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2026年2月25日5分で読める

米国NIHの資料に基づく | メトホルミンを鶏に投与する際、適切な用量と過量投与のリスク、禁忌など注意すべき点は何ですか?

要点:

鶏へのメトホルミン投与は獣医領域で標準適応・用量が未確立で、研究では単回300mg/kgで代謝変化が示唆されています。過量投与や腎障害・低酸素などの状況では乳酸アシドーシス等の重篤リスクがあり、代謝性アシドーシスや重症疾患、肝障害、若齢・繁殖個体では原則回避が望まれます。使用する場合は人の用法を外挿せず、獣医師の管理下で極低用量からの試験投与と厳密なモニタリングが必要です。

鶏へのメトホルミン投与は、獣医領域での標準適応・用量が確立しておらず、人医薬の情報を直接流用することには注意が必要です。とはいえ、研究的には単回300 mg/kgの投与で代謝指標の変化が示されており、過量投与では乳酸アシドーシスなど重篤な有害事象の懸念があるため、もし使用を検討するなら慎重な用量設定と厳密なモニタリングが不可欠です。 [1] 人での一般的な開始・漸増法や禁忌事項は安全対策の参考になりますが、鶏にそのまま当てはめるのは安全性が担保できない点を強調します。 [2] [3]


エビデンスの概要

  • 鶏における作用:21日齢ヒナにメトホルミンを投与(300 mg/kg、単回経口)すると、1時間付近で血糖とマンノースが低下し、腎での糖新生関連酵素(G6Pase、PEPCK)活性とmRNAが低下する一方、肝では抑制が確認されないなど、哺乳類と異なる臓器反応が示唆されています。 [1] つまり、鶏では腎での作用が目立ち、肝での典型的な抑制は乏しい可能性があります。 [1]

  • 生殖毒性に関連する示唆:思春期前の鶏への数週間投与で、精巣重量低下やテストステロン低下、精子分化マーカー低下が報告されており、若齢期・繁殖個体では生殖影響の懸念があります。 [4]


用量に関する考え方(研究・外挿上の注意)

  • 鶏での標準治療用量は確立していません。 [1] 研究では単回300 mg/kgという高めの負荷量で代謝変化が観察されていますが、これは治療量ではなく、連用安全性・至適量を示すものではありません。 [1]

  • 参考として人での一般的な開始法は、徐放製剤で500 mg 1日1回夕食時から開始し、耐容性に応じて週毎に500 mgずつ増量、最大1日2,000 mg(徐放)です。 [2] ただし、これは人の指針であり、鶏に適用すべきではありません。 [2]

  • したがって、臨床現場で鶏に用いる場合は、獣医師の裁量下で極めて低用量からの段階的試験投与、体重比換算時の種差(吸収・分布・排泄)の不確実性、若齢・腎機能・肝機能の影響、並用薬の相互作用を総合的に評価することが望ましいです。 [1]


過量投与と重篤リスク

  • 人ではメトホルミンの過量摂取(50 g超の報告を含む)で、低血糖は約10%にみられたものの直接因果は一定せず、一方で乳酸アシドーシスは約32%で報告され、致死的になり得ます。 [5] ショック、敗血症、心筋梗塞など重症状態では乳酸アシドーシスの発生リスクが上がります。 [3]

  • 鶏における乳酸アシドーシスの臨床頻度は不明ですが、解糖系・糖新生への作用と腎での影響が示唆されるため、腎機能低下個体、脱水、低酸素、強いストレスや感染時は特に危険と考えるのが妥当です。 [1] [3]

  • 過量の可能性を示す所見(推定):食欲低下、沈鬱、過度の虚弱、過呼吸/呼吸促迫、低体温傾向、重度の下痢や嘔吐様反応(反芻動物でないため吐出は限定的)、失調などがみられた場合は直ちに中止しサポート療法を行い、血液ガスや乳酸、電解質、腎・肝指標の評価が望まれます。 [5] [3]


禁忌・投与回避が望ましい状況

  • 代謝性アシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスを含む)に該当する状態。 [3] こうした状態ではメトホルミンは禁忌とされます。 [3]

  • 明らかな腎障害、脱水やショック、重症感染、低酸素を伴う循環不全など、乳酸アシドーシスのリスクを高める病態。 [3]

  • 肝機能障害(人では「非推奨」とされます):乳酸クリアランス低下によるリスク上昇が懸念されます。 [6] [7] [8] [9]

  • 若齢・繁殖目的の個体:数週間投与で精巣発育やテストステロン低下の報告があるため、繁殖成績に影響する可能性があります。 [4]

  • 造影検査(ヨード造影剤)前後:人では一時中断が推奨されるため、同様の安全概念が参考になります。 [3]


併用・モニタリングのポイント

  • 低血糖はスルホニル尿素薬やインスリンとの併用時に起きやすく、人では血糖低下に応じてインスリン減量(10–25%)を検討する運用が紹介されています。 [10] 鶏で同様の併用を行う場合は、さらに慎重な血糖観察が必要です。 [10]

  • 人の用法では食直後/食事とともに投与し、消化器症状(下痢、腹痛、悪心)を抑える工夫がとられますが、鶏では消化管移行時間や給餌パターンが異なるため、そのままの適用は不確かです。 [11] [12]

  • 安全確認として、少なくとも体重、採食量、飲水量、活力、呼吸状態、脱水徴候、下痢の有無を毎日確認し、可能であれば血糖、乳酸、腎(尿酸・尿素窒素的指標の種差留意)、電解質、肝酵素の推移を評価します。 [5] [3]


形状と投与方法の注意

  • 人の徐放錠は粉砕・割砕・咀嚼禁止で、一回夕食時開始が基本です。 [2] 鶏では錠剤形状・徐放設計が想定どおり機能しない可能性が高く、物理的破砕は放出設計を崩し有害事象リスクを上げ得ます。 [2]

  • 製剤学的に、鶏への投与は液剤化・餌への均一混和などが検討されますが、徐放性・安定性・バイオアベイラビリティが変わるため、必ず獣医師と薬剤学的検討を行ってください。 [2]


まとめ(実務的提案)

  • 鶏におけるメトホルミンの「標準用量」は確立していません。 [1] 研究での単回300 mg/kgは生理反応の評価目的であり、日常治療に推奨できる根拠ではありません。 [1]

  • 重篤なリスクとして乳酸アシドーシスがあり、腎障害・ショック・重症感染・低酸素・肝障害などの状況では避けるべきです。 [3] [6] [7] [8] [9] 若齢・繁殖個体では生殖影響の懸念があり、原則回避を検討してください。 [4]

  • もしやむを得ず使用する場合は、獣医師の直接管理下で、極低用量からの段階的試験、綿密な臨床観察と血液検査(可能なら乳酸・腎肝機能)を伴ってください。 [5] [3]


参考テーブル

項目人での情報(参考)鶏への含意・注意
開始用量徐放錠 500 mg 夕食時開始、週毎+500 mg、最大2,000 mg/日鶏では外挿不可。徐放錠の粉砕禁止で適用困難。 [2]
最大用量通常錠は総量2,550 mg/日までの記載もあり種差・体重比換算は危険。標準容量なし。 [11]
過量投与リスク50 g超の摂取例あり、乳酸アシドーシス約32%報告鶏でも乳酸アシドーシス懸念、腎・低酸素でリスク上昇。 [5] [3]
禁忌・非推奨代謝性アシドーシス、重症疾患合併、肝機能障害は非推奨鶏でも同概念で回避が安全。 [3] [6] [7] [8] [9]
鶏での作用300 mg/kg単回で血糖↓、腎のG6Pase/PEPCK低下、肝抑制は不明瞭哺乳類と作用部位が異なる可能性、用量設定は慎重に。 [1]
生殖影響人データの一般論は限定的若齢鶏で精巣重量・テストステロン低下、分化マーカー低下。 [4]

この内容を踏まえ、目的(研究か治療か)、個体の年齢・繁殖計画、合併症やストレス状態の有無を総合して、まずは代替手段の検討や、専門の家禽獣医へのコンサルテーションを強くおすすめします。 [1] [4] [3]

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出典

  1. 1.^abcdefghijkEffects of metformin on plasma concentrations of glucose and mannose, G6Pase and PEPCK activity, and mRNA expression in the liver and kidney of chickens.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  2. 2.^abcdefgMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abcdefghijklmnmetformin(dailymed.nlm.nih.gov)
  4. 4.^abcdeThe insulin sensitiser metformin regulates chicken Sertoli and germ cell populations.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  5. 5.^abcdeMetformin Hydrochloride Tablets, USP(dailymed.nlm.nih.gov)
  6. 6.^abcMETFORMIN ER 500 MG tablet METFORMIN ER 750 MG tablet(dailymed.nlm.nih.gov)
  7. 7.^abcMETFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, film coated METFORMIN HYDROCHLORIDE tablet, extended release(dailymed.nlm.nih.gov)
  8. 8.^abcMETFORMIN HYDROCHLORIDE TABLETS. These highlights do not include all the information needed to use METFORMIN HYDROCHLORIDE TABLETS safely and effectively. See full prescribing information for METFORMIN HYDROCHLORIDE TABLETS. METFORMIN HYDROCHLORIDE tablets, for oral use Initial U.S. Approval: 1995(dailymed.nlm.nih.gov)
  9. 9.^abcMETFORMIN HYDROCHLORIDE- metformin hydrochloride tablet tablet METFORMIN HYDROCHLORIDE- metformin hydrochloride tablet tablet(dailymed.nlm.nih.gov)
  10. 10.^abmetformin(dailymed.nlm.nih.gov)
  11. 11.^abMetformin Hydrochloride Tablets USP(dailymed.nlm.nih.gov)
  12. 12.^metformin(dailymed.nlm.nih.gov)

ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。