米国NIHの資料に基づく | メトホルミンを服用している場合、断食や絶食で副作用や乳酸アシドーシスのリスクは高まりますか?
要点:
メトホルミン服用中の断食は、食事・水分の制限や脱水、腎機能低下、低酸素、感染などが重なると乳酸アシドーシスのリスクが高まります。手術・検査に伴う絶食や水分制限のある長時間断食では一時中止が推奨され、飲食再開と腎機能確認後に再開します。軽い断食でも体調不良があれば中止・受診を検討してください。
メトホルミン内服中に断食(宗教的断食、短期の絶食、手術前の絶食など)を行うと、状況によっては副作用や乳酸アシドーシス(血中に乳酸がたまり酸性に傾く重い状態)のリスクが高まる可能性があります。とくに「食事や水分が制限される状況」「脱水や腎機能低下を起こしやすい状況」では、一時的な休薬が推奨されます。 [1] [2]
断食とメトホルミンの基本ポイント
- 通常の生活での短時間の食事間隔延長だけで、直ちに乳酸アシドーシスが増えるという明確な証拠は限られています。 一方で、メトホルミンは乳酸の代謝に影響しうる薬であり、腎機能低下や脱水、低酸素(酸素不足)、感染や心不全など「誘因」が重なるとリスクが上がります。 [3] [4]
- 医薬品の公式情報では、「食事や水分が制限される状況(例:手術前後、特定の処置時)」にはメトホルミンを一時中止することが明記されています。 [1] [5]
- 断食で水分摂取まで制限される、あるいは長時間の絶食で脱水や腎機能悪化の恐れがある場合は、休薬が安全策として勧められます。 [1] [2]
乳酸アシドーシスのリスクはいつ高まる?
- 腎機能低下・脱水・低酸素(重い心不全、ショック、敗血症、心筋梗塞など)ではリスクが上昇します。 [6] [7]
- 大量飲酒や急性疾患(嘔吐・下痢・発熱で水分不足)も危険因子です。 [5] [8]
- メトホルミンは肝での乳酸取り込みを低下させうるため、もともと乳酸が増えやすい状況(低酸素、肝・腎機能低下、重症感染)では重なり効果でリスクが上がります。 [9]
手術や医療処置での絶食時の対応
- 手術・処置に伴う経口摂取制限(食事・水分制限)時は、メトホルミンを一時中止し、飲食再開と腎機能の確認後に再開することが推奨されます。 [1] [5]
- これは、絶食中は脱水・血圧低下・腎機能悪化が起こりやすく、メトホルミン血中濃度が上がりやすいためです。 [1] [2]
実臨床データの示唆
- 大規模な比較データでは、適切な患者選択と用量で使う限り、メトホルミン自体が他薬より乳酸アシドーシスを増やす証拠は乏しいとされています。 [4] [10]
- 一方で、高齢や腎機能低下、血糖コントロール不良、脱水などが重なると乳酸上昇のリスク指標が動く可能性が示唆されています。 [11]
断食を予定しているときの実践的な判断フロー
- 短時間の宗教的断食などで、水分は十分に摂れており、体調良好、腎機能も安定している場合
- 多くの人ではリスクは大きくはないと考えられますが、めまい、強いだるさ、吐き気、筋肉痛、呼吸が荒いなどの異変があれば中止・受診を検討してください。 [3]
- 24時間以上の長時間断食、あるいは水分制限を伴う断食を行う場合
- 手術前後や内視鏡などの絶食・絶飲指示がある医療行為
注意すべき症状(レッドフラッグ)
- 息切れが強い、深く速い呼吸、強い倦怠感、筋肉痛、腹痛、低体温、徐々に悪化する吐き気や嘔吐などは、乳酸アシドーシスを疑うサインになり得ます。これらが断食中や急性疾患時に出たら、メトホルミンを中止し速やかに医療機関へ。 [3]
安全に断食・絶食するためのポイント
- 水分はできる限り十分に(許可される範囲で電解質を含む水分も検討)。 [1]
- 激しい運動や発汗での脱水を避ける(断食中は特に)。 [1]
- 腎機能が低い、心不全や肺疾患がある、大量飲酒の習慣がある、感染や発熱がある場合は、断食前にメトホルミンの休薬可否を主治医に相談。 [6] [5]
- 手術や検査での絶食時は一時中止が原則で、再開は飲食再開と腎機能の確認後に。 [1] [5]
まとめ
- メトホルミンは適切に使えば比較的安全ですが、断食・絶食で食事と水分が制限されると、脱水や腎機能低下を介して乳酸アシドーシスのリスクが相対的に高まることがあります。 [1] [2]
- 医療手技に伴う絶食や、水分も制限される断食では一時中止が推奨されます。 [1] [5]
- 日常的な軽い断食であっても、体調不良の兆しがあれば中止・受診を検討してください。 [3]
参考になるQ&A形式の要点表
| シチュエーション | メトホルミンは? | 根拠の要点 |
|---|---|---|
| 宗教的・短期断食(水分は十分) | 個別判断(症状あれば中止・受診) | リスクは誘因の重なりで上昇、異変時は警戒。 [3] |
| 長時間断食または水分制限あり | 一時中止を検討 | 食事・水分制限時は休薬推奨。 [1] [2] |
| 手術・処置での絶食 | 一時中止し、飲食再開+腎機能確認後に再開 | 公式情報として明記。 [1] [5] |
| 発熱・嘔吐・下痢・脱水時 | 一時中止を検討 | 脱水・腎機能悪化でリスク増。 [1] [8] |
| 心不全・低酸素・重症感染 | 原則避ける/中止を検討 | 低酸素状態での報告例あり。 [6] [7] |
| 大量飲酒 | 避ける | 乳酸代謝への影響増強。 [5] |
断食の形式(期間、水分可否)、現在の腎機能や合併症、手術や検査の予定などによって、取るべき対応は変わります。不明なときは「水分が制限される・長時間になる・体調不良がある」なら安全側で一時中止し、主治医と再開時期を相談するのが安心です。 [1] [5]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghijklmnopMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdefMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdeMetformin Hydrochloride Tablets, USP(dailymed.nlm.nih.gov)
- 4.^abRisk of fatal and nonfatal lactic acidosis with metformin use in type 2 diabetes mellitus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 5.^abcdefghijMetformin Hydrochloride Tablets, USP(dailymed.nlm.nih.gov)
- 6.^abcMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 7.^abMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, film coated, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 8.^ab[Biguanide].(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^↑METFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
- 10.^↑Risk of fatal and nonfatal lactic acidosis with metformin use in type 2 diabetes mellitus.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 11.^↑Fasting plasma lactate concentrations in ambulatory elderly patients with type 2 diabetes receiving metformin therapy: a retrospective cross-sectional study.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。