米国NIHの資料に基づく | 断食や絶食時のメトホルミンの服用は安全ですか、用量の調整や休薬の目安など注意すべき点を教えてください。
要点:
メトホルミンは短時間の断食では通常継続可能で低血糖リスクも低い一方、手術前後・嘔吐下痢・脱水・多量飲酒などでは一時中止が推奨されます。宗教的断食では用量変更は最小限にとどめ、食事のある時間帯に合わせて服用し、再開は経口摂取と腎機能が安定してから行います。スルホニル尿素薬やインスリン併用時は低血糖に注意してください。
メトホルミンは一般に低血糖を起こしにくく、短時間の断食(例:採血前の絶食や日中の時間限定断食)では通常は安全に継続できるお薬です。 [1] [2] ただし、食事と水分の摂取が大きく制限される状況(手術前後・重い消化器症状・脱水・飲酒を伴う断食など)では、一時的に休薬した方が安全とされます。 [3] [4]
断食時の基本的な考え方
- 低血糖リスク:メトホルミン単剤では通常、低血糖は起こりにくいですが、カロリー摂取が不足する場面では低血糖が起こりうると記載されています。 [1] [5]
特に、他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬やインスリン)やアルコールと併用している場合は注意が必要です。 [1] [6] - 乳酸アシドーシスの回避:重度の脱水や腎機能低下、低酸素状態、感染・敗血症、手術前後などでは乳酸アシドーシスのリスクが高まるため、メトホルミンを中断する判断が推奨されます。 [3] [4]
- 手術や大きな処置:食事・水分摂取が制限される手術では、メトホルミンを一時停止し、経口摂取再開かつ腎機能が問題ないことを確認してから再開します。 [3] [4]
断食のタイプ別の対応
短時間の絶食(半日~24時間程度)
- 例:採血や画像検査前、16時間程度の時間制限断食など。
- 対応:多くの方は通常通り内服してもよい可能性が高いですが、食事量が極端に少ない日や強い運動をする日は低血糖に注意します。 [1] [2]
- 併用薬がスルホニル尿素薬やインスリンの場合は、そちらの用量調整や低血糖対策を優先して検討します。 [1]
宗教的断食(例:ラマダン)
- 断食時間が長くなる一方、食事は主に日没後(イフタール)と夜明け前(スフール)に集中します。
- エビデンス上、メトホルミンは低血糖リスクが低く、用量調整は最小限でよいことが多いと報告されています。 [7] [8]
- 実務のコツとして、1日2回製剤なら食事のある時間帯(イフタール/スフール)に分け、1日1回徐放製剤なら夕食時へ集約する方法が用いられます(個別調整が前提)。 [8]
飲食がほぼできない状況(嘔吐・下痢・脱水・熱発)
手術前後・鎮静下の処置、造影検査を伴う場合
- 手術や経口摂取制限が伴う処置:一時停止し、経口摂取再開+腎機能が正常であることを確認して再開します。 [3] [4]
- 造影剤に関しては施設方針が異なる場合がありますが、腎機能低下のリスクがある場合は中止と再開時期の確認が推奨されます(担当医の指示を優先)。 [9]
具体的な用量調整と休薬の目安
継続してよい目安
- 断食が短時間で、水分摂取が可能、体調が安定し、腎機能に問題がない場合は通常用量で継続可能なことが多いです。 [1] [8]
- 低血糖歴がなく、他の降糖薬の併用がない(または低血糖リスクの低い併用)場合は継続しやすいです。 [1]
休薬・減量を検討する目安
- 手術や大きな処置で経口摂取が制限される場合:一時中止。 [3] [4]
- 嘔吐・下痢・発熱などで脱水の疑いがある場合:一時中止。 [3] [4]
- 長時間の完全断食や厳格なカロリー制限でふらつき・動悸・冷汗など低血糖症状が出る場合:減量や中止を検討。 [1]
- 多量の飲酒を伴う断食や宴席(断食明けの過度な飲酒など)は避けるか中止を検討(乳酸アシドーシス予防)。 [3] [4]
再開のタイミング
- 経口摂取(水分と食事)が安定して再開し、腎機能が問題ないと判断できる時点で再開が目安です。 [3] [4]
- 手術後は主治医の指示に従い、必要に応じてクレアチニンやeGFRを確認します。 [3] [4]
低血糖・高血糖へのセルフチェック
- 低血糖のサイン:ふるえ、冷汗、動悸、ふらつき、強い空腹感、視界がぼやけるなど。
メトホルミン単剤では稀ですが、カロリー不足時や他薬併用、アルコール摂取時に起こりえます。 [1] [2] - 断食明けの過食で高血糖になることもあり、食事の質と量のコントロールが大切です(宗教的断食での知見)。 [7] [8]
実践的なポイント
- 断食日の朝、体調不良(吐き気・下痢・めまい・脱水感)があれば無理をせず中止を検討。 [3] [4]
- 他の降糖薬(特にスルホニル尿素薬やインスリン)を併用している場合は、それらの用量調整が優先課題になります。 [1]
- 宗教的断食では、服用タイミングを食事のある時間帯に合わせる工夫が有効です。 [8]
- アルコールはメトホルミンの副作用(乳酸アシドーシス・低血糖)を強めるため、断食期は控えるのがおすすめです。 [3] [4] [1]
まとめ
- メトホルミンは断食中でも多くのケースで安全に継続できますが、手術などで飲食が制限される時、脱水・重い体調不良、アルコール多飲時は一時中止が推奨されます。 [3] [4]
- 宗教的断食では、用量変更は最小限で、服用時間を食事に合わせる工夫で安全性を高められます。 [7] [8]
- 低血糖はまれですが、カロリー不足や他薬・アルコール併用でリスクが上がるため、症状と血糖の自己チェックを心がけてください。 [1] [2]
早見表
| シチュエーション | 推奨対応 | 補足 |
|---|---|---|
| 半日~1日の軽い断食(採血・時間制限) | 多くは継続可 | 他薬併用・強運動・飲酒に注意。 [1] [2] |
| 宗教的断食(ラマダンなど) | 継続可、時間調整 | 低血糖リスクは低く、用量調整は最小限で可。 [7] [8] |
| 嘔吐・下痢・発熱・脱水疑い | 一時中止 | 体調と水分・食事再開後に再開。 [3] [4] |
| 手術・大きな処置で経口制限 | 一時中止 | 経口再開+腎機能正常で再開。 [3] [4] |
| 多量の飲酒を伴う状況 | 中止/回避 | 乳酸アシドーシス・低血糖リスク増。 [3] [4] [1] |
個別の病状(腎機能、併用薬、断食の種類)で最適解は変わりますが、上のポイントを目安にすれば安全性は高められます。 [3] [4] [1] [8]
関連する質問
出典
- 1.^abcdefghijklmnoMETFORMIN HYDROCHLORIDE- metformin hydrochloride tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
- 2.^abcdemetformin(dailymed.nlm.nih.gov)
- 3.^abcdefghijklmnopqrmetformin(dailymed.nlm.nih.gov)
- 4.^abcdefghijklmnopqrMetformin Hydrochloride Tablets, USP(dailymed.nlm.nih.gov)
- 5.^↑Metformin Hydrochloride Tablets, USP(dailymed.nlm.nih.gov)
- 6.^↑METFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, film coated(dailymed.nlm.nih.gov)
- 7.^abcdOral anti-diabetics in Ramadan.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 8.^abcdefghRecommendations for management of diabetes during Ramadan: update 2015.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- 9.^↑Metformin and its clinical use: new insights for an old drug in clinical practice.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。