
米国NIHの資料に基づく | 牛乳を飲むと心臓病のリスクが高まるというのは本当ですか?
牛乳自体が心臓病リスクを高める明確な証拠はなく、観察研究では中立〜わずかな低下が示唆されています。鍵は脂肪の質で、全脂肪乳は飽和脂肪が多くLDLを上げやすいため、低脂肪・無脂肪を選び、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えるのが有効です。発酵乳(無糖ヨーグルト等)はリスク低下と関連する報告もあります。
牛乳そのものが心臓病(心血管疾患)のリスクを高めるとまでは言い切れません。むしろ、観察研究のまとめでは、牛乳摂取は心血管疾患の全体リスクと大きくは関連せず、わずかに低い可能性も示されています。 [1] 同時に、全脂肪(ホール)ミルクのように飽和脂肪が多い乳製品は血中LDLコレステロールを上げやすく、心疾患リスクを高める方向に働くため、脂肪の種類と量に注意することが大切です。 [2] [3]
研究の要点
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観察研究のメタ解析(前向きコホート17件)では、牛乳摂取は冠動脈疾患(心筋梗塞等)や総死亡と関連せず、心血管疾患全体では200mL/日ごとに相対リスク0.94とわずかに低い関連が示されました。 [1] 脳卒中や冠動脈疾患単独では明確な関連はみられませんでした。 [1]
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無作為化試験の総合レビュー(コクラン)では、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換える「脂肪の質の改善」により心血管イベントが約14%減少することが示されています。 [4] 総脂肪を減らすだけでは明確な効果は限定的でした。 [4]
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公衆衛生の栄養指針では、低脂肪または無脂肪乳製品は飽和脂肪が少なく、心血管の観点でより望ましい選択とされています。 [5] さらに、乳製品摂取は大人で心血管疾患、2型糖尿病リスクの低下や血圧低下との関連も示されています。 [6]
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一部のコホートでは、発酵乳(ヨーグルト、発酵ミルク)の摂取が心血管疾患の発症と逆相関(約15%低下)という報告もあります。 [7]
仕組みのポイント(なぜ“脂肪の質”が大切か)
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飽和脂肪はLDL(“悪玉”)コレステロールを上げ、動脈硬化を進めやすいと考えられています。 [2] [3] 全脂肪乳(ホールミルク)は1カップ当たりの飽和脂肪が多めで、カロリーも高くなります。 [8] [9]
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一方、低脂肪・脱脂乳は飽和脂肪が大幅に少なく、同じカルシウムやたんぱく質、ビタミン類を摂りつつ、脂肪の質の点で有利です。 [5] 食事の飽和脂肪の一部を不飽和脂肪へ置換すると心血管イベントが減るという介入試験の知見とも整合します。 [4]
実践的な選び方とヒント
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牛乳は“種類”で選ぶのがおすすめです。脱脂・低脂肪(無脂肪/1%/スキム)を基本にすると、飽和脂肪の摂取を抑えやすくなります。 [5] ホールミルクの常用は飽和脂肪過多になりやすい点に注意しましょう。 [8] [9]
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発酵乳や無糖ヨーグルトは、全体として心血管リスクと逆相関の報告があり、日常に取り入れやすい選択肢です。 [7]
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チーズは量と種類を意識しましょう。低脂肪タイプや少量にすれば、過剰な飽和脂肪を避けられます。 [10] 同じ乳製品でもナトリウムや脂肪が多いものは控えめに。
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食事全体のバランスが肝心です。飽和脂肪の多い食品(高脂肪肉、バター、ホール乳製品)を控え、不飽和脂肪(魚、ナッツ、オリーブオイル)へ置換していくと、心血管の観点でメリットが期待できます。 [4]
乳製品と心血管リスクの整理表
| テーマ | 何がわかっているか | 実践のポイント |
|---|---|---|
| 牛乳全体の影響 | 観察研究では総じて中立~わずかにリスク低下の可能性(CVD全体でRR≈0.94/200mL/日)。 [1] | 極端に避ける必要は薄く、適量ならOK。 [1] |
| 脂肪の“質” | 飽和脂肪はLDL上昇→動脈硬化リスク増。 [2] [3] | 全脂肪より、低脂肪・脱脂を選ぶと◎。 [5] |
| 介入試験の示唆 | 飽和脂肪→不飽和脂肪の置換でイベント約14%減。 [4] | 調理油や食品選びで“置換”を意識。 [4] |
| 発酵乳(ヨーグルト等) | 高摂取でCVDリスク低下(約15%)。 [7] | 無糖タイプを日常に取り入れるのも一案。 [7] |
| 食事ガイドの立場 | 低脂肪乳製品は飽和脂肪が少なく推奨。 [5] 乳製品摂取はCVDリスク低下との関連あり。 [6] | 牛乳は低脂肪中心、全体のバランス重視。 [5] [6] |
よくある疑問への答え
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「牛乳はやめた方がいい?」
現時点の人を対象とした研究では、牛乳そのものが心臓病リスクを上げるとまでは言えず、中立〜わずかに良い方向のデータもあります。 [1] ただし、ホールミルクの過剰摂取は飽和脂肪の取り過ぎにつながりやすいため、低脂肪・脱脂を基本にすると安心です。 [8] [9] [5] -
「どれくらい飲んでいい?」
個人差はありますが、1日1カップ前後を目安に、他の食事での飽和脂肪の合計量が増えすぎないよう調整するとよいでしょう。乳製品はカルシウムやたんぱく質、ビタミンDなどの供給源でもあるため、質を選びつつ適量を心がけるのが賢明です。 [5] [6]
まとめ
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「牛乳=心臓病リスクを上げる」とは言い切れません。 観察研究では中立〜わずかなリスク低下の可能性が示されています。 [1]
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カギは脂肪の“質”です。ホールミルクなど飽和脂肪が多い形ではなく、低脂肪・脱脂を選ぶと心血管の観点で安心です。 [5] 食事全体で飽和脂肪を不飽和脂肪へ置換することが、イベント減少と関連します。 [4]
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発酵乳(無糖ヨーグルト等)を取り入れる、チーズは量と種類を選ぶなど、日々の小さな置換が長期的な差につながります。 [7] [10]
必要であれば、現在の飲み方や他の食事内容、コレステロールや血圧の値に合わせて、より具体的な摂り方をご一緒に調整しますね。
関連する質問
出典
- 1.^abcdefgMilk and dairy consumption and incidence of cardiovascular diseases and all-cause mortality: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcHeart disease and diet: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 3.^abcDietary fat: Know which to choose(mayoclinic.org)
- 4.^abcdefgReduced or modified dietary fat for preventing cardiovascular disease.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdefghiFood guide plate: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 6.^abcdFood guide plate: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
- 7.^abcdeDairy products and its association with incidence of cardiovascular disease: the Malmö diet and cancer cohort.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abcPreventing Chronic Disease: October 2005: 05_0019(cdc.gov)
- 9.^abcPreventing Chronic Disease: October 2005: 05_0019(cdc.gov)
- 10.^abMediterranean diet for heart health(mayoclinic.org)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


