
米国NIHの資料に基づく | 頭頸部がん患者で検査により高カルシウム血症が確認された場合、考えられる原因(PTHrP産生など)と追加で実施すべき検査項目および初期対応は何ですか?
頭頸部がんの高カルシウム血症は、扁平上皮がんで多いPTHrP産生による体液性高カルシウム血症(HHM)が代表的で、骨転移やビタミンD過剰産生、稀な異所性PTH産生も鑑別に挙がります。PTH、PTHrP、25(OH)D/1,25(OH)2D、リン、腎機能、ECG、画像で機序と重症度を評価します。初期対応は生食輸液±ループ利尿薬、カルシトニン、ビスホスホネートを中心に、病態に応じてステロイドやデノスマブ、原病治療を行います。
頭頸部がんで高カルシウム血症が確認された場合、もっとも多い機序の一つは腫瘍が産生するPTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク)による「体液性高カルシウム血症(HHM)」で、骨吸収の亢進と腎でのカルシウム再吸収増加を介して血清カルシウムが上がる可能性があります。特に扁平上皮がんで頻度が高く、骨転移が乏しくても起こり得ます。 [1] 扁平上皮がんを含む肺・頭頸部・泌尿生殖器腫瘍で体液性高カルシウム血症がみられ、腫瘍産生PTHrPが全身循環し骨吸収を強く促進します。 [2] 頭頸部がんの高カルシウム血症ではPTHは正常である一方、PTH様活性(PTHrPなど)による骨・腎作用が示唆される所見が出ることがあり、原発性副甲状腺機能亢進症と鑑別可能です。 [3]
考えられる原因
- PTHrP産生による体液性高カルシウム血症(HHM): 腫瘍がPTHrPを分泌し、骨の破骨細胞活性化と腎でのカルシウム再吸収増加を引き起こします。骨転移がなくても起こりやすいのが特徴です。 [4] PTHrPは扁平上皮がんで一般的に産生され、HHMの中心的因子です。 [5]
- 骨転移による局所骨破壊(局所性骨融解): 腫瘍の骨浸潤で破骨細胞が活性化し骨からカルシウムが放出されます。この場合は画像で骨病変が目立つことが多いです。 [4]
- ビタミンD(1,25(OH)2D)過剰産生型: 一部の悪性リンパ腫や肉芽腫性疾患にみられ、消化管からのカルシウム吸収増加が主体です。頭頸部がんでは主因ではないものの、鑑別として考慮されます。 [6]
- 稀な異所性PTH産生: ごくまれに腫瘍が本来の副甲状腺以外でPTHを産生します。PTHが高値となるため、PTHrP型と鑑別可能です。 [6]
- その他の寄与因子: 脱水で腎からのカルシウム排泄が低下し血清カルシウムがさらに上がりやすくなります。入院患者では悪性腫瘍が高カルシウム血症の最多原因であり、脱水の是正が重要です。 [7]
追加で実施すべき検査項目
高カルシウム血症の機序を見極め、重症度と合併症評価を行います。複数の項目を同時にチェックすると鑑別が進みます。 [6]
- PTH(副甲状腺ホルモン): 高値なら原発性副甲状腺機能亢進症や異所性PTH産生を示唆、低値〜低正常ならHHMや骨転移・ビタミンD依存性を示唆します。頭頸部がんのHHMではPTHは正常〜低値にとどまることが多いです。 [3] [6]
- PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク): 高値ならHHMの強い証拠となります。がんに伴う高カルシウム血症の約2/3でPTHrP上昇が原因とされます。 [8] [9]
- 25(OH)D と 1,25(OH)2D(活性型ビタミンD): 1,25(OH)2D高値ならビタミンD過剰産生型を示唆、HHMでは1,25(OH)2Dが低い傾向が報告されています。ビタミンD関連の機序鑑別に有用です。 [3] [6]
- リン(血清リン): HHMやPTH過剰型では腎でのリン再吸収低下により低リン血症になりやすいです。機序推定のヒントになります。 [3]
- 腎機能・電解質(Cr、eGFR、Na、K): 脱水・腎障害の評価と治療選択(輸液速度や薬剤)に必須です。重症度の把握に役立ちます。 [7]
- 尿中カルシウム排泄・ネフロジェン性cAMPなどの生理学的指標: 研究的にはHHMで尿中カルシウム排泄増加やcAMP所見がみられることがありますが、臨床では優先度はPTH/PTHrP/ビタミンDに劣ります。 [3]
- 心電図(ECG): 高カルシウムはQT短縮など不整脈リスクがあり、重症例では合併症の早期把握に重要です。 [6]
- 画像検査(骨シンチ、PET/CT、CT/MRI): 骨転移の有無と範囲評価により局所骨融解型かHHMかの比重を推定します。 [6]
- 腫瘍負荷評価と病勢把握: HHMは進行がんで多く、予後に直結するため原病の治療方針再検討が必要です。 [6]
初期対応(救急・入院での管理)
高カルシウム血症は心・神経・腎への影響が強く、症状の有無に関わらず迅速な是正が望まれます。 [6]
- 十分な輸液(生理食塩水): まず脱水是正と利尿促進を行います。多くの症例で体液量補正が腎からのカルシウム排泄を改善し、血清カルシウムを低下させます。 [7] 輸液により速やかに尿中カルシウム排泄が増えます。 [10]
- ループ利尿薬(例:フロセミド): 体液が充足した後、体液過剰を避けつつカルシウム排泄を促進する目的で使用を検討します。 [11] 生食輸液と併用で腎からのカルシウム排泄をさらに高めることがあります。 [12]
- 速効性薬(カルシトニン): 作用発現が早く、輸液と併用で初期数日のカルシウム低下に寄与します(反復投与で効果減弱あり)。 [6] 持続的管理には他薬の併用が必要です。 [6]
- ビスホスホネート(例:パミドロネート、ゾレドロン酸の静注): 破骨細胞活性抑制により数日で確実にカルシウムを低下させ、がん関連高カルシウム血症の第一選択薬とされます。 [7] HHMや骨転移型のいずれでも有効で、安全性プロファイルも良好です。 [7] 体液性高カルシウム血症の病態では破骨細胞活性化が中心であり、ビスホスホネートが理にかないます。 [13]
- 副腎皮質ステロイド: ビタミンD過剰産生型で有効なことがあり、リンパ腫など特定病態で考慮します。 [6]
- その他の選択肢(難治例): デノスマブはビスホスホネート抵抗性例で有用な可能性があり、難治性で検討されます。 [6]
- 原病の治療(腫瘍制御): 放射線治療や全身療法など、原因腫瘍の治療が長期的なカルシウム是正に不可欠です。 [11]
実践的アルゴリズム(概要)
- 重症度評価(症状、Ca値、腎機能、ECG)→即時の生食輸液で体液量補正→必要に応じてループ利尿薬を追加。 [7] [11]
- 並行してカルシトニン投与を考慮し、ビスホスホネート静注を早期に実施。数日後の持続的低下を期待します。 [7] [6]
- 鑑別のためPTH、PTHrP、25(OH)D、1,25(OH)2D、リンを採血し、機序を特定。骨転移評価の画像検査も進めます。 [6] [3]
- ビタミンD過剰産生型が疑わしければステロイドを検討、抵抗性ならデノスマブも選択肢です。 [6]
参考:鑑別に役立つ所見の比較表
| 項目 | HHM(PTHrP型) | 骨転移・局所骨融解 | 1,25(OH)2D過剰産生型 | 異所性/原発性PTH過剰 |
|---|---|---|---|---|
| PTH | 低〜低正常 [6] | 低〜低正常 [6] | 低〜低正常 [6] | 高値 [6] |
| PTHrP | 高値 [8] [9] | 正常〜軽度上昇もあり得るが典型は低 [5] | 低 | 低 |
| 1,25(OH)2D | 低下傾向 [3] | 正常 | 高値 [6] | 正常 |
| 画像での骨病変 | 乏しいことあり [1] | 明瞭な骨破壊あり [6] | なし | なし |
| リン | 低値傾向 [3] | 低〜正常 | 正常〜高値も | 低値 |
| 初期治療 | 輸液+カルシトニン+ビスホスホネート [7] | 同左+原病骨病変への治療 [6] | 輸液+ステロイド考慮 [6] | 原発性なら外科、異所性は腫瘍治療 [6] |
注意点・フォロー
- 再発予防: 原病制御が最重要で、高カルシウム血症は進行病勢のサインになり得ます。 [6]
- 合併症監視: 腎機能、電解質、心電図を治療中も繰り返しチェックし、過剰輸液や低マグネシウム血症などに注意します。 [7]
- 症状ケア: 悪心、便秘、意識障害、頻尿・口渇などの症状があれば迅速な是正で改善が期待できます。 [6]
この内容で追加検査と初期対応を段階的に進めると、原因の特定と安全なカルシウム是正につながりやすいです。 [6]
関連する質問
出典
- 1.^abPAMIDRONATE DISODIUM injection, powder, lyophilized, for solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 2.^↑DailyMed - PAMIDRONATE DISODIUM injection(dailymed.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefghMechanisms of hypercalcemia in patients with head and neck cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abDailyMed - PAMIDRONATE DISODIUM injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
- 5.^abParathyroid hormone-related protein.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdefghijklmnopqrstuvwxyz{|Approach to diagnosis and treatment of hypercalcemia in a patient with malignancy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcdefghiTreatment of cancer-related hypercalcemia.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abHumoral hypercalcemia of malignancy. The role of parathyroid hormone-related protein.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abParathyroid hormone-related protein blood test: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 10.^↑(dailymed.nlm.nih.gov)
- 11.^abcHypercalcemia of malignancy: diagnosis and therapy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 12.^↑(dailymed.nlm.nih.gov)
- 13.^↑DailyMed - PAMIDRONATE DISODIUM injection, solution(dailymed.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


