疑問や不安があれば、治療計画や薬剤名を教えていただければ、授乳の再開時期や代替案をより具体的に一緒に整理できます。
関連する質問
出典
- 1.^abcdefAppendix I(cdc.gov)
- 2.^abcdefghijklmnoBreast Surgery and Breastfeeding(cdc.gov)
- 3.^abcdefBreast Surgery and Breastfeeding(cdc.gov)
- 4.^abcHYCAMTIN- topotecan hydrochloride injection, powder, lyophilized, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 5.^abCYCLOPHOSPHAMIDE injection, powder, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 6.^↑Paclitaxel(dailymed.nlm.nih.gov)
- 7.^↑PACLITAXEL PACLITAXEL- paclitaxel injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 8.^↑PACLITAXEL PACLITAXEL- paclitaxel injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 9.^↑(dailymed.nlm.nih.gov)
- 10.^↑(dailymed.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。