
PubMedの資料に基づく | 心不全の症状として背中の痛みは生じることがありますか?
背中の痛みは心不全の典型的症状ではありませんが、胸痛の放散、体液貯留、併存する整形外科的疾患などにより関連して生じることがあります。息切れや冷汗、吐き気を伴う持続痛は心筋梗塞などの可能性があり、緊急受診が必要です。心不全既往があり症状が悪化する場合は早めに外来受診し、原因評価と心不全の調整・疼痛管理を行いましょう。
背中の痛みは、心不全で「典型的な主症状」とは言い切れませんが、状況によっては関連して起こることがあります。心不全の中心的な症状は息切れ(呼吸困難)、むくみ、体重増加、疲労、頻尿、動悸などで、背中の痛みは一般的な項目には含まれません。 [1] [2] 一方で、胸の痛みが肩・腕・背中・顎などへ放散(広がって感じる)することがあり、女性では背中や顎の痛みが目立つこともあります。 [3] [4] さらに、心不全患者では「痛み」自体の有病率が高く、背中を含む複数部位の痛みがみられることが報告されています。 [5] [6]
心不全で背中の痛みが起こりうるメカニズム
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胸痛の放散による背部痛
狭心症や心筋梗塞の胸痛は、肩・腕・背中・顎などへ広がることがあります。特に女性では胸痛が目立たず、背中の痛みが主要な自覚症状になることがあります。 [3] [4]
心筋梗塞の痛みは20分以上続き、圧迫感・締め付け感を伴い、背中へ放散することがあります。 [7] -
うっ血や体液貯留による二次的な痛み
心不全では体内の水分が増え、肺や腹部、下肢にうっ血・浮腫が起こりますが、活動性低下や姿勢の変化、筋骨格系への負担増を通じて背部痛が悪化することがあります。これは間接的な関連です。 [1] [2] -
既存の整形外科的疾患の増悪
進行した心不全の方では、関節症や他の整形外科的問題が痛みの主要因として共存し、背部を含む複数部位の痛みが強まります。この場合、心不全が痛みを「誘発・増悪」する要素のひとつになりえます。 [5] -
特殊なケース:夜間の腰背部痛と循環動態
心肺コンプライアンス(心肺の柔軟性)が低下した心不全患者で、夜間に腰仙部・背部痛が強く、肺うっ血の改善とともに痛みが軽減したケースが報告されています。これは椎間管狭窄など既存の脊椎疾患が、静脈圧の変化(体液量増加)で急性に悪化するという仮説に一致します。 [8]
心不全の「典型的な症状」と背中の痛みの位置づけ
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典型的な症状
息切れ(労作時・仰臥位)、疲労・運動耐容能低下、末梢浮腫(足首・下腿)、頻尿(夜間)、咳・喘鳴、腹部膨満、心拍の速さ・不整などがよくみられます。 [1] [2]
背中の痛みはこれら「典型項目」には通常含まれません。 [1] [2] -
痛みの有病率
慢性心不全の外来患者では、胸・背中・腹部・四肢などさまざまな部位の痛みが約半数以上でみられ、痛みが生活の質を大きく損ねることが示されています。痛みは心不全管理で見過ごされやすいが、評価・ケアが必要です。 [6] [5]
背中の痛みが「要注意サイン」になりうる場面
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胸痛の放散で背中が痛い+息切れ・冷汗・吐き気などを伴う
狭心症や心筋梗塞の可能性があります。痛みが20分以上持続、圧迫感、活動で悪化、休んでも改善しない場合は救急受診が推奨されます。 [7]
女性では背中・顎の痛みが主症状となることがあり、胸痛が軽い場合でも警戒が必要です。 [3] [4] -
心不全既往があり、急に息切れやむくみが増えて背中の痛みも強まる
体液貯留の悪化や循環動態の変化で二次的に背部痛が増悪している可能性があります。体重の短期間増加、夜間の呼吸困難、下肢のむくみ増加があれば、早めの受診・調整が望まれます。 [1] [2]
実用的な見分け方と受診の目安
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緊急度が高いサイン(救急へ)
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数日以内の受診が望ましいサイン(早めに外来へ)
診療で検討される評価項目
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循環器評価
心電図(不整・虚血)、心エコー(左室機能、弁膜症)、血液検査(BNP/NT‑proBNP、腎機能、電解質)、胸部X線(肺うっ血・心拡大)など。 [1] [2]
虚血性心疾患疑いが強ければ、負荷検査や冠動脈の評価が検討されます。 [1] -
疼痛評価
痛みの部位・性質・持続時間・誘因(体位、運動、咳)、神経症状(しびれ、筋力低下)、整形外科的背景(脊柱管狭窄、関節症)を確認します。心不全患者では整形外科的疾患の併存が痛みの強い予測因子です。 [5] [8]
まとめ
- 背中の痛み自体は心不全の「代表的症状」ではありませんが、胸痛の放散や体液貯留、併存疾患の影響で関連して生じることがあります。 [1] [2]
- 女性や高齢者では、背中の痛みが心臓由来のサインであることがあり、息切れ・冷汗・吐き気などを伴う場合は特に注意が必要です。 [3] [4]
- 痛みが長引く、強い、他の心不全症状が悪化している場合は、早めの医療受診で原因を確認し、心不全の調整と疼痛管理を進めることが大切です。 [6] [5] [1] [2]
単純な肩こりや筋肉痛と紛らわしいことも多いですが、症状の組み合わせ(息切れ、むくみ、体重増加、冷汗など)と時間経過、痛みの性質が重要な手がかりになります。 [1] [2] [3] [4]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghijklHeart failure - Symptoms and causes(mayoclinic.org)
- 2.^abcdefghijkHeart Failure(medlineplus.gov)
- 3.^abcdefChest pain: First aid - Mayo Clinic(mayoclinic.org)
- 4.^abcdefChest pain: First aid(mayoclinic.org)
- 5.^abcdefInvestigating pain in heart failure patients: the pain assessment, incidence, and nature in heart failure (PAIN-HF) study.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdEvaluation of the prevalence and severity of pain in patients with stable chronic heart failure.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^abcHeart attack: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 8.^abNight pain associated with diminished cardiopulmonary compliance. A concomitant of lumbar spinal stenosis and degenerative spondylolisthesis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


