
米国NIHの資料に基づく | 心不全に伴う吐き気(悪心)はどのような原因・メカニズムで生じ、どの程度の頻度で見られ、ほかの消化器症状とどのように区別されますか?
要点:
心不全の吐き気は、腹部臓器のうっ血や低灌流、体液貯留、神経体液性の活性化、腸内環境変化が重なって生じます。自己申告研究では約19%にみられ、むくみや体重増加、夜間呼吸困難、頸静脈怒張、腹部圧痛などの所見があれば心不全関連を示唆します。血便や発熱などの消化器原発の所見や薬剤性との鑑別も重要です。
心不全に伴う吐き気(悪心):原因・メカニズム、頻度、鑑別のポイント
心不全では、呼吸困難やむくみだけでなく、吐き気(悪心)や食欲低下などの消化器症状が出ることがあります。これは心臓のポンプ機能の低下により、全身・消化器への血流や体液のバランスが崩れるためで、病状の進行とともに目立ってくることが知られています。 [1] [2]
症状の全体像
- 心不全の症状には、息切れ、むくみ、体重増加、横になると苦しい、夜間頻尿に加えて、吐き気や食欲低下が含まれます。 [1]
- 病初期は軽い症状でも、進行に伴い症状が増悪し、消化器症状も目立つようになります。 [2]
- 医療機関の患者向け資料でも、消化不良や食欲の変化、腹部の不快感などが心不全の経過でみられうると説明されています。 [3] [4]
原因・メカニズム(なぜ吐き気が起こるのか)
1) うっ血と臓器血流低下
- 心臓のポンプ機能低下により、腹部臓器(胃腸・肝臓)への血流が減ると、胃腸の動きが鈍くなり、吐き気や食欲低下につながります。 [2]
- 静脈うっ血(血液のよどみ)で消化管粘膜に浮腫(むくみ)が生じ、吸収・運動機能が障害され、悪心・膨満感・下痢や便秘など多彩な症状に発展します。 [5]
2) 体液貯留(腹水・肝うっ血)
3) 神経体液性(ホルモン)活性化
- 代償的に交感神経・レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が過剰に働くと、末梢血管が収縮し、消化器血流さらに低下→悪心や倦怠感が生じやすくなります。 [8]
- これらの代償機構は初期は有益でも、長期的には悪循環を作り、消化器症状の持続・悪化につながります。 [8]
4) 腸内環境の変化と炎症
- 消化管の浮腫や血流低下は腸内細菌の過剰増殖や全身炎症の活性化を招き、食欲不振、悪心、体重減少(心臓性悪液質)に関与します。 [5]
どの程度の頻度か(成人・小児)
- 一般的な患者向け資料では、吐き気や食欲不振は心不全で比較的よくみられる症状として列挙されます。 [1] [2]
- 心不全患者の自己申告では、吐き気を感じる人が一定割合存在し、日常診療では見逃されがちです(大規模コホートで、問題チェックリスト初回時に約19%が吐き気を報告)。 [9]
- 小児(拡張型心筋症による心不全)では、腹痛・吐き気・食欲不振などの腹部症状が初発として多く、特に思春期では呼吸器症状よりも腹部症状が目立つことがあります。 [10]
ほかの消化器疾患との鑑別ポイント
心不全が疑われる特徴
- 体重増加や下腿のむくみ、夜間の息切れ、横になると悪化する呼吸困難を伴う吐き気。 [1] [2]
- 腹部の圧痛・張り(肝うっ血や腹水)、首の静脈の膨らみ(頸静脈怒張)を伴うケース。 [2] [6]
- 食後に症状が増悪しやすい(胃腸うっ血で消化が滞る)。 [4]
消化器原発が疑われる特徴
- 血便・黒色便、急性の激しい腹痛、発熱など明らかな胃腸炎・潰瘍・出血のサイン。
- 脂っこい食事で悪化する右上腹部痛(胆石・胆嚢炎)や、胸焼け中心(逆流性食道炎)など、典型的な誘因・部位の再現性。
- 心不全のサイン(むくみ・夜間呼吸困難・頸静脈怒張)が乏しい。
実務的な見分け方
- 症状の出方(食後の増悪、横臥で悪化、運動で変化)と体液貯留サインの有無を合わせて評価すると、心不全関連の悪心を推定しやすくなります。 [1] [4]
- 吐き気が強く、同時にむくみ・体重増加・腹部圧痛があれば、心不全の悪化を考え、利尿薬調整や受診の目安になります。 [6] [7]
薬剤性の吐き気(心不全治療薬も含む)
- 心不全治療中は、薬の副作用でも吐き気が起こることがあります。 [11]
- 例えば、血管拡張薬(ACE阻害薬・ARB等)で「胃のむかつき(アップセット・スタマック)」が出ることがあり、利尿薬では電解質異常や腎機能変化が吐き気を助長することがあります。 [11]
- 心不全患者の日常診療では、吐き気は自己申告副作用の一つとして一定頻度で見られ、副作用があっても薬剤変更に至らないことが少なくないため、医療者との相談・調整が大切です。 [12] [9]
- 副作用らしき症状は自己判断で中止せず、用量調整・服用時間の変更・薬剤の切り替えなどで対応するのが一般的です。 [13] [14]
受診の目安(注意すべきサイン)
- 吐き気に加えて、呼吸困難の増悪、胸痛、ピンク色の泡沫状痰、急なむくみや体重増加、腹部圧痛がある場合は、心不全増悪の可能性があり受診が推奨されます。 [7] [6]
- 横になれないほどの息苦しさや長引く胸部不快感は、緊急対応が必要なサインになりえます。 [15]
まとめ
- 心不全の吐き気は、腹部うっ血・臓器低灌流・体液貯留・神経体液性の過活動、腸内環境変化などが重なって生じます。 [1] [2] [8] [5]
- 頻度は無視できない程度にみられ、特に病状進行時や小児心不全では腹部症状が前景化することがあります。 [2] [10]
- 鑑別では、むくみ・体重増加・夜間呼吸困難・腹部圧痛などの心不全サインの有無がポイントで、薬剤性の可能性も常に考慮します。 [1] [4] [6] [11]
- 吐き気が続く、他の警告サインを伴う、薬の副作用が疑われるときは、早めの医療相談で治療調整を検討しましょう。 [13] [14] [7] [6]
参考:鑑別のためのチェック表
| 観点 | 心不全関連の可能性が高い所見 | 消化器原発の可能性が高い所見 |
|---|---|---|
| 体液貯留サイン | 下腿浮腫、急な体重増加、頸静脈の膨らみ、腹部圧痛 | 明らかな体液貯留なし |
| 呼吸器症状 | 横になると息苦しい、夜間発作的呼吸困難 | 呼吸症状は目立たない |
| 症状の時間・誘因 | 食後や臥位で悪化、運動で息切れ増悪 | 脂っこい食事で右上腹痛、胸焼け主体、発熱・下痢の同伴 |
| 併用薬 | 心不全薬(ACE/ARB、利尿薬など)で悪心が出現・増悪 | 新規の胃腸薬・抗菌薬などで悪心出現 |
| 全身所見 | 倦怠感、食欲低下、頸静脈怒張 | 局所腹痛、黒色便・血便、発熱 |
💡ポイント
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghiHeart Failure(medlineplus.gov)
- 2.^abcdefghijHeart Failure(medlineplus.gov)
- 3.^↑심부전 [Heart failure] | 건강정보(health.severance.healthcare)
- 4.^abcdSymptoms(stanfordhealthcare.org)
- 5.^abcGastrointestinal changes associated to heart failure.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdefghHeart failure - fluids and diuretics: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 7.^abcdefHeart failure - discharge: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 8.^abcThe pathophysiology of heart failure.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^abThe impact of perceived adverse effects on medication changes in heart failure patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 10.^abAbdominal complaints as a common first presentation of heart failure in adolescents with dilated cardiomyopathy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 11.^abcHeart failure - medicines: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 12.^abPerceived medication adverse effects and coping strategies reported by chronic heart failure patients.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 13.^abc심부전 Q&A, 치료 약물 부작용 | 건강TV | 건강정보(amc.seoul.kr)
- 14.^ab심부전 Q&A, 치료 약물 부작용 | 건강TV | 건강정보(amc.seoul.kr)
- 15.^↑심부전의 증상별 대처법 | 건강TV | 건강정보(amc.seoul.kr)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


