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2026年2月20日5分で読める

PubMedの資料に基づく | 精巣がんの治療(片側精巣摘除、化学療法、放射線治療)の副作用として性欲低下はどの程度起こり、持続期間や原因、対処法はどうなっていますか?

要点:

精巣がんの片側摘除・化学療法・放射線治療後には、一般男性より性欲低下が起こりやすく、回復には数年を要することもあります。原因は低テストステロン、勃起・射精障害、疲労や不安など多因子で、個人差が大きいです。朝のホルモン検査や必要に応じたテストステロン補充、PDE5阻害薬、心理支援、生活習慣改善で対処できます。

精巣がん治療後の性欲低下:頻度・持続期間・原因・対処法

精巣がんの標準治療(片側精巣摘除、化学療法、放射線治療)後には、性機能の変化が一定の割合でみられ、性欲低下(リビドー低下)も少なからず起こり得ます。3~5年後の追跡で、一般男性と比べて性欲低下を訴える割合が高いという報告があり、治療の種類にかかわらず生じることがあるとされています。 [1] [2]


どのくらいの頻度で起こるか

  • 3~5年の時点でのアンケート研究では、性欲低下の自己申告リスクが一般男性の約6~7倍と推定されています(オッズ比6.7、95%CI 2.1–21)。 [1] [2]
  • 同研究では勃起機能低下の訴えも多く(オッズ比3.8)、性欲低下と併存しやすいことが示唆されます。 [1] [2]
  • さらに古いデータでは、非セミノーマ治療後に「性的・夫婦関係の満足度低下」が約10~20%で見られたとの報告があります。 [3]
  • 一方で、片側精巣摘除のみの多くの方は、ホルモン産生と性機能を保てる(一側で十分)とされます。 [4]

どれくらい続くか(持続期間)

  • 長期フォローの研究では、勃起機能の回復中央値はおおむね放射線治療後60か月、化学療法後60か月、後腹膜リンパ節郭清後70か月とされ、時間とともに回復傾向はあります。 [5]
  • ただし、性欲そのものの回復は個人差が大きく、治療強度やホルモン値だけでは説明しきれない面もあります(治療モダリティと性欲回復の明確な関連は限定的)。 [1] [2]
  • 神経温存が難しい手術や放射線を含む治療では射精機能の障害が一時的または長引く可能性があり、性的満足度に影響することがあります。 [6] [7]

原因:なぜ性欲が下がるのか

性欲低下は単一の原因ではなく、ホルモン、身体的変化、心理社会的要因が重なって起こることが多いです。

  • ホルモン(テストステロン)の関与

    • 精巣腫瘍の方では治療前から一定割合でテストステロン低下(男性低ゴナド症)が存在し、治療法に関わらず約24~26%で持続するという前向きデータがあります。 [8] [9] [10]
    • また、治療後12か月で生化学的低テストステロンが約33%にみられた報告もあります。 [11]
    • ただし一部研究では、低テストステロンが必ずしも性欲低下を説明しきれない(相関が弱い)結果も示されています。 [1] [2]
  • 治療に伴う身体的要因

    • 片側摘除後も多くはホルモン産生が維持されますが、化学療法は精子産生停止(可逆的~稀に不可逆)を招くことがあり、生殖や性への不安が性欲に影響します。 [12] [6]
    • 後腹膜リンパ節郭清や放射線治療で射精障害(逆行性など)が起こり得て、性的満足度に影響します。 [6] [7]
  • 心理社会的要因

    • がん診断・治療に伴う不安、うつ、関係性のストレスは、性欲低下に大きく関与します。 [3]
    • 治療後の体調(疲労、神経障害など)も性活動や性的興奮に影響します。 [12] [13]

治療法別のポイント

  • 片側精巣摘除

    • 多くの方はホルモン・性機能は保たれやすいとされます。 [4]
    • それでも、術後の心理的影響や同側の睾丸容積低下があると性欲に影響し得ます(低テストステロンの背景)。 [8] [9] [10]
  • 化学療法(シスプラチン系など)

    • 精子産生の一時停止や不可逆低下があり得て、生殖不安から性欲が下がることがあります。 [12]
    • 長期的な勃起機能は回復し得るとの報告があります。 [5]
  • 放射線治療

    • 勃起機能回復がやや遅れる独立因子として示された研究があります。 [5]
    • 射精機能への影響で性的満足度の低下がみられる場合があります。 [6]

対処法:何ができるか

性欲低下は多因子で起こるため、医学的評価と心理社会的支援を組み合わせることが効果的です。

  1. 医学的評価
  • 朝の総テストステロン、LH、FSHなどの採血でホルモン状態を確認し、反復測定で低値が一貫するかをみます。 低テストステロンが持続する場合は、適応を満たせばテストステロン補充療法が検討されます(禁忌・副作用の確認が必要)。 [11] [14]
  • 勃起障害や射精障害が併存する場合は、PDE5阻害薬(勃起補助)や射精障害への専門的アプローチを検討します。 [15] [16]
  • 精液所見や生殖希望の確認、精子凍結の活用(将来希望がある場合)も選択肢です。 [12] [17]
  1. 生活習慣・リハビリ
  • 運動(有酸素+レジスタンス)・十分な睡眠・体重管理はテストステロンと性欲の改善に役立ちます。 [14]
  • 末梢神経障害や疲労が強い時期は、段階的な活動量アップと疲労マネジメントを行います。 [12]
  1. 心理社会的支援
  • 心理カウンセリングやカップルセラピーは、性に関する不安や関係性の課題を和らげ、性欲の回復を後押しします。 [3] [18]
  • がん治療後の男性性機能専門外来(性医学・泌尿器・腫瘍サバイバーシップ連携)では、薬物療法、ホルモン補充、リハビリ、カウンセリングを統合した支援が受けられます。 [15] [19]

期待できる経過と見通し

  • 多くの方で時間とともに機能は改善し得ますが、一部では長期的に性欲低下が続くことがあります。 [5] [1] [2]
  • 治療後のテストステロン低下は一定割合で存在し、適切に見つけて治療することで、エネルギー、気分、性欲の改善が期待できます。 [8] [9] [11]
  • 片側摘除後でも全体として性的機能は維持可能で、必要に応じて専門的な介入を組み合わせると、生活の質(QOL)の向上が見込めます。 [4] [15]

早見表:頻度・期間・主因・対処

項目概要
頻度一般男性より性欲低下の申告が有意に高い(オッズ比約6–7)。 [1] [2]
持続回復には数年規模の時間軸もあり、個人差が大きい。 [5]
直接要因低テストステロン(治療前からの例含む)、勃起・射精障害、疲労・神経障害。 [8] [9] [6] [12]
間接要因不安・抑うつ、関係性のストレス、生殖不安。 [3]
手術の影響片側摘除でも多くはホルモン・性機能維持。 [4]
化学療法精子産生一時停止や低下、生殖不安が波及。 [12]
放射線治療勃起回復の遅延因子、射精障害の可能性。 [5] [6]
評価朝の総テストステロン+LH/FSH、性機能評価(IIEFなど)。 [11] [14]
介入テストステロン補充の適応検討、PDE5阻害薬、性機能リハビリ、カウンセリング。 [11] [15] [16] [18]

実践的アドバイス

  • 数値で確認:だるさ・気分低下・性欲低下が続くときは、朝のホルモン採血で低テストステロンの有無を確認しましょう。 [11] [14]
  • 併存症状をケア:勃起や射精の問題がある場合は、泌尿器・性機能外来で薬物治療やリハビリを相談すると良いです。 [15] [16]
  • 心のケアも並行:不安や関係性の課題には、心理支援やカップルカウンセリングが有効です。 [3] [18]
  • 生活習慣を整える:運動・睡眠・体重管理は、ホルモン環境と性欲の土台を支えます。 [14]

まとめ

  • 精巣がん治療後の性欲低下は、一般男性より頻度が高く、持続は個人差が大きいものの、時間とともに改善する例も多いです。 [5] [1] [2]
  • 原因は多因子(ホルモン、身体的変化、心理社会的要因)で、血液検査+性機能評価+心理支援を組み合わせたアプローチが効果的です。 [8] [11] [15] [18]
  • 片側摘除後は原則として性ホルモンは維持可能で、必要に応じたテーラーメイドの介入でQOL向上が期待できます。 [4] [15] [19]

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出典

  1. 1.^abcdefghSexual function in men treated for testicular cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  2. 2.^abcdefghSexual function in men treated for testicular cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abcdeSexual and marital relationships after treatment for nonseminomatous testicular cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
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  8. 8.^abcdeTestosterone deficiency in testicular germ-cell cancer patients is not influenced by oncological treatment.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  9. 9.^abcdTestosterone deficiency in testicular germ-cell cancer patients is not influenced by oncological treatment.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  10. 10.^abTestosterone deficiency in testicular germ-cell cancer patients is not influenced by oncological treatment.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  11. 11.^abcdefgTestosterone deficiency and quality of life in Australasian testicular cancer survivors: a prospective cohort study.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  12. 12.^abcdefgTesticular cancer - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
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  14. 14.^abcdeHypogonadism in male cancer patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
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  16. 16.^abcMale Sexual & Reproductive Medicine Program(mskcc.org)
  17. 17.^국가암정보센터(cancer.go.kr)
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