
PubMedの資料に基づく | 精巣腫瘍でPSAが高値となることはありますか?その場合の臨床的意義は何ですか?
要点:
精巣腫瘍そのものがPSAを上昇させることは通常なく、評価にはβ-hCG・AFP・LDHが用いられます。PSA高値がみられた場合は、前立腺炎や前立腺肥大、前立腺がんなど前立腺由来の原因や手技・加齢の影響を考慮し、必要に応じて前立腺の精査を行います。まれに前立腺がんの精巣転移が背景のこともあります。
精巣腫瘍そのものがPSA(前立腺特異抗原)を上昇させることは通常ありません。精巣胚細胞腫瘍で主要な腫瘍マーカーはβ-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とAFP(αフェトプロテイン)およびLDHであり、PSAは前立腺由来のマーカーとして使われます。 [1] [2] 一方で、PSAは前立腺肥大症や前立腺炎、加齢、手技後など前立腺関連の良性要因でも上がりうるため、PSA高値=前立腺がんとは限りません。 [3] [4]
精巣腫瘍の標準的マーカー
- β-hCGは絨毛癌やセミノーマの一部、胚細胞腫瘍の一部で上昇し、病勢と相関します。 [5]
- AFPは胎児性癌や卵黄嚢腫瘍で上昇し、こちらも治療経過とよく相関します。 [5]
- これら(β-hCG/AFP/LDH)は診断、病期評価、治療効果判定、予後推定に有用です。 [1]
PSAの位置づけ
- PSAは“前立腺由来の分泌タンパク”で、血中高値は前立腺がんの可能性を示唆しますが、良性前立腺肥大や前立腺炎などでも上昇します。 [3] [6]
- 一般診療では、PSAは前立腺疾患のスクリーニングや治療反応性・再発モニタリングに用いられます。 [3]
精巣腫瘍とPSA高値が同時にみられるときの考え方
- 最も多いのは「偶然合併した前立腺疾患(良性または悪性)」や「手技・炎症・加齢によるPSA上昇」で、精巣腫瘍そのものがPSAを上げているわけではない可能性が高いです。 [3] [4]
- まれに前立腺がんが精巣へ転移して精巣腫瘤として見つかることがあり、その際はPSA動態が手掛かりになります(精巣腫大の背景が実は前立腺がんの転移)。 [7]
- 文献上、前立腺がんの精巣転移は稀ですが報告があり、PSAが低~中等度でも転移が見つかった症例があります。 [8] [7]
稀な例外と鑑別
- PSAは厳密には“完全に前立腺のみ”ではなく、ごく一部の他組織・腫瘍で発現が検出された報告もありますが、血中マーカーとして臨床運用する対象は基本的に前立腺疾患です。 [9]
- したがって、精巣胚細胞腫瘍の評価・フォローではPSAではなく、β-hCG/AFP/LDHを主に追跡します。 [1]
臨床的意義(まとめ)
- 精巣腫瘍の診断・治療評価においてPSA高値は原則的に有用ではありません。代わりにβ-hCG/AFP/LDHが指標になります。 [1]
- 精巣腫瘍患者でPSA高値が出た場合は、合併する前立腺疾患(前立腺炎、前立腺肥大、前立腺がん)や最近の手技・射精など非腫瘍性要因を確認し、必要に応じて直腸診や前立腺MRI、経直腸超音波、生検など前立腺評価を検討します。 [4] [3]
- 精巣腫瘍と同時期に新規の精巣腫瘤が出現し、PSAの推移が不相応に高い・あるいは経過と整合しない場合は、前立腺がんの精巣転移の極めて稀な可能性も念頭に置いて、組織診での確定を考えます。 [7] [8]
参考:主要マーカーの使い分け(簡易表)
- 精巣胚細胞腫瘍:β-hCG、AFP、LDHが診断・病勢・治療効果判定に有用。 [1] [5]
- 前立腺がん:PSAがスクリーニング、治療反応、再発評価に有用(ただし良性疾患や手技でも上昇)。 [3] [4]
結論として、精巣腫瘍“単独”ではPSA高値は通常みられず、PSA高値があるときは前立腺由来の原因(良性・悪性や炎症・手技など)をまず考えるのが一般的です。 [3] [4] 精巣腫瘍のマーカー評価はβ-hCG/AFP/LDHを中心に行い、PSAは前立腺評価目的に限って解釈するのが適切です。 [1]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefAFP and HCG in germ cell tumors.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^↑[Metastasis and markers].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefgProstate-specific antigen (PSA)(stanfordhealthcare.org)
- 4.^abcdeProstate-specific antigen (PSA) blood test: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 5.^abc[Tumor markers in testicular tumors].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^↑Techniques(stanfordhealthcare.org)
- 7.^abcTesticular metastasis of prostate cancer: a case report.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abUnilateral testicular metastasis of low PSA level prostatic adenocarcinoma.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^↑Prostate-specific antigen expression by various tumors.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


