
PubMedの資料に基づく | 適度な飲酒は心臓病のリスクを下げるというのは本当ですか?
要点:
適度な飲酒が心臓病リスクを確実に下げるとは言えず、近年の質の高い研究では少量~中等度でもがん・心血管疾患を含む総合リスクが増える可能性が示されています。飲まない人が健康目的で飲酒を始めることは推奨されず、既に飲む人は女性1杯・男性2杯を上限にしてまとめ飲みを避けるべきです。
適度な飲酒が心臓病リスクを必ず下げるとは言い切れません。近年の質の高い研究では、軽度~中等度の飲酒でも全体としての健康リスク(がんや心血管疾患を含む)が上がる可能性が示され、従来の「少量は心臓に良い」という見方には慎重さが求められています。特に、飲まない人が心血管のために新たに飲酒を始めることは一般的に勧められません。 [1] [2]
何が「適度」なのか
- 一般的な目安としては、女性は1日1杯、男性は1日2杯までが「適度」と表現されます(1杯=ビール約350 mL、ワイン約150 mL、蒸留酒約45 mL)。ただし、この量でもリスクがゼロになるわけではありません。 [3] [4]
研究結果はなぜ分かれるのか
- 以前の観察研究では、少量~中等量の飲酒者で虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)リスクが低いという「J字カーブ」が報告されました。 [5] [6]
- しかし、その後の再検討では、禁酒に至った既往疾患のある人(いわゆる“元飲酒者”)を基準群に混ぜていたことや、生活習慣・社会経済的要因の差といった交絡で、見かけ上の保護効果が誇張された可能性が指摘されています。新しい手法で補正すると、保護効果は小さくなるか消失することが示されています。 [6] [7]
最新知見:全体リスクでは不利になりやすい
- 公衆衛生のまとめでは、1日約2杯程度の飲酒は、飲まない人に比べて死亡リスクを下げるとは言えず、むしろ死亡や慢性疾患の総合リスクが高まる可能性が示されています。がんや心臓病のリスク増加が含まれます。 [1] [2]
- 心血管の一部指標で「J字」的な関連がみられる報告はあるものの、血圧上昇、不整脈(心房細動)や心不全、脳卒中などのリスク増が同時に指摘され、総合的に見れば利益より害が上回る可能性が高いと考えられます。 [8] [9]
心臓に関して分かっていること
- 虚血性心疾患(心筋梗塞など)については、平均的にごく少量(1日1杯未満~1–2杯)で相対リスクが低く見える報告がありますが、研究間のばらつきが大きく、因果と断定しづらいのが現状です。 [5] [10]
- 一方で、心房細動のリスクは飲酒量に比例して上昇し、軽度の量でも増える可能性が報告されています。心房細動は脳卒中の原因になります。 [8] [9]
- また、血圧は少量でも上がりやすくなるとの大規模研究があり、高血圧は心不全・脳卒中・冠疾患の主要因です。 [4] [9]
すでに飲む人への実践ポイント
- もし飲むなら、女性は1日1杯、男性は1日2杯を上限とし、「まとめ飲み(ビンジ)」は避けるのが一般的な安全策です。まとめ飲みは心血管リスクの上昇と関連します。 [3] [6]
- 飲まない人が健康目的で飲み始めることは推奨されません。 心血管予防には、血圧・コレステロール管理、運動、バランスの良い食事、禁煙といった方法の方が確実な効果があります。 [11] [4]
- 次の人は禁酒が推奨されます:妊娠中、特定薬との相互作用がある、アルコール使用障害の既往がある、コントロールできない、特定の心疾患や肝疾患がある場合など。安全域は人により大きく異なります。 [2] [9]
まとめ
- 適度な飲酒が心臓病を「確実に」減らすとまでは言えず、総合的には害が上回る可能性がある、というのが現在のより慎重な見解です。 [1] [2]
- すでに飲むなら量を抑え、まとめ飲みを避けることが大切です。ただし、飲まない人が予防目的で飲酒を始める利益は示されていません。 [3] [6]
よくある疑問Q&A
-
Q. 赤ワインなら心臓に良い?
A. ポリフェノールなどの話題はありますが、アルコールそのもののリスクは残ります。「飲まない人が健康目的で飲む」根拠は不十分です。 [4] [9] -
Q. 具体的な1杯の目安は?
A. ビール350 mL、ワイン150 mL、蒸留酒45 mLが1杯相当です。この範囲内でも個人差が大きく、安全が保証されるわけではありません。 [3] [4] -
Q. 心臓のためにできることは?
A. 減塩、適度な運動(週150分程度の中等度運動)、体重管理、禁煙、血圧・脂質・血糖のコントロールが、確実性の高い対策です。 [11] [4]
参考:飲酒と心血管の代表的エビデンスの見どころ
- 観察研究のメタ解析では、軽度~中等度飲酒で冠疾患の相対リスクが低いという結果がしばしば見られましたが、異質性や交絡の影響が大きいと評価されています。 [5] [10]
- 飲酒パターンでは、平均量が少なくてもエピソード的な大量飲酒があると保護効果は消失し、全体リスクは上がる傾向が示されました。 [6]
- 公衆衛生の最新の要約では、中等度飲酒は全死亡や慢性疾患のリスクを下げない、むしろ増やしうるという結論に傾いています。 [1] [2]
🙂ご自身の飲酒量や持病、服薬状況に合わせて、より安全な範囲を一緒に考えますよ。
関連する質問
出典
- 1.^abcdAbout Moderate Alcohol Use(cdc.gov)
- 2.^abcdeAbout Moderate Alcohol Use(cdc.gov)
- 3.^abcdThe truth about red wine and heart health(mayoclinic.org)
- 4.^abcdefMediterranean diet for heart health(mayoclinic.org)
- 5.^abcAssociation of alcohol consumption with selected cardiovascular disease outcomes: a systematic review and meta-analysis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^abcdeAlcohol consumption, drinking patterns, and ischemic heart disease: a narrative review of meta-analyses and a systematic review and meta-analysis of the impact of heavy drinking occasions on risk for moderate drinkers.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^↑Observational research on alcohol use and chronic disease outcome: new approaches to counter biases.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abAbout Moderate Alcohol Use(cdc.gov)
- 9.^abcdeRed wine and resveratrol: Good for your heart?(mayoclinic.org)
- 10.^abThe cardioprotective association of average alcohol consumption and ischaemic heart disease: a systematic review and meta-analysis.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 11.^abWine and heart health: MedlinePlus Medical Encyclopedia(medlineplus.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


