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2026年2月20日5分で読める

PubMedの資料に基づく | 長時間の持久運動中にイブプロフェンを服用すると腎障害のリスクが高まるって本当ですか?

要点:

長時間の持久運動中にイブプロフェン(NSAIDs)を服用すると、脱水や腎血流低下と重なり急性腎障害などのリスクが高まります。レース中の予防的な使用は避け、必要時は最小量・最短期間とし、水分・電解質補給を徹底し、高リスクの方は医療者に相談しましょう。

はい、長時間の持久運動中にイブプロフェン(NSAIDsの一種)を服用すると、腎障害(急性腎障害や腎乳頭壊死など)のリスクが高まる可能性があります。特に脱水や血流低下が起こりやすい長時間運動では、腎臓の血流維持に必要なプロスタグランジンがNSAIDsで抑えられるため、腎機能が一時的に悪化しやすくなります。 [1] [2]


なぜ運動中のNSAIDsが腎臓に負担になるのか

  • 腎血流の低下
    長時間の持久運動では、発汗による脱水や循環血液量の低下が起き、腎臓への血流(腎血流量)が減りがちです。この状況では腎臓はプロスタグランジンという物質で血流を保とうとしますが、イブプロフェンなどのNSAIDsはその産生を抑えるため、さらに腎血流が下がり、腎機能が急に落ちることがあります(急性腎障害)。 [2]
    同様の仕組みで、長期または高用量のNSAIDs使用は腎乳頭壊死などの腎障害を引き起こしうることが知られています。 [1]

  • 相乗的な悪影響の例
    症例報告では、激しい運動にNSAIDsを併用し、さらに利尿薬などと組み合わさった場合に急性腎不全を来したケースが示されています。背景にあるのは運動による腎虚血(腎の酸素不足)とNSAIDsによるプロスタグランジン抑制の相乗効果です。 [3]

  • 全体としてのリスク傾向
    観察研究の統合解析では、伝統的なNSAIDs(イブプロフェン、ナプロキセン等)は非使用者に比べて急性腎障害のリスクが有意に高い(相対リスクおよそ1.6〜2.1倍)と報告されています。個々のNSAID間で大きな差は明確でないという傾向も示されています。 [4]


特に注意が必要な人

  • 脱水・低循環状態になりやすい状況(長時間レース、暑熱環境、嘔吐・下痢など)では、NSAIDsの腎毒性が出やすくなります。同条件はそれ自体が腎血流を下げ、NSAIDsが防御機構を弱めるからです。 [2]
  • 既存の腎機能低下、心不全、肝障害、高齢、利尿薬やACE阻害薬の併用などは、NSAIDs腎障害のハイリスク要因です。これらでは投与により腎血流がさらに低下しうるため、腎機能悪化が起きやすくなります。 [5] [6]

運動時の痛み対策の考え方

  • レースや長時間トレーニング“中”の予防的なNSAIDs使用は、一般的には避けるのが安全です。腎血流が落ちやすいタイミングでプロスタグランジン抑制をかけるのは不利だからです。 [2]
  • どうしても鎮痛が必要な場合は、運動“前後”の短期間使用で最小有効量を検討し、水分・電解質補給を徹底する方法がありますが、腎・心血管・胃腸リスクとのバランスを個別に判断することが大切です。 [1] [2]
  • 代替策の例
    • 急性の筋骨格痛には、まずはRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)やストレッチ、フォーム調整などの非薬物療法を優先する方法があります。
    • 必要に応じて短期間の外用鎮痛剤(貼付剤、ゲルなど)を検討するのも一案です(全身作用が相対的に少ない)。
    • 服薬が必要な場合は、既往歴や併用薬を踏まえて医療者に相談し、最小量・最短期間にとどめるのがおすすめです。 [2]

服用するなら守りたいポイント

  • 水分・電解質補給を最優先
    発汗量に見合った水と電解質(ナトリウムなど)を計画的に補給し、脱水を避けましょう。脱水はNSAIDs腎障害の主要な引き金です。 [7]
  • 用量と期間は最小限
    高用量・長期使用は腎障害のリスクを上げるため、最小有効量・最短期間にとどめることが基本です。 [1]
  • ハイリスク併用の回避
    可能なら利尿薬やACE阻害薬との併用、アルコール過量など腎血流を下げる要因の重なりを避けると安全性が高まります。 [8]
  • 警戒すべきサイン
    運動後に尿量の顕著な減少、濃い茶色の尿、むくみ、強い倦怠感、持続する腰背部痛などがあれば、急性腎障害のサインの可能性があり、速やかな受診が望まれます。 [2]

まとめ

  • 長時間の持久運動中のイブプロフェン(NSAIDs)使用は、腎血流の低下と相まって急性腎障害のリスクを高めうるため、予防的・ルーチン使用は避けた方が無難です。 [1] [2]
  • 既往疾患や併用薬によってはリスクがさらに上がるため、使用の可否や用量は個別に検討しましょう。代替の非薬物的手段や外用薬の活用、適切な水分・電解質補給が安全性向上に役立ちます。 [5] [7]

参考リスク情報(抜粋)

  • 長期NSAIDsで腎乳頭壊死などの腎障害が報告され、腎血流維持にプロスタグランジンが必要な状況では投与で腎血流が低下しうることが明記されています。 [1]
  • NSAIDsは腎機能異常を引き起こしうる一方、特に高リスク患者(腎機能障害、心不全、肝障害、利尿薬やACE阻害薬併用、高齢)で注意が必要です。 [5]
  • 観察研究の統合解析では、伝統的NSAIDsの使用で急性腎障害リスクが有意に上昇していました。 [4]
  • 激しい運動+NSAIDsで急性腎不全を発症した症例が報告されています。 [3]

運動の種類(マラソン、トレイル、ウルトラなど)や、これまでの服用歴・既往歴・併用薬によって最適な対策は変わりますが、「長時間運動中の予防的なイブプロフェン服用は避け、必要時は最小量・最短期間、十分な水分電解質補給を徹底する」ことが安全面でおすすめです。 [1] [2]

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出典

  1. 1.^abcdefgDailyMed - IBUPROFEN tablet(dailymed.nlm.nih.gov)
  2. 2.^abcdefghiNonsteroidal anti-inflammatory drugs: effects on kidney function.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  3. 3.^abExercise-induced acute renal failure associated with ibuprofen, hydrochlorothiazide, and triamterene.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  4. 4.^abIndividual non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: A systematic review and meta-analysis of observational studies.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  5. 5.^abc(dailymed.nlm.nih.gov)
  6. 6.^IBUPROFEN Tablets, USP(dailymed.nlm.nih.gov)
  7. 7.^abAcute renal failure in the "Comrades Marathon" runners.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  8. 8.^Acute renal failure following binge drinking and nonsteroidal antiinflammatory drugs.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

ご注意: この情報は教育目的のみで提供されており、専門的な医療アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。医療上の決定を行う前に、必ず資格のある医療提供者に相談してください。