肺がん治療中の甲状腺異常の意味と対処法
肺がんと甲状腺異常:何を意味し、心配すべきか
肺がんの治療、とくに免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)を使う場合、甲状腺の働きの異常は比較的よくみられる副作用で、適切に見つけて対応すれば多くはコントロール可能です。 [1] 頻度は治療薬や併用療法で幅がありますが、免疫療法では甲状腺機能低下症(うつ・だるさ・体重増加など)や一過性の甲状腺炎に続く機能低下が代表的です。 [2] [3] 症状が強い場合は補充療法(レボチロキシン)や対症療法で改善が期待できます。 [4]
なぜ甲状腺異常が起こるのか
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免疫療法による自己免疫反応
免疫チェックポイント阻害薬は、がんへの免疫反応を高める一方で、甲状腺に対する免疫反応(免疫関連有害事象)を引き起こしやすく、甲状腺炎から一過性の甲状腺機能亢進→その後の機能低下へ移行することがあります。 [2] [3] -
下垂体の炎症(低頻度)
まれに下垂体炎(免疫療法関連)によりTSHが低下する「中枢性」異常が起こることがあり、甲状腺だけでなく副腎機能評価が必要になる場合があります。 [3]
どれくらいの頻度で起こるのか
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免疫療法全般
甲状腺機能異常は主要な内分泌副作用のひとつで、臨床試験や臨床現場で一定の頻度が報告されています。 [1]
ペムブロリズマブでは約1〜15%、イピリムマブでは0〜4%といった報告があり、薬剤や背景で差があります。 [2] -
実臨床の報告
多民族都市コホートでは、免疫療法を受けた肺がんの約37%で甲状腺機能異常が生じたとの報告があり、甲状腺関連事象は比較的一般的です。 [PM13]
化学療法併用の実臨床では約30%と高めの率が報告された例もあります。 [PM16]
症状の目安とセルフチェック
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甲状腺機能低下(Hypothyroidism)
だるさ、気力低下、寒がり、体重増加、便秘、乾燥肌、むくみ、脈が遅い、集中力低下、月経変化など。免疫療法では低下症がより一般的です。 [5] [6] -
甲状腺機能亢進(Hyperthyroidism)
動悸・脈が速い、手の震え、不安感、汗が増える・暑がり、体重減少、寝つきが悪いなど。一過性の甲状腺炎に伴う亢進の後に低下へ移ることもあります。 [6] [2]
診断に使う血液検査
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基本セット
TSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT4(遊離サイロキシン)、必要に応じてT3を定期的に確認します。検査の基準範囲は施設や方法によって異なるため、主治医が提示する参考値で判断します。 [7] [8]
スクリーニングではまずTSHを測り、異常時にFT4などを追加するやり方が一般的です。 [9] -
注意点
TSH低値のときは「中枢性」異常(下垂体炎)も念頭に置く必要があり、状況に応じて追加評価が必要です。 [3]
どのように治療・対応するのか
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機能低下症の治療
症状が明らかな低下症ではレボチロキシン(甲状腺ホルモン)補充が適切で、多くは外来で安全に管理できます。 一部では時間とともに甲状腺機能が回復するケースもあります。 [4] -
機能亢進の対症療法
動悸や震えがつらい場合はβ遮断薬(脈を落ち着かせる薬)で症状緩和を行います。 多くは急性甲状腺炎に伴う一過性の亢進で、のちに低下へ移ることがあります。根本治療は不要なことも多いです。 [4] [3] -
治療継続の可否
軽度〜中等度の甲状腺異常は、内分泌の管理が並走できれば免疫療法を継続できることが一般的です。 ただし重症例や下垂体炎が疑われる場合は主治医の判断で一時中断や他臓器評価が必要です。 [3]
予後との関係(良いサインなのか?)
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中立〜良好の可能性
甲状腺関連の免疫副作用が起きても、進行抑制(PFS)が同等だったとする報告があり、必ずしも不利とは限りません。 [PM13]
一方で免疫関連甲状腺機能異常が長期予後と関連して良好である可能性を示す系統的レビューもありますが、個人差が大きく、確定的ではありません。 [PM15] -
例外・注意点
症例報告では、甲状腺異常があっても腫瘍が進行しうる例が示されており、甲状腺異常の有無だけで治療効果を断定することはできません。 [PM14]
結論として、甲状腺異常は「治療が効いているサイン」と断定はできず、総合的な画像・臨床評価で判断します。 [PM13] [PM15] [PM14]
フォローアップ(どのくらい検査する?)
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治療中
免疫療法開始前のベースラインと、治療中は定期的にTSH/FT4をチェックするのが一般的です。 異常が出たら頻度を上げて経過を見ます。 [3] [2] -
治療終了後
免疫療法終了後もしばらくしてから甲状腺機能低下が顕在化することがあり、継続的なモニタリングが望まれます。 終了後2か月以内の発症が比較的多いとの報告があり、定期採血の継続が勧められます。 [PM22]
日常生活でのポイント
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体調の変化に敏感に
だるさが強い、動悸が続く、急な体重変化、寒がり・暑がりの変化などがあれば早めに主治医へ相談しましょう。 [5] [6] -
薬をきちんと
レボチロキシンの補充は毎日決まった時間に継続することが大切です。 量の調整は定期採血の結果に合わせて医師が行います。 [4] [7]
よくある不安への答え
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「甲状腺異常があると治療は続けられない?」
多くのケースで、内分泌の管理を並走すれば免疫療法は継続可能です。 重症例は一時的な調整や専門科併診が必要になることがあります。 [3] -
「命に関わる副作用ですか?」
甲状腺異常自体は適切に補充・対症療法を行えばコントロールできることが多いです。 ただし下垂体炎などが疑われる場合は迅速な評価が重要です。 [3] [4]
まとめ
- 免疫療法では甲状腺異常が比較的よく起こりますが、ほとんどが外来で管理可能です。 [1] [2]
- 機能低下はレボチロキシン補充で改善でき、一過性の亢進はβ遮断薬などで症状緩和が可能です。 [4]
- 予後との関係は「悪いサイン」とは限らず、良好に関連する可能性の報告もありますが一律には言えません。 総合判断が大切です。 [PM13] [PM15] [PM14]
- 治療中・終了後の定期的なTSH/FT4チェックが安心につながります。 [3] [PM22]
症状と検査の早見表
| 項目 | 典型症状 | 主な検査 | 初期対応の目安 |
|---|---|---|---|
| 甲状腺機能低下 | だるさ、寒がり、体重増加、むくみ、便秘、脈が遅い | TSH高値+FT4低値が目安 | レボチロキシン補充、定期採血で用量調整 [4] [7] |
| 一過性亢進(甲状腺炎) | 動悸、震え、汗、暑がり、体重減少 | TSH低値+FT4/T3高値が目安 | β遮断薬で対症療法、後に低下へ移行を観察 [3] [4] |
| 中枢性異常(下垂体炎) | 倦怠、頭痛、低血圧など併発可 | TSH不適切低値、他ホルモンも評価 | 専門的評価、免疫療法の調整考慮 [3] |
(検査の基準値は施設により異なるため、主治医が提示する参考範囲で判断します。 [8] [7])
あなたが「心配すべきか」への答え
過度に恐れる必要はありませんが、見逃さないことがとても大切です。 免疫療法では甲状腺異常は珍しくなく、定期採血と早めの対処で日常生活を保ちながら治療を続けられることが多いからです。 [1] [4] 体調の小さな変化をメモし、次回外来で伝えること、必要なら採血のタイミングを前倒しすることが安心につながります。 [3]
関連する質問
出典
- 1.^abcdImmune checkpoint inhibitors and thyroid dysfunction: A case from the endocrine teaching clinics(mayoclinic.org)
- 2.^abcdefImmune checkpoint inhibitors and thyroid dysfunction: A case from the endocrine teaching clinics(mayoclinic.org)
- 3.^abcdefghijklmImmune checkpoint inhibitors and thyroid dysfunction: A case from the endocrine teaching clinics(mayoclinic.org)
- 4.^abcdefghiImmune checkpoint inhibitors and thyroid dysfunction: A case from the endocrine teaching clinics(mayoclinic.org)
- 5.^abPatient information - Lung cancer neoadjuvant - Carboplatin paclitaxel and nivolumab(eviq.org.au)
- 6.^abcPatient information - Lung cancer neoadjuvant - Carboplatin paclitaxel and nivolumab(eviq.org.au)
- 7.^abcd갑상선 기능 검사(Thyroid Function Test) | 검사/시술/수술정보 | 의료정보 | 건강정보(amc.seoul.kr)
- 8.^ab갑상선 기능 검사(Thyroid Function Test) | 검사/시술/수술정보 | 의료정보 | 건강정보(amc.seoul.kr)
- 9.^↑갑상선 기능 검사(Thyroid Function Test) | 검사/시술/수술정보 | 의료정보 | 건강정보(amc.seoul.kr)
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