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2026年2月20日5分で読める

米国NIHの資料に基づく | 頭頸部がん患者でヘモグロビン値が低いという検査結果が出た場合、考えられる原因と、放射線治療・化学療法の効果や予後に与える影響は何ですか?

要点:

頭頸部がん患者の低ヘモグロビンは、化学療法や放射線による骨髄抑制、出血、腎機能低下、慢性炎症、喫煙などが原因となり得ます。Hb低下は腫瘍低酸素を招いて放射線感受性を下げ、局所制御や生存率の悪化と関連します。輸血やESAでHbを上げても治療成績の明確な改善は乏しく、原因評価と支持療法、禁煙など総合的対応が重要です。

頭頸部がんと低ヘモグロビン:原因と治療への影響

頭頸部がんの方でヘモグロビン(Hb)が低い場合、がん自体や治療、併存疾患など複数の要因が関わっていることが一般的です。 [1] がん治療の過程では、低Hbは放射線治療や化学療法の効き目(腫瘍制御)や生存率に不利に働くことが知られており、治療計画上の重要な注意点になります。 [2] [3]


ヘモグロビン低下の主な原因

  • 化学療法による骨髄抑制や腎臓でのエリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)産生低下により、赤血球が十分に作られないことがあります。 [1]
  • 高線量の放射線治療が骨髄を傷害し、赤血球産生が落ちることで貧血を起こすことがあります。 [4]
  • 手術や腫瘍からの出血、あるいは慢性の微小出血によりヘモグロビンが下がることがあります。 [4]
  • 骨髄そのものの障害(白血病などの血液疾患、薬剤毒性、感染、放射線の影響)で赤血球を十分に作れないことがあります。 [5]
  • 腎機能低下によりエリスロポエチン産生が減り、結果的に貧血が進むことがあります。 [5]
  • 慢性炎症や慢性疾患に伴う貧血(いわゆる「慢性疾患の貧血」)も背景としてみられます。 [5]

低ヘモグロビンが治療効果に与える影響

  • 放射線は腫瘍細胞内で酸素を介したフリーラジカル(活性酸素)を発生させDNAを傷害することで効果を発揮するため、組織の酸素化が悪い(低酸素)と効き目が下がりやすいです。 [6]
  • ヘモグロビンが低いと酸素運搬能が落ち、腫瘍微小環境が低酸素になりやすく、放射線感受性が低下する可能性があります。 [3]
  • 喫煙は一酸化炭素ヘモグロビンの形成で実効的な酸素運搬能をさらに下げ、放射線治療の反応性悪化に関連します。 [3]

予後(腫瘍制御・生存)への影響

  • 頭頸部がんの同時化学放射線療法において、治療前に貧血(男性Hb<13.0 g/dL、女性Hb<12.0 g/dL)があると、局所制御率および全生存率が低くなることが報告されています。 [2]
  • ヘモグロビン値が低い群ほど局所制御と生存が悪化する「用量反応関係(Hb<12、12–14、>14 g/dLで段階的に成績差)」が観察されています。 [2]
  • 多くの臨床研究・レビューで、低ヘモグロビンは頭頸部扁平上皮がんの放射線治療成績における負の予後因子と位置づけられています。 [3] [7]

ヘモグロビン補正は効果を改善するか

  • 低ヘモグロビンが不良予後因子であることは概ね一貫していますが、輸血や赤血球造血刺激因子(ESA:エリスロポエチン製剤)などでヘモグロビンを人為的に上げても、放射線治療成績や生存の明確な改善は示されていません。 [3]
  • さらに、ESAの使用は腫瘍学領域では安全性や腫瘍制御への影響に注意が必要で、頭頸部がんでの使用により局所制御や生存が低下した試験結果が警告としてラベル情報に記載されています。 [8] [9]

症状面での影響

  • ヘモグロビンが低いと、全身が酸素不足気味になり、だるさ、息切れ、集中力低下などの自覚症状が出やすく、日常活動や治療耐容性にも影響します。 [10]

実臨床での評価と対応の考え方

  • 原因検索としては、出血の有無、鉄欠乏の評価(鉄、フェリチン、TIBCなど)、溶血所見、腎機能、炎症・栄養状態、骨髄抑制の程度(白血球・血小板を含む血算)を総合的に確認することが一般的です。 [5]
  • 化学療法や放射線治療中は、血算のモニタリングを行い、必要時には治療スケジュールの調整や支持療法(鉄補充、原因治療、輸血など)を検討します。 [11]
  • ただし、ESAの使用や輸血はメリットとリスク(血栓症、腫瘍制御への影響など)を慎重に天秤にかけ、過度なヘモグロビン上昇を避けるといった用量・目標設定が重要です。 [12] [13] [14] [15] [16]
  • 喫煙は実効的な酸素運搬能を下げ治療反応性を損なうため、禁煙が強く勧められます。 [3]

まとめ

  • 頭頸部がんにおける低ヘモグロビンの原因は、化学療法や放射線による骨髄抑制・腎機能への影響、出血、骨髄障害、慢性疾患など多因子で成り立ちます。 [1] [4] [5]
  • 低ヘモグロビンは腫瘍の低酸素化を通じて放射線治療の効き目を弱め、局所制御や生存に不利に働くことが多いと考えられます。 [6] [2] [3]
  • 一方で、輸血やESAでヘモグロビンを上げても治療アウトカムの明確な改善は一貫して示されておらず、使用には慎重さが求められます。 [3] [8] [9]
  • 実際の対応は、原因の見極めと支持療法のバランス、治療スケジュールの調整、症状緩和、そして禁煙など生活面の最適化を組み合わせる形が望ましいです。 [11] [3]

よくある原因と影響の整理表

項目具体例メカニズム治療効果・予後への影響補足
化学療法シスプラチン併用など骨髄抑制・EPO低下放射線感受性低下に寄与血算で経時モニターが推奨されます。 [1] [2]
放射線治療高線量照射骨髄障害貧血が続くと腫瘍低酸素を助長頭頸部でも全身影響が出ることがあります。 [4] [6]
出血腫瘍・術後・微小出血Hb喪失低酸素→放射線効果低下便潜血や内視鏡など原因精査が検討されます。 [4]
骨髄障害血液疾患・薬剤毒性・感染造血不全造血回復まで治療影響持続鑑別に骨髄検査が考慮されます。 [5]
腎機能低下化学療法関連などEPO産生低下慢性的な貧血持続腎機能の最適化が重要です。 [5]
慢性炎症がん関連炎症鉄利用障害治療耐容性低下の一因炎症マーカー・鉄代謝評価が目安です。 [5]
喫煙一酸化炭素有効Hb低下放射線反応性低下・予後不良禁煙で治療効果の下支えが期待されます。 [3]

(注:各セルの根拠は行末の出典IDをご参照ください)


実務上のヒント

  • 検査では、血算(Hb、白血球、血小板)、鉄関連(フェリチン、鉄、TIBC)、腎機能、炎症マーカーのセットで原因を絞り込むと整理しやすいです。 [5]
  • 治療中のだるさ・息切れが強い場合は、ヘモグロビン値の再確認と支持療法の要否(鉄補充、輸血、スケジュール調整など)を主治医と相談すると良いです。 [10] [11]
  • ESAや輸血は「輸血回避のために必要最小限」「過度のHb上昇は避ける」などの原則と安全性情報に沿って慎重に扱うことが推奨されます。 [12] [13] [14] [15] [16]
  • 喫煙中の方は、禁煙介入が放射線治療の反応性や長期的な健康にプラスに働く可能性があります。 [3]

低ヘモグロビンは「原因の特定」と「治療への影響を最小化する対応」の両輪で考えると、治療全体の質を保ちやすくなります。 [2] [3]

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出典

  1. 1.^abcdAnemia and Cancer(mskcc.org)
  2. 2.^abcdefEffect of pretreatment anemia on treatment outcome of concurrent radiochemotherapy in patients with head and neck cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abcdefghijklImportance of hemoglobin concentration and its modification for the outcome of head and neck cancer patients treated with radiotherapy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  4. 4.^abcdeAnemia and Cancer(mskcc.org)
  5. 5.^abcdefghiHemoglobina: MedlinePlus enciclopedia médica(medlineplus.gov)
  6. 6.^abcChemotherapeutic Response and Survival for Patients With an Anal Squamous Cell Carcinoma and Low Hemoglobin Levels(coloproctol.org)
  7. 7.^Importance of hemoglobin concentration and its modification for the outcome of head and neck cancer patients treated with radiotherapy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  8. 8.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
  9. 9.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
  10. 10.^abLow blood cell counts: Side effects of cancer treatment(mayoclinic.org)
  11. 11.^abcRadioterapia klatki piersiowej(mskcc.org)
  12. 12.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
  13. 13.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
  14. 14.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
  15. 15.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
  16. 16.^abRETACRIT- epoetin alfa-epbx injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)

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