
PubMedの資料に基づく | 胆嚢がんの治療による副作用で記憶力の低下や物忘れが生じることはありますか?
要点:
胆嚢がん治療、とくに化学療法では、注意・集中や短期記憶などの認知機能低下(ケモブレイン)が起こることがあります。多くは時間とともに改善しますが、個人差があり長引くことも。気になる症状が続く場合は、主治医に相談し、睡眠・栄養・薬剤調整や認知リハなどの対策を検討します。
がん治療の副作用として、記憶力の低下や物忘れ(いわゆる「ケモブレイン」)がみられることはあります。特に抗がん剤治療(化学療法)を受ける方の一部で、注意力や集中力、短期記憶、処理速度などの認知機能に影響が出ることが知られています。胆嚢がんに限らず固形がんの治療全般で起こり得る副作用で、治療中に強まり、終了後もしばらく続くことがあります。 [1] 多くは時間とともに軽快しますが、個人差があり、長く続く人もいます。 [2] [3]
なぜ起こるのか(考えられている原因)
- 免疫や炎症反応の影響:抗がん剤の影響で炎症性サイトカインが増え、脳の働きに一時的な悪影響を及ぼす可能性があります。この炎症反応は「だるさ」や「集中しづらさ」と結びつくことがあります。 [4] [5]
- 直接的な神経毒性・酸化ストレス:一部の抗がん剤が中枢神経に影響し、処理速度や記憶に関わるネットワークの働きを落とすことが示唆されています。 [4]
- 脳機能の変化:作業記憶(ワーキングメモリ)に関わる前頭葉や頭頂葉の活動パターンが変化する可能性が指摘されています。 [6]
- 併存要因:年齢、疲労、睡眠不足、貧血、ホルモン変化、不安や抑うつ、疼痛、他の薬(鎮痛薬・制吐薬など)も記憶力に影響し得ます。 [3]
どれくらいの頻度で起こるのか
- 固形がん治療を受ける人の中で、自己申告ベースでは治療中に「記憶・集中の問題」を感じる人が有意に増え、治療後6か月でも一定割合で続くことがあります。治療中は約2/3で悪化が報告され、終了6か月後でもベースラインより高い症状が残る傾向が示されています。 [2]
- 推定頻度は研究により幅があり、軽度も含めると17–75%と報告されています。 [1]
- 放射線治療単独よりも、化学療法を含む場合に症状が強い傾向がみられます。 [2]
胆嚢がん治療との関係
- 胆嚢がんでは、手術・化学療法・放射線治療が用いられます。化学療法ではゲムシタビンやシスプラチン、場合によりフルオロウラシルやカペシタビンなどが使われ、これらは一般に全身的な副作用(倦怠感、食欲低下、骨髄抑制など)を起こし得ます。 [7] [8]
- 認知機能の変化は「胆嚢がん特有」というより、がん治療とその周辺要因(疲労、栄養・脱水、感染、貧血、睡眠・気分の変調など)の総合的な影響として起こることが多いと考えられます。 [9] [10]
主な症状の具体例
- 物忘れが増える、思い出すのに時間がかかる
- 言葉が出てこない(語想起の困難)
- マルチタスクが苦手になる、段取りが組みにくい
- 集中が続かない、頭が「もやがかかった」感じ
- いつもより作業に時間がかかる
これらは治療の影響として一時的にみられ、時間とともに改善することが少なくありません。 [1] [3]
受診・相談の目安
- 日常生活や仕事・家事に支障が出るほどの物忘れが数週間以上続く
- 意識障害、激しい頭痛、けいれん、発熱を伴うなど緊急性のある症状がある
- 抑うつ・不眠・不安が強く、生活リズムが崩れている
こうした場合は、主治医に早めに相談し、必要に応じて血液検査(貧血・甲状腺・ビタミン)、薬剤調整、神経内科や精神科・腫瘍精神科、臨床心理士(神経心理検査)への紹介を検討します。 [3]
生活でできる対策
- 予定・メモ・チェックリストの活用、スマホのリマインダー設定などの補助具を使う。「見える化」で記憶の負担を減らす工夫が有効です。 [3]
- 一度に一つずつ(シングルタスク)で取り組み、環境ノイズを減らす。 [3]
- 睡眠衛生の改善(就寝・起床時刻の固定、就寝前の光・カフェイン回避)。 [3]
- 適度な有酸素運動と筋力トレーニングは、疲労の軽減や気分の改善を通じて認知にも良い影響が期待できます。 [3]
- 栄養と水分補給を意識し、脱水や低栄養を避ける。胆嚢がん治療では食欲低下や嘔気が起こりやすく、栄養・電解質の補正が合併症予防に大切です。 [9] [10]
- 不安や抑うつが強い場合は、心理的サポートや必要に応じた薬物療法を検討。 [3]
医療的支援とリハビリ
- 神経心理検査:注意、記憶、遂行機能などを評価し、得意・苦手のプロファイルを把握します。これに基づき、個別のリハビリや職場・家庭での配慮事項を計画できます。 [3]
- 認知リハビリ・コグニティブトレーニング:記憶戦略、注意訓練、計画立案の練習など。 [3]
- 薬物療法:決定的な標準治療はまだ限定的ですが、症状や背景に応じて個別に検討されることがあります。 [3]
よくある質問への補足
- いつ良くなりますか?
多くの方で治療終了後に徐々に改善しますが、数か月続くこともあり、まれに長期化することもあります。 [2] [1] - 放射線でも起こりますか?
頭頸部や全脳照射などでは起こり得ますが、体幹部への放射線のみの場合は化学療法に比べると一般に軽い傾向が報告されています。 [2] - 高齢だと悪化しやすい?
年齢や併存症、教育歴、気分・疲労など複数の因子が関与し、高齢の方では処理速度の低下が機能に影響しやすい可能性が示されています。 [11] [12]
まとめ
胆嚢がんの治療によって、記憶力の低下や物忘れが生じることはあり得ます。とくに化学療法中に強まり、治療後もしばらく残ることがある一方で、多くは時間とともに軽快します。 [2] [1] ただし、疲労・睡眠・栄養・気分など他の要因も大きく関わるため、気になる症状が続く場合は早めに主治医へ相談し、原因の切り分けと対策(生活調整、認知リハ、必要時の専門紹介)を進めることをおすすめします。 [3] [9] [10]
この頃の物忘れや集中力の変化は、日常生活にどのくらい影響していますか?
関連する質問
出典
- 1.^abcdeChemotherapy-related cognitive impairment.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdefSelf-reported cognitive impairment in patients with cancer.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefghijklmThe effect of cancer treatment on cognitive function.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 4.^abNeurotoxicology of chemotherapy in relation to cytokine release, the blood-brain barrier, and cognitive impairment.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^↑Chemobrain: a critical review and causal hypothesis of link between cytokines and epigenetic reprogramming associated with chemotherapy.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 6.^↑Cancer 'survivor-care': II. Disruption of prefrontal brain activation top-down control of working memory capacity as possible mechanism for chemo-fog/brain (chemotherapy-associated cognitive impairment).(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 7.^↑Chemotherapy for Gallbladder Cancer(mskcc.org)
- 8.^↑Chemotherapy for Gallbladder Cancer(mskcc.org)
- 9.^abc국가암정보센터(cancer.go.kr)
- 10.^abc국가암정보센터(cancer.go.kr)
- 11.^↑Cognitive speed of processing and functional declines in older cancer survivors: an analysis of data from the ACTIVE trial.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 12.^↑Is Cancer a Risk Factor for Cognitive Decline in Late Life?(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。


