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2026年2月20日5分で読める

米国NIHの資料に基づく | 頭頸部がんの患者でAST/ALTなどの肝酵素が高値を示した場合、この検査結果は何を示唆し、考えられる原因や推奨される追加検査は何ですか?

要点:

AST/ALT高値は肝細胞障害・炎症を示唆します。頭頸部がんでは薬剤性、栄養関連、併存肝疾患が主因で肝転移は稀です。拡張肝胆道パネルと肝炎検査、薬剤レビュー、腹部エコーを起点に、必要時に造影CT/MRIを追加し、重症度に応じて治療調整します。

肝酵素(AST/ALT)の上昇は、一般的に「肝細胞の炎症や障害が起きている可能性」を示唆します。肝細胞が傷つくと血中に逸脱した酵素が増えるため、採血で高値に出やすくなります。 [1] 多くの場合は軽度で一過性の上昇にとどまり、必ずしも重篤な肝疾患を意味しないこともあります。 [2]


何を示唆するか

  • 肝細胞障害の存在
    ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)とAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は、肝細胞の傷害・炎症で上昇しやすい指標です。 [1]
    併せて胆道系の酵素(ALP、GGT)やビリルビン上昇があると、胆汁うっ滞や閉塞も示唆されます。 [2]

  • 背景疾患の評価指標
    肝酵素とビリルビンの結果は、脂肪肝、ウイルス性肝炎、肝硬変などの有無や重症度の把握にも役立ちます。 [3]

  • 転移の可能性のスクリーニング情報
    肝転移があると肝機能異常が出ることがありますが、頭頸部がんでは術前の肝酵素異常があっても肝転移の頻度は非常に低いことが報告されています(異常LFT 109例中1例、全862例中0.12%)。 [4]


頭頸部がんで想定される主な原因

  • 薬剤性肝障害(化学療法・支持療法)
    一部の制吐薬(例:オンダンセトロン)は、投与中にトランスアミナーゼが一過性に上がることがあり、用量や期間と関連しない軽度上昇が再投与でも見られることがあります。 [5] [6]
    がん治療に伴い、潜在的に肝毒性のある抗がん剤や抗菌薬の併用で重篤な肝障害が報告されることがあり、薬剤性の可能性を常に念頭に置きます。 [7] [8]

  • 栄養関連要因
    頭頸部がん術後の経静脈・経管栄養下で肝機能異常(ALP・AST上昇)がみられることがあり、栄養管理と関連する代謝性要因が関与します。 [9]

  • アルコール・喫煙に伴う併存疾患
    頭頸部がんの集団では肝酵素異常が比較的高頻度にみられ、背景のアルコール関連肝障害や脂肪肝等の併存がOS(全生存)にも影響しうるとされています。 [10]

  • ウイルス性肝炎の再活性化・未診断の感染
    免疫抑制療法前後にはHBV(B型肝炎)のスクリーニングと管理が推奨され、再活性化が肝酵素上昇の原因となることがあります。 [11]
    免疫抑制療法を受ける可能性がある人ではHBVの事前検査が行われることがあります。 [12]

  • 肝転移・胆道閉塞などの腫瘍関連病態
    肝酵素やビリルビン上昇は肝転移や胆道閉塞でもみられますが、頭頸部扁平上皮がんでは術前LFT異常の追跡画像で肝転移の検出率は極めて低いと報告されています。 [4]
    ただし、管理に大きく影響するため、転移リスクが高い症例では選択的に腹部画像を検討します。 [4]


重症度の目安(CTCAE相当)

  • グレード分類の一例
    AST/ALTが基準上限(ULN)の3〜5倍はグレード2、5〜20倍はグレード3、20倍超はグレード4の目安とされ、対応の緊急度や薬剤中止の判断に用いられます。 [13]
    数字での把握(何倍か)が、次の対応を決めるうえで非常に重要です。 [13]

推奨される追加検査・評価ステップ

  • 1)採血の再確認(パネル拡張)
    ALT/AST、ALP、GGT、総・直接ビリルビン、アルブミン、凝固系(PT/INR)、血糖脂質などを揃え、肝細胞障害か胆汁うっ滞かのパターンを確認します。 [2]
    肝炎ウイルス(HBsAg、HBsAb、HBcAb、HCV抗体±RNA)をスクリーニングし、免疫抑制治療予定ならHBV管理計画を立てます。 [11] [12]

  • 2)薬剤レビュー
    化学療法、抗菌薬、制吐薬(例:オンダンセトロン)などの最新の投与歴を精査し、開始時期と肝酵素上昇の時系列を突き合わせます。 [5] [7]
    薬剤性を疑う場合は中止・変更や減量、代替薬検討を行います(重症度に応じて)。 [6]

  • 3)画像検査の選択
    初期評価では腹部超音波が有用で、肝腫瘤や胆管拡張の有無をスクリーニングします。 [14]
    超音波で異常がある、または臨床的に転移が疑われる場合は、造影CT(トリフェーズCT)やMRIで肝内病変の詳しい評価を行います。 [15] [14]
    超音波で問題が特定できないが臨床的に強く疑う場合、CT/MRIで血管や腫瘍性病変、急性肝不全の原因の検索に進みます。 [16]
    一方で、頭頸部がんにおける「異常LFTを理由に全例で腹部画像」を行っても肝転移の検出率は低く、リスク層別化して選択的に画像を行う方が合理的とされています。 [4]

  • 4)必要に応じた腫瘍マーカー・生検
    検査で肝内腫瘤が疑われる場合は病理確定のため生検を検討します(画像のみで確定困難な場合)。 [17]
    既存がんの転移評価の一環として、施設の方針に応じて腫瘍マーカーを併用することがあります。 [14] [18]


実践的な判断ポイント

  • 一過性か持続か
    軽度の一過性上昇は経過観察で自然に改善することもありますが、持続・進行やビリルビン上昇を伴う場合は精査を優先します。 [2]
  • パターン認識
    AST/ALT優位の上昇は肝細胞障害、ALP/GGT優位の上昇は胆汁うっ滞・閉塞を示唆し、画像の優先度を決める材料になります。 [2]
  • 治療計画への影響
    重度上昇(グレード3以上)は薬剤の中止や減量、入院管理、専門科紹介が必要になることがあります。 [13]
  • 頭頸部がん特有の文脈
    肝転移の稀少性を踏まえ、まずは薬剤性・栄養・併存肝疾患の線から合理的に評価を進め、臨床的に転移が疑わしい所見があれば画像を段階的に追加します。 [4] [9] [10]

まとめ

  • AST/ALT高値は、肝細胞の炎症・障害が起きている可能性を示します。 [1]
  • 頭頸部がんでは、薬剤性、栄養関連、併存肝疾患(アルコール・脂肪肝・ウイルス性肝炎)などがまず考えられ、肝転移はまれです。 [4] [9] [10]
  • 追加検査は、拡張肝胆道パネル+肝炎ウイルススクリーニング、薬剤レビュー、腹部超音波を起点に、必要なら造影CT/MRIを選択的に行うのが一般的です。 [2] [11] [12] [14] [15] [16]
  • 重症度(何倍上昇か)に応じた介入が重要で、グレード指標を参考に治療の調整や専門科連携を検討します。 [13]

このような検査・評価の流れで、安全に原因を絞り込み、治療の見直しや追加検査の要否を判断していきます。 [4] [5] [14]

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出典

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  2. 2.^abcdefElevated liver enzymes - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
  3. 3.^Diagnosing Liver Cancer & Liver Metastases(nyulangone.org)
  4. 4.^abcdefgUtility of abdominal imaging to assess for liver metastasis in patients with head and neck cancer and abnormal liver function tests.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  5. 5.^abcONDANSETRON HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
  6. 6.^abONDANSETRON HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
  7. 7.^abONDANSETRON HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
  8. 8.^ONDANSETRON HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
  9. 9.^abcAbnormal liver function during nutritional support in postoperative cancer patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  10. 10.^abcPrognostic impact of pretherapeutic laboratory values in head and neck cancer patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  11. 11.^abcScreening and Testing for Hepatitis B Virus Infection ...(cdc.gov)
  12. 12.^abcScreening for Hepatitis(nyulangone.org)
  13. 13.^abcdHepatic impairment (elevated ALT/AST & bilirubin)(eviq.org.au)
  14. 14.^abcdeDiagnosing Liver Cancer & Liver Metastases(nyulangone.org)
  15. 15.^abLiver Metastases Diagnosis & Staging(mskcc.org)
  16. 16.^abDiagnosis and treatment - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
  17. 17.^Liver problems - Diagnosis and treatment(mayoclinic.org)
  18. 18.^Liver Metastases Diagnosis & Staging(mskcc.org)

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