
PubMedの資料に基づく | 精巣がんの標準治療(BEPなどの化学療法)で下痢はどのくらいの頻度で起こりやすく、原因となる薬剤や対処法、医療機関に連絡すべきサインは何ですか?
要点:
精巣がんの標準化学療法(BEP)では下痢が起こりうち、主にシスプラチンやエトポシドによる粘膜炎が原因です。水分・電解質補給、食事調整、ロペラミドで多くは自宅管理可能ですが、24時間で水様便4回以上、発熱・強い腹痛・脱水、2日以上持続などは速やかに医療機関へ連絡します。
精巣がんの標準的な化学療法(BEP:ブレオマイシン・エトポシド・シスプラチン)では、下痢は起こりうる副作用の一つで、程度は個人差がありますが、適切なセルフケアと早めの対応で多くはコントロール可能です。BEP全体での「下痢の厳密な発生率」の大規模統一データは限られる一方、化学療法全般では下痢が比較的頻度の高い副作用で、重症例は一部に見られます。 [1] [2]
下痢はどのくらい起こりやすいか
- 化学療法全般では、下痢はよくみられる消化器症状で、レジメン(薬の組み合わせ)によって頻度が異なります。全体としては最大で半数前後が何らかの下痢を経験しうるとの報告があり、重症(グレード3以上)は一部に限られます。 [2]
- 放射線治療(特に骨盤照射)では下痢が高頻度になりますが、BEPのような精巣がん化学療法単独では、重症下痢の頻度はこれより低い傾向です。ただし化学放射線療法を併用すると重症化リスクは上がります。 [3]
原因となりやすい薬剤・メカニズム
- BEPの各薬剤では、シスプラチン(白金製剤)やエトポシド(トポイソメラーゼ阻害薬)が消化管粘膜障害を介して下痢を起こすことがあります。化学療法による粘膜炎(腸の粘膜の炎症)が主因で、水分吸収低下や腸運動亢進を招きます。 [4]
- 一部では感染も関与します。胚細胞腫瘍に対する集中的化学療法の患者で、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染が下痢エピソードの約45%で検出された報告があり、免疫抑制下では感染性下痢の鑑別が重要です。 [5]
- 患者ごとの腸内環境、併用薬(例えば下剤)、食事、脱水なども下痢の発症・増悪に影響します。一方でBEPの代表的な副作用としては「胃腸障害(下痢を含む)」が公式情報にまとめられています。 [6]
対処法(自宅でできること)
- 水分・電解質補給:1日8〜10杯(約2L前後)を目安に、水と電解質を含む飲料(経口補水液、スポーツドリンク、ブロス、ジュース等)をこまめに摂るのがおすすめです。 [7] [8]
- 食事:刺激物(辛い物)、高脂肪、カフェイン、乳製品、食物繊維の多い食品は一時的に控え、消化にやさしい「BRATY(バナナ・白米・りんごのすりおろし・白トースト・ヨーグルト)」などを少量頻回で試すと楽になることがあります。 [7] [9]
- 市販の止瀉薬:医療者から特段の制限がなければ、ロペラミド(一般名:loperamide)の使用が一般的です。用法は指示に従ってください。 [7]
- 便軟化薬・下剤は一時中止:下痢が続く間は、便を柔らかくする薬や下剤は中止します(少なくとも12時間〜症状軽快まで)。 [10]
- 安静とスキンケア:肛門周囲の皮膚トラブルを避けるため、やさしく洗浄し、保護クリームを使う方法もあります。 [7]
医療機関にすぐ連絡すべきサイン
- 24時間で4回以上の水様便が続き、内服の止瀉薬でも改善しない。 [9]
- 腹痛・けいれんを伴う下痢や、発熱、悪寒、血便がある。感染性腸炎や重症化の可能性があります。 [11] [12]
- 強い脱水のサイン(口渇、尿量減少、めまい、立ちくらみ、ぐったり)がある。 [11]
- 下痢が2日以上続く、食事や水分がとれない。点滴による補液が必要になることがあります。 [12]
- 化学療法中は白血球減少を伴うことがあり、発熱性好中球減少症のリスク評価が必要です(早めの受診が安全です)。 [2]
受診時に伝えると良い情報
- 下痢の回数・性状(水様・血液混入の有無)、発熱の有無、腹痛の程度、嘔気・嘔吐の有無、どの薬をいつ飲んだか(止瀉薬も含む)、最近の抗菌薬使用歴、飲食内容。C. difficileなど感染性が疑われる場合は便検査を行うことがあります。 [5]
医療機関での主な対応(概要)
- 脱水の評価と補液(点滴)、電解質補正。 [12]
- 原因検索(薬剤性か感染性かなどの鑑別)。必要に応じて便培養やC. difficileトキシン検査。 [5]
- 止瀉薬の調整:ロペラミド増量や、難治例ではオクトレオチドなどの検討が行われることがあります。 [2]
BEP治療中の注意ポイント
- BEPの副作用としては、吐き気・嘔吐、骨髄抑制、腎毒性、肺毒性、聴力低下、末梢神経障害、口内炎、そして胃腸障害(下痢を含む)が知られています。下痢は早めに対処するほど重症化を防ぎやすく、次コースの治療スケジュール維持にも役立ちます。 [6]
- 併用している制吐薬や便秘対策薬が、下痢のフェーズでは逆効果になる場合があるため、症状が出たら指示があるまで中止・変更を医療者と相談してください。 [10]
まとめ
- BEPを含む精巣がん化学療法では、下痢は起こりうる副作用で、水分・電解質補給、食事調整、ロペラミドの適切使用で多くは自宅管理が可能です。 [7] [10]
- 24時間で4回以上の水様便が続く、止瀉薬でも改善しない、発熱や強い腹痛・脱水を伴う場合はすぐに医療機関へ連絡してください。 [9] [11]
- 感染(C. difficileなど)が関与することもあるため、長引く・重い症状は自己判断せず評価を受けることが安全です。 [5]
参考:自宅ケア早見表
| 項目 | 推奨される対応 | 目安・補足 |
|---|---|---|
| 水分・電解質 | 水+電解質飲料を1日8〜10杯 | 経口補水液・スポーツドリンク・ブロス等 [7] |
| 食事 | 刺激物・高脂肪・高繊維・カフェイン・乳製品を一時回避、BRATY食を少量頻回 | 症状軽快後に段階的に戻す [7] [9] |
| 止瀉薬 | ロペラミド(指示に従う) | 改善なければ受診 [7] [9] |
| 中止すべき薬 | 便軟化薬・下剤は一時中止 | 最低12時間〜症状軽快まで [10] |
| 受診の目安 | 24時間で水様便4回以上、発熱、強い腹痛、脱水、2日以上持続 | 速やかに連絡 [9] [11] |
必要であれば、現在の症状や回数、飲んでいる薬、食事の様子を教えていただければ、もう少し具体的に対策を一緒に考えます。
関連する質問
出典
- 1.^↑화학 요법 부작용 관리(mskcc.org)
- 2.^abcdChemotherapy-induced diarrhea: pathophysiology, frequency and guideline-based management.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^↑779-Treatment induced diarrhoea | eviQ(eviq.org.au)
- 4.^↑Chemotherapy-induced diarrhoea.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdHigh prevalence of Clostridium difficile diarrhoea during intensive chemotherapy for disseminated germ cell cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^ab국가암정보센터(cancer.go.kr)
- 7.^abcdefghManaging Your Chemotherapy Side Effects(mskcc.org)
- 8.^↑Cómo hacer frente a los efectos secundarios de la quimioterapia(mskcc.org)
- 9.^abcdefManaging Your Chemotherapy Side Effects(mskcc.org)
- 10.^abcd화학 요법 부작용 관리(mskcc.org)
- 11.^abcdDiarrhea: Cancer-related causes and how to cope(mayoclinic.org)
- 12.^abcDiarrhea: Cancer-related causes and how to cope(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


